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「クロム」の版間の差分

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== 性質 ==
== 性質 ==
クロムは銀白色の[[金属]]で硬く、[[融点]]は1,907℃、[[沸点]]は2,671℃(ほかに融点に関しては1,857℃、沸点に関しては2,200℃2,690℃という値がある)<ref>[http://resource.ashigaru.jp/top_rank_chromium_country_production.html クロム生産量(国別)] 資源について</ref>{{信頼性要検証|date=2018-09}}。ネール点は34.85℃
クロムは銀白色の[[金属]]で硬く、[[融点]]は1907&nbsp;&deg;C、[[沸点]]は2671&nbsp;&deg;C(ほかに融点に関しては1857&nbsp;&deg;C、沸点に関しては2200&nbsp;&deg;C2690&nbsp;&deg;Cという値がある)<ref>[http://resource.ashigaru.jp/top_rank_chromium_country_production.html クロム生産量(国別)] 資源について</ref>{{信頼性要検証|date=2018-09}}。ネール点は34.85&nbsp;&deg;C


クロムには3つの同素体(α、β、γ)があり、それぞれの結晶構造は体心立方格子、立方最密充填構造、六方最密充填構造である。
クロムには3つの同素体(α、β、γ)があり、それぞれの結晶構造は体心立方格子、立方最密充填構造、六方最密充填構造である。
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== 用途 ==
== 用途 ==
金属としての利用は、光沢があること、硬いこと、[[腐食|耐食性]]があることを利用するクロムメッキとしての用途が大きい。また、鉄と[[ニッケル]]と10.5パーセント以上のクロムを含む[[合金]]([[フェロクロム]])は[[ステンレス鋼]]と呼ぶ。ステンレス鋼ではクロムが不動態皮膜を形成し、ほとんど[[錆]]を生じないため[[車両]]や[[機械]]といった重工業製品から[[流し台]]、[[包丁]]などの[[台所|台所用品]]まで幅広い用途がある。
金属としての利用は、光沢があること、硬いこと、[[腐食|耐食性]]があることを利用するクロムメッキとしての用途が大きい。また、鉄と[[ニッケル]]と10.5&nbsp;%以上のクロムを含む[[合金]]([[フェロクロム]])は[[ステンレス鋼]]と呼ぶ。ステンレス鋼ではクロムが不動態皮膜を形成し、ほとんど[[錆]]を生じないため[[車両]]や[[機械]]といった重工業製品から[[流し台]]、[[包丁]]などの[[台所|台所用品]]まで幅広い用途がある。


この金属は[[産業]]上、重要性が高いものの、産出地に偏りがあり供給構造が脆弱である。日本では、国内で消費される[[鉱物]][[資源]]の多くが他国からの[[輸入]]で賄われている実情から、万一の国際情勢の急変に対する[[安全保障]]策として、国内消費量の最低60[[日]]分を国家[[備蓄]]すると定められている。
この金属は[[産業]]上、重要性が高いものの、産出地に偏りがあり供給構造が脆弱である。日本では、国内で消費される[[鉱物]][[資源]]の多くが他国からの[[輸入]]で賄われている実情から、万一の国際情勢の急変に対する[[安全保障]]策として、国内消費量の最低60[[日]]分を国家[[備蓄]]すると定められている。


== 必須元素としてのクロム ==
== 必須元素としてのクロム ==
クロムは人間にとって微量[[必須元素]]である。1日の必要量は50 - 200 µg。クロムを多く含む[[食品]]は、[[酵母|ビール酵母]]、[[レバー (食材)|レバー]]、[[エビ]]、未精製の[[穀物|穀類]]、[[豆|豆類]]、[[キノコ|キノコ類]]、[[コショウ|黒胡椒]]などである。
クロムは人間にとって微量[[必須元素]]である。1日の必要量は50&ndash;200 &mu;g。クロムを多く含む[[食品]]は、[[酵母|ビール酵母]]、[[レバー (食材)|レバー]]、[[エビ]]、未精製の[[穀物|穀類]]、[[豆|豆類]]、[[キノコ|キノコ類]]、[[コショウ|黒胡椒]]などである。


クロムは、[[インスリン]]が体内で[[レセプター]]と結合するのを助ける働きをしている[[耐糖因子]]を構成する材料となるため、クロムが体内で不足すると、糖代謝の異常が起こり[[糖尿病]]の発症に至る可能性がある<ref name=":0">{{Cite web |title=クロムとは |url=https://kotobank.jp/word/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%A0-58145 |website=コトバンク |accessdate=2022-02-08 |language=ja |first=日本大百科全書(ニッポニカ),化学辞典 第2版,知恵蔵,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典,デジタル大辞泉,栄養・生化学辞典,世界大百科事典 |last=第2版}}</ref>。
クロムは、[[インスリン]]が体内で[[レセプター]]と結合するのを助ける働きをしている[[耐糖因子]]を構成する材料となるため、クロムが体内で不足すると、糖代謝の異常が起こり[[糖尿病]]の発症に至る可能性がある<ref name=":0">{{Cite web |title=クロムとは |url=https://kotobank.jp/word/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%A0-58145 |website=コトバンク |accessdate=2022-02-08 |language=ja |first=日本大百科全書(ニッポニカ),化学辞典 第2版,知恵蔵,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典,デジタル大辞泉,栄養・生化学辞典,世界大百科事典 |last=第2版}}</ref>。


もともとクロムは体内に吸収されにくいミネラルであるが、穀物を精製するとクロムが大幅に失われてしまう問題が存在する。[[小麦粉]]の場合、精白すると98パーセントのクロムが失われ、[[米]]を精米すると92パーセントのクロムが失われるとされている。そのため、体内へのクロム吸収率の向上を図った[[サプリメント]]なども開発・販売されている。
もともとクロムは体内に吸収されにくいミネラルであるが、穀物を精製するとクロムが大幅に失われてしまう問題が存在する。[[小麦粉]]の場合、精白すると98&nbsp;%のクロムが失われ、[[米]]を精米すると92&nbsp;%のクロムが失われるとされている。そのため、体内へのクロム吸収率の向上を図った[[サプリメント]]なども開発・販売されている。


== クロムの毒性 ==
== クロムの毒性 ==
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== RoHS規制物質としてのクロム ==
== RoHS規制物質としてのクロム ==
EU-[[RoHS]]においては[[六価クロム|6価クロム]]の濃度を1,000ppm以下に抑えること、中国版RoHSにおいては意図的添加、処理を規制対象としている。検出方法としてはジフェニルカルバジド法を用いる。これは6価クロムが1,5-ジフェニルカルボノヒドラジドと酸性溶液中で反応してクロム‐ジフェニルカルバゾン錯体を形成することを利用したもので、紫外可視分光光度計を用いて吸光度を測定し、濃度を求める。この際、共存元素(3価[[鉄]]、5価[[バナジウム]]、6価[[モリブデン]])の影響を受ける。
EU-[[RoHS]]においては[[六価クロム|6価クロム]]の濃度を0.1 %以下に抑えること、中国版RoHSにおいては意図的添加、処理を規制対象としている。検出方法としてはジフェニルカルバジド法を用いる。これは6価クロムが1,5-ジフェニルカルボノヒドラジドと酸性溶液中で反応してクロム‐ジフェニルカルバゾン錯体を形成することを利用したもので、紫外可視分光光度計を用いて吸光度を測定し、濃度を求める。この際、共存元素(3価[[鉄]]、5価[[バナジウム]]、6価[[モリブデン]])の影響を受ける。


== クロムの化合物 ==
== クロムの化合物 ==
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|[[南アフリカ共和国]]
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|その他
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|}



2022年3月12日 (土) 08:49時点における版

バナジウム クローム マンガン
-

Cr

Mo
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
Chromium has a body-centered cubic crystal structure
24Cr
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 クローム, Cr, 24
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 6, 4, d
原子量 51.9961(6) 
電子配置 [Ar] 3d5 4s1
電子殻 2, 8, 13, 1(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 7.19 g/cm3
融点での液体密度 6.3 g/cm3
融点 2180 K, 1907 °C, 3465 °F
沸点 2944 K, 2671 °C, 4840 °F
融解熱 21.0 kJ/mol
蒸発熱 339.5 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 23.35 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1656 1807 1991 2223 2530 2942
原子特性
酸化数 6, 5, 4, 3, 2, 1, −1, −2
(酸性酸化物)
電気陰性度 1.66(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 652.9 kJ/mol
第2: 1590.6 kJ/mol
第3: 2987 kJ/mol
原子半径 128 pm
共有結合半径 139±5 pm
その他
結晶構造 体心立方
磁性 反強磁性 (rather: SDW[1])
34.85 K
電気抵抗率 (20 °C) 125 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 93.9 W/(m⋅K)
熱膨張率 (25 °C) 4.9 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 5940 m/s
ヤング率 279 GPa
剛性率 115 GPa
体積弾性率 160 GPa
ポアソン比 0.21
モース硬度 8.5
ビッカース硬度 1060 MPa
ブリネル硬度 1120 MPa
CAS登録番号 7440-47-3
主な同位体
詳細はクロームの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
50Cr 4.345% > 1.8×1017 y εε - 50Ti
51Cr syn 27.7025 d ε - 51V
γ 0.320 -
52Cr 83.789 % 中性子28個で安定
53Cr 9.501 % 中性子29個で安定
54Cr 2.365 % 中性子30個で安定

クロム: chromium [ˈkroʊmiəm]: Chrom [ˈkroːm]: chromium: )は、原子番号24の元素元素記号Crクロム族元素のひとつ。

名称

1797年、酸化状態によってさまざまな色を呈することからギリシャ語χρωμα(chrōma、色)にちなんでルネ=ジュスト・アユイにより命名された。別名クロミウム

性質

クロムは銀白色の金属で硬く、融点は1907 °C、沸点は2671 °C(ほかに融点に関しては1857 °C、沸点に関しては2200 °C、2690 °Cという値がある)[2][信頼性要検証]。ネール点は34.85 °C。

クロムには3つの同素体(α、β、γ)があり、それぞれの結晶構造は体心立方格子、立方最密充填構造、六方最密充填構造である。

歴史

1797年フランスルイ=ニコラ・ヴォークランによってシベリア産の紅鉛鉱(クロム酸鉛、PbCrO4)から発見された。ヴォークランはこの翌年(1798年ルビーが赤いこと、エメラルドが緑色であることについて、クロムが不純物として入っているためであることを発見した。

かつて、兵馬傭坑より出土した青銅の剣や矛・戟・弓矢からクロムが検出されたこと、またそれらの多くに錆びた痕跡がないことから、代にクロムによる耐食加工技術が用いられていたという説が唱えられていたが[3]、2019年の調査によって、クロムは兵士像に塗布されていた塗料由来のものであり、耐食加工の痕跡ではないことが明らかにされた [4]

用途

金属としての利用は、光沢があること、硬いこと、耐食性があることを利用するクロムメッキとしての用途が大きい。また、鉄とニッケルと10.5 %以上のクロムを含む合金フェロクロム)はステンレス鋼と呼ぶ。ステンレス鋼ではクロムが不動態皮膜を形成し、ほとんどを生じないため車両機械といった重工業製品から流し台包丁などの台所用品まで幅広い用途がある。

この金属は産業上、重要性が高いものの、産出地に偏りがあり供給構造が脆弱である。日本では、国内で消費される鉱物資源の多くが他国からの輸入で賄われている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として、国内消費量の最低60分を国家備蓄すると定められている。

必須元素としてのクロム

クロムは人間にとって微量必須元素である。1日の必要量は50–200 μg。クロムを多く含む食品は、ビール酵母レバーエビ、未精製の穀類豆類キノコ類黒胡椒などである。

クロムは、インスリンが体内でレセプターと結合するのを助ける働きをしている耐糖因子を構成する材料となるため、クロムが体内で不足すると、糖代謝の異常が起こり糖尿病の発症に至る可能性がある[5]

もともとクロムは体内に吸収されにくいミネラルであるが、穀物を精製するとクロムが大幅に失われてしまう問題が存在する。小麦粉の場合、精白すると98 %のクロムが失われ、を精米すると92 %のクロムが失われるとされている。そのため、体内へのクロム吸収率の向上を図ったサプリメントなども開発・販売されている。

クロムの毒性

クロム単体および3価のクロムは毒性がない[5]一方で、6価のクロム化合物(六価クロム)は毒性が高い。かつては六価クロムをメッキ用途として使うことが多かったが、土壌汚染を起こすなどでしばしば問題視され、亜鉛メッキ上のクロメート処理では使われなくなってきているが、クロムメッキでは酸化クロム(VI)を使用したメッキ液が主流である。また、たばこに含まれる発がん性物質としても知られる。

4価のクロム化合物はWHOの下部機関IARCより発癌性があると(Type1)勧告されている。

RoHS規制物質としてのクロム

EU-RoHSにおいては6価クロムの濃度を0.1 %以下に抑えること、中国版RoHSにおいては意図的添加、処理を規制対象としている。検出方法としてはジフェニルカルバジド法を用いる。これは6価クロムが1,5-ジフェニルカルボノヒドラジドと酸性溶液中で反応してクロム‐ジフェニルカルバゾン錯体を形成することを利用したもので、紫外可視分光光度計を用いて吸光度を測定し、濃度を求める。この際、共存元素(3価、5価バナジウム、6価モリブデン)の影響を受ける。

クロムの化合物

五重結合状態のクロム化合物を化学構造式で表現した図

同位体

国別の産出量

2019年における国別の産出量は以下の通りである[6]

順位 クロム鉱の産出量/(1000 t)
1 南アフリカ共和国 17000
2 トルコ 10000
3 カザフスタン 6700
4 インド 4100
5 フィンランド 2200
6 その他 4000

出典

  1. ^ Fawcett, Eric (1988). “Spin-density-wave antiferromagnetism in chromium”. Reviews of Modern Physics 60: 209. Bibcode1988RvMP...60..209F. doi:10.1103/RevModPhys.60.209. 
  2. ^ クロム生産量(国別) 資源について
  3. ^ Terracotta Warriors (Terracotta Army)”. China Tour Guide. 2020年9月24日閲覧。
  4. ^ Martinón-Torres, Marcos (4 April 2019). “Surface chromium on Terracotta Army bronze weapons is neither an ancient anti-rust treatment nor the reason for their good preservation”. Scientific Reports 9 (1): 5289. doi:10.1038/s41598-019-40613-7. PMC 6449376. PMID 30948737. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6449376/. 
  5. ^ a b 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),化学辞典 第2版,知恵蔵,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,百科事典マイペディア,精選版 日本国語大辞典,漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典,デジタル大辞泉,栄養・生化学辞典,世界大百科事典. “クロムとは”. コトバンク. 2022年2月8日閲覧。
  6. ^ USGS クロムの統計と情報2020年版

関連項目

外部リンク