「官話」の版間の差分
編集の要約なし |
Yoshi Canopus (会話 | 投稿記録) |
||
(2人の利用者による、間の4版が非表示) | |||
27行目: | 27行目: | ||
官話はさらに4大下位方言に区分される。 |
官話はさらに4大下位方言に区分される。 |
||
# 華北東北方言([[ |
# 華北東北方言([[北京官話]]、[[東北官話]]、[[冀魯官話]]、[[膠遼官話]])- [[北京市|北京]]・[[天津市|天津]]・[[黒竜江省]]・[[吉林省]]・[[遼寧省]]・[[河北省]]・[[河南省]]・[[山東省]]と[[内蒙古]]の一部。 |
||
# 西北方言([[中原官話]]、[[蘭銀官話]]) - [[陝西省]]・[[甘粛省]]の全域と[[山西省|山西省・]][[青海省]]・[[寧夏]]・[[内蒙古]]の一部および中央アジアの[[ドンガン人]]居住区。 |
# 西北方言([[中原官話]]、[[蘭銀官話]]) - [[陝西省]]・[[甘粛省]]の全域と[[山西省|山西省・]][[青海省]]・[[寧夏]]・[[内蒙古]]の一部および中央アジアの[[ドンガン人]]居住区。 |
||
# 西南方言([[西南官話]]) - [[重慶市|重慶]]・[[四川省]]・[[雲南省]]・[[貴州省]]、[[湖北省]]の大部分、広西省西北部、湖南省西北部。 |
# 西南方言([[西南官話]]) - [[重慶市|重慶]]・[[四川省]]・[[雲南省]]・[[貴州省]]、[[湖北省]]の大部分、広西省西北部、湖南省西北部。 |
||
36行目: | 36行目: | ||
中国の歴代王朝においては、古くから政治的に共通語が設けられていたと考えられている。周代が使っていた共通語は「雅言」と呼ばれていて、漢代にも受け継がれてあるいは「通語」と称されている、「通」は共通語とし、広く通用する意味。 |
中国の歴代王朝においては、古くから政治的に共通語が設けられていたと考えられている。周代が使っていた共通語は「雅言」と呼ばれていて、漢代にも受け継がれてあるいは「通語」と称されている、「通」は共通語とし、広く通用する意味。 |
||
官話と呼ばれるのは、[[17世紀]]、[[華南]]に渡来した[[宣教師]]が、土着の言語のほかに官署で話されている公用語があることに気付き、これを[[官僚]]([[マンダリン (官僚)|マンダリン]] Mandarin)の言語と呼んだことに由来する。当時、規範となったのは[[南京市|南京]]の音に基づく[[南京官話]]であった。[[清]]代は[[北京市|北京]]が首都であったため、官話の中心は徐々に北京音を基にした[[ |
官話と呼ばれるのは、[[17世紀]]、[[華南]]に渡来した[[宣教師]]が、土着の言語のほかに官署で話されている公用語があることに気付き、これを[[官僚]]([[マンダリン (官僚)|マンダリン]] Mandarin)の言語と呼んだことに由来する。当時、規範となったのは[[南京市|南京]]の音に基づく[[南京官話]]であった。[[清]]代は[[北京市|北京]]が首都であったため、官話の中心は徐々に北京音を基にした[[北京官話]]へと移っていった。清代の官話政策は、[[雍正]]期に提議され、[[福建省]]には「正音書院」と呼ばれる官話の音を学ぶ[[書院 (中国)|書院]]が設けられ、[[広東省]]には民間の粤秀書院などを支援して官話教育を担わせた。教科書として『正音摂要』『正音咀華』などがつくられている。 |
||
[[辛亥革命]]による[[中華民国]]成立と前後して、官話は[[国語 (中国語)|国語]]と改められた。国語運動・白話文運動がおこり、北京語音を標準とすることが定められるなど、現代標準中国語の規範が整っていった。[[中華人民共和国]]は、北京語音、北方方言=官話方言の語彙、現代白話文の文法を標準とする「[[普通話]]」を共通語とし、その普及を図る政策を進めている。 |
[[辛亥革命]]による[[中華民国]]成立と前後して、官話は[[国語 (中国語)|国語]]と改められた。国語運動・白話文運動がおこり、北京語音を標準とすることが定められるなど、現代標準中国語の規範が整っていった。[[中華人民共和国]]は、北京語音、北方方言=官話方言の語彙、現代白話文の文法を標準とする「[[普通話]]」を共通語とし、その普及を図る政策を進めている。 |
||
53行目: | 53行目: | ||
* [[入声]] - およそ半数以上の南方官話には残る。 |
* [[入声]] - およそ半数以上の南方官話には残る。 |
||
* [[声調]] - 一般的に四つであるが、三つや五つの地域もある。 |
* [[声調]] - 一般的に四つであるが、三つや五つの地域もある。 |
||
==参照項目== |
|||
*[[南京官話]] |
|||
*[[明清官話]] |
|||
*[[東北官話]] |
|||
*[[北京官話]] |
|||
*[[中原官話]] |
|||
* [[冀魯官話]] |
|||
*[[膠遼官話]] |
|||
* [[西南官話]] |
|||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
||
71行目: | 81行目: | ||
{{DEFAULTSORT:かんわ}} |
{{DEFAULTSORT:かんわ}} |
||
[[Category:中国語]] |
[[Category:中国語]] |
||
[[Category:官話|*]] |
2024年3月14日 (木) 22:54時点における最新版
官話 | |
---|---|
官話/官话 | |
| |
話される国 | 中華人民共和国 |
地域 | 中国東北部・華北・西北部・西南部・江淮一帯 |
話者数 |
第一言語: 885,000,000 人[1] 総話者: 1,365,053,177 人[2] |
話者数の順位 | 1 |
言語系統 | |
初期形式 | |
言語コード | |
ISO 639-1 |
zh |
ISO 639-2 |
chi (B) zho (T) |
ISO 639-3 |
cmn |
|
官話 | |||||||
繁体字 | 官話 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
簡体字 | 官话 | ||||||
漢語拼音 | Guānhuà | ||||||
| |||||||
北方話 | |||||||
繁体字 | 北方話 | ||||||
簡体字 | 北方话 | ||||||
漢語拼音 | Běifānghuà | ||||||
|
官話(かんわ)は、中国語の方言区分の一つ。名称は公用語の意であり、古くから中国の政治・経済・文化の中心がこの方言の使用地域にあり、政官界で使われたことに由来する。白話小説に用いられ、近現代における標準中国語である国語、普通話、華語の基礎となった。官話方言、北方方言、北方話などとも呼ばれる。使用地域は南方地域にまで及ぶため、「北」とすることに異議が唱えられることもある。欧米ではマンダリン(Mandarin)と呼ばれる。
地域[編集]
官話方言の代表は、北京語・天津語・東北語・西安語・成都語・南京語・揚州語などである。中国の東北・華北・西南・江淮一帯の広い範囲に及んでおり、その使用率は漢民族人口の73%を占める。ただし、山西省を中心に話され、太原語を代表とする晋方言(晋語)は独立した大方言区とすべきであるとの意見がある。下位方言の江淮方言(下江官話)については呉方言に含めるべきであるとの意見もある。これは他の官話方言では消滅した入声(音節末子音が閉鎖音のもの)があるためである。
官話はさらに4大下位方言に区分される。
- 華北東北方言(北京官話、東北官話、冀魯官話、膠遼官話)- 北京・天津・黒竜江省・吉林省・遼寧省・河北省・河南省・山東省と内蒙古の一部。
- 西北方言(中原官話、蘭銀官話) - 陝西省・甘粛省の全域と山西省・青海省・寧夏・内蒙古の一部および中央アジアのドンガン人居住区。
- 西南方言(西南官話) - 重慶・四川省・雲南省・貴州省、湖北省の大部分、広西省西北部、湖南省西北部。
- 江淮方言(江淮官話) - 安徽省・江蘇省の長江以北の地域(ただし、徐州・蚌埠は除く)、江蘇省の鎮江以西から江西省九江以東にいたるまでの長江南岸地域。
歴史[編集]
共通語[編集]
中国の歴代王朝においては、古くから政治的に共通語が設けられていたと考えられている。周代が使っていた共通語は「雅言」と呼ばれていて、漢代にも受け継がれてあるいは「通語」と称されている、「通」は共通語とし、広く通用する意味。
官話と呼ばれるのは、17世紀、華南に渡来した宣教師が、土着の言語のほかに官署で話されている公用語があることに気付き、これを官僚(マンダリン Mandarin)の言語と呼んだことに由来する。当時、規範となったのは南京の音に基づく南京官話であった。清代は北京が首都であったため、官話の中心は徐々に北京音を基にした北京官話へと移っていった。清代の官話政策は、雍正期に提議され、福建省には「正音書院」と呼ばれる官話の音を学ぶ書院が設けられ、広東省には民間の粤秀書院などを支援して官話教育を担わせた。教科書として『正音摂要』『正音咀華』などがつくられている。
辛亥革命による中華民国成立と前後して、官話は国語と改められた。国語運動・白話文運動がおこり、北京語音を標準とすることが定められるなど、現代標準中国語の規範が整っていった。中華人民共和国は、北京語音、北方方言=官話方言の語彙、現代白話文の文法を標準とする「普通話」を共通語とし、その普及を図る政策を進めている。
満洲語の流入[編集]
清朝の約300年の支配の間に育まれた北京官話には、支配民族である満洲民族の言語・満洲語の語彙が幾つか含まれている。これらは主に宮廷で使用されたものであるが、「帥(洒脱である)」[3]などは現在も一般に普及している。
普通話ではこれら満洲語の語彙は排除されている。この点ではオスマン帝国のオスマン語とトルコ語の関係と似ている。
方言・言語[編集]
官話は上記のように本来は官僚の共通語の意味であるが、現在は方言名・言語名として使われることがある。この場合、「〜方言」という代わりに「〜官話」ということがある。
特徴[編集]
- 歯擦音 - 大部分の南方官話(西南官話と江淮官話の併称)に歯茎音s, ʦ, ʦʰとそり舌音ʂ, ʐ, ʈʂ, ʈʂʰの区別が存在しないが、北方官話(西南官話と江淮官話以外の官話、各意味の北方話)に存在する。
- 鼻韻母 - 西南官話以外、[m]はなく、[n]に合流している。北方官話に[n]と[ŋ]の区別はあるが、南方官話に区別しない。
- 入声 - およそ半数以上の南方官話には残る。
- 声調 - 一般的に四つであるが、三つや五つの地域もある。
参照項目[編集]
脚注[編集]
- ^ Top 100 Languages by Population - First Language Speakers
- ^ Top Ten Internet Languages - World Internet Statistics
- ^ 鋤田智彦「清代における言語接触」『岩手大学人文社会科学部創立40周年記念国際シンポジウム報告書』、岩手大学人文社会科学部、2019年3月、47-58頁、NAID 120006705874。
参考文献[編集]
- 『戦後初期日本における中国語研究基礎資料』近現代資料刊行会。 NCID BC0739716X。