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「図書館間相互貸借」の版間の差分

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'''図書館間相互貸借'''(としょかんかんそうごたいしゃく、{{Lang-en-short|interlibrary loan}}、{{Lang|en|ILL}})とは、[[図書館奉仕]]のひとつである。'''図書館間貸し出し'''(としょかんかんかしだし)とも呼ぶ。相互貸借は図書館界独特の[[相互扶助]]システムであり、特に協定を結ぶことなく、相互の信頼関係に基づいて実施される{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。図書館によっては国内のみならず、国外とも相互貸借を行うことがある{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。
'''図書館間相互貸借'''(としょかんかんそうごたいしゃく、{{Lang-en-short|interlibrary loan}}、{{Lang|en|ILL}})とは図書館同士で資料を融通し合う仕組みで、[[図書館奉仕]]のひとつである。'''図書館間貸し出し'''(としょかんかんかしだし)とも呼ぶ。相互貸借は図書館界独特の[[相互扶助]]システムであり、特に協定を結ぶことなく、相互の信頼関係に基づいて実施される{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。図書館によっては国内のみならず、国外とも相互貸借を行うことがある{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。


相互貸借には、ある[[図書館]]が所蔵する[[図書館資料]]の現物を貸し出す「現物貸借」と、図書館資料の[[複写]]物を提供する「文献複写」の2種類ある{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。[[公立図書館]]では現物貸借が、[[大学図書館]]では文献複写が多い{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。
相互貸借には、ある[[図書館]]が所蔵する[[図書館資料]]の現物を貸し出す「現物貸借」と、図書館資料の[[複写]]物を提供する「文献複写」の2種類ある{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。[[公立図書館]]では現物貸借が、[[大学図書館]]では文献複写が多い{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。
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相互貸借の業務は専門の窓口や担当者を設けるのが一般的で、[[レファレンスサービス]]に組み込まれていることが多い{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。利用者の多くは正確な[[書誌情報]]を持っていないため、相互貸借を受け付ける者は書誌情報の確認作業が必須である{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。以前は書誌情報の確認には高度な専門的知識が要求されたが、[[総合目録]]や論文[[データベース]]などが普及したことで容易に行えるようになっている{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。
相互貸借の業務は専門の窓口や担当者を設けるのが一般的で、[[レファレンスサービス]]に組み込まれていることが多い{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。利用者の多くは正確な[[書誌情報]]を持っていないため、相互貸借を受け付ける者は書誌情報の確認作業が必須である{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。以前は書誌情報の確認には高度な専門的知識が要求されたが、[[総合目録]]や論文[[データベース]]などが普及したことで容易に行えるようになっている{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。


場合によっては、利用者が日常利用する図書館に紹介状を発行してもらい、利用者自身が資料を所蔵する図書館まで赴く「図書館相互利用」になる{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。居住す自治体に隣接す自治体の図書館、当該図書館の所在自治体に在住・在勤・在学する者と同様に利用登録を行って貸出券の発行を受けられる場合もある<ref>[https://www2.kyotocitylib.jp/?page_id=116 初めての方へ(利用者登録)- 宇治市,大津市にお住まいの方] 京都市図書館</ref><ref>[http://library.city.kizugawa.lg.jp/guide.html 利用案内 - 広域個人貸出] 木津川市立図書館</ref>。
場合によっては、利用者が日常利用する図書館に紹介状を発行してもらい、利用者自身が資料を所蔵する図書館まで赴く「図書館相互利用」になる{{sfn|上田・倉田 編|2017|p=253}}。
また、利用館と所蔵館が相互利用協定を結んでい場合は、対象となる図書館へ利用者が直接赴き(紹介状は不要)、当該図書館利用登録を行って貸出券の発行を受けられる場合もある<ref>[https://www2.kyotocitylib.jp/?page_id=116 初めての方へ(利用者登録)- 宇治市,大津市にお住まいの方] 京都市図書館</ref><ref>[http://library.city.kizugawa.lg.jp/guide.html 利用案内 - 広域個人貸出] 木津川市立図書館</ref>。


== 日本の公立図書館における相互貸借 ==
== 日本の公立図書館における相互貸借 ==

2022年2月4日 (金) 07:55時点における版

図書館間相互貸借(としょかんかんそうごたいしゃく、: interlibrary loanILL)とは図書館同士で資料を融通し合う仕組みで、図書館奉仕のひとつである。図書館間貸し出し(としょかんかんかしだし)とも呼ぶ。相互貸借は図書館界独特の相互扶助システムであり、特に協定を結ぶことなく、相互の信頼関係に基づいて実施される[1]。図書館によっては国内のみならず、国外とも相互貸借を行うことがある[1]

相互貸借には、ある図書館が所蔵する図書館資料の現物を貸し出す「現物貸借」と、図書館資料の複写物を提供する「文献複写」の2種類ある[1]公立図書館では現物貸借が、大学図書館では文献複写が多い[1]

概要

図書館利用者の求めに応じて、図書館はその資料を所蔵する他館にその利用を申し込み、所蔵館は無料ないし少ない手数料でそれを貸し出す。(相互貸借にかかる経費は複写料・送料・梱包料であり、利用者に請求するのが一般的である[1]。)資料は申し込みを行った図書館へ輸送され、利用者への貸出あるいは館内利用に提供される。これにより利用者は、他の図書館が所蔵している図書視聴覚資料マイクロフィルム雑誌記事の写しなどを、所蔵館へ自ら出向くことなく利用することができる。ただし、映像資料については著作権の関係上できないものもある。日本の公立図書館における年間の相互貸借件数は約234万件(2014年度)である[1]

相互貸借の業務は専門の窓口や担当者を設けるのが一般的で、レファレンスサービスに組み込まれていることが多い[1]。利用者の多くは正確な書誌情報を持っていないため、相互貸借を受け付ける者は書誌情報の確認作業が必須である[1]。以前は書誌情報の確認には高度な専門的知識が要求されたが、総合目録や論文データベースなどが普及したことで容易に行えるようになっている[1]

場合によっては、利用者が日常利用する図書館に紹介状を発行してもらい、利用者自身が資料を所蔵する図書館まで赴く「図書館相互利用」になる[1]。 また、利用館と所蔵館が相互利用協定を結んでいる場合は、対象となる図書館へ利用者が直接赴き(紹介状は不要)、当該図書館で利用登録を行って貸出券の発行を受けられる場合もある[2][3]

日本の公立図書館における相互貸借

区市町村立図書館や都道府県立図書館の場合は、同一都道府県内の図書館からの相互貸借となる。例えば、最寄りの図書館が東京都内の図書館の場合、最寄りの図書館に置かれていない資料を請求すると、東京都内の他の区市町村立図書館や東京都立図書館から資料が届けられる。「相互」貸借とは言うものの、実際の図書館の現場では所蔵資料の多い大規模図書館への依頼が集中しており、相互扶助とは言えない状況である[1]

以下のような資料の場合は、所蔵する図書館の利用規則に従うのが通常である。

  • 資料の発行部数が極めて少ない、発行年が古い
  • 資料が特殊な性質を持っていて、利用者が多く見込めない
  • 資料が極めて高額である

所蔵図書館において館外持ち出し禁止の扱いになっている資料は、請求を受けた図書館内での閲覧に限られ、請求を受けた図書館が通常許可している貸出日数より、所蔵図書館が許可している日数が短い場合は、所蔵図書館側の日数が適用される。また複写については、著作権法により所蔵図書館が許可を行うよう規定されているため、所蔵図書館に許可を請求する必要がある。

他の都道府県の区市町村立図書館や都道府県立図書館と資料を相互貸借するシステムが確立していないため、同一都道府県内の全ての区市町村立図書館や都道府県立図書館に資料がなかった場合は、請求を受けた館による新規購入(リクエスト)になったり、請求自体が破棄されることがある。

脚注

参考文献

  • 上田修一・倉田敬子 編 編『図書館情報学 第二版』勁草書房、2017年3月20日、298頁。ISBN 978-4-326-00043-2 

関連項目