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1800年代の後半から、英文学において死神というキャラクターは'''グリム・リーパー'''(Grim Reaper)の名で知られるようになった。グリム・リーパーという言葉が最初に文献に登場するのは1847年の『''The Circle of Human Life''』である<ref>''The Circle of Human Life'' is a translation by Robert Menzies of part of an earlier German book by [[August Tholuck]], ''Stunden Christlicher Andacht'', published in 1841.</ref><ref>{{cite web |title=grim reaper |url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/grim%20reaper |website=Merriam-Webster |access-date=1 September 2020}}</ref><ref>{{cite book |last1=Menzies |first1=Robert |title=The Circle of Human Life |date=1847 |publisher=Myles Macphail |location=Edinburgh |page=11}}</ref>。
1800年代の後半から、英文学において死神というキャラクターは'''グリム・リーパー'''(Grim Reaper)の名で知られるようになった。グリム・リーパーという言葉が最初に文献に登場するのは1847年の『''The Circle of Human Life''』である<ref>''The Circle of Human Life'' is a translation by Robert Menzies of part of an earlier German book by [[August Tholuck]], ''Stunden Christlicher Andacht'', published in 1841.</ref><ref>{{cite web |title=grim reaper |url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/grim%20reaper |website=Merriam-Webster |access-date=1 September 2020}}</ref><ref>{{cite book |last1=Menzies |first1=Robert |title=The Circle of Human Life |date=1847 |publisher=Myles Macphail |location=Edinburgh |page=11}}</ref>。


それ以降、一般的に大鎌、もしくは小ぶりな[[鎌|草刈鎌]]を持ち、[[黒]]を基調にした傷んだ[[ローブ]]を身にまとった[[骸骨|人間の白骨]]の姿で描かれ、時に[[ミイラ]]化しているか、完全に[[白骨化]]した[[ウマ|馬]]に乗っている事もある。また、[[脚]]が存在せず、常に浮遊しているものも多く、黒い[[翼]]を生やしている姿も描かれる。その大鎌を一度振り上げると、振り下ろされた鎌は必ず何者かの魂を獲ると言われ、死神の鎌から逃れるためには、他の者の魂を捧げなければならないとされる。
それ以降、一般的に大鎌、もしくは小ぶりな[[鎌|草刈鎌]]を持ち、[[黒]]を基調にした傷んだ[[ローブ]]を身にまとった[[骸骨|人間の白骨]]の姿で描かれ、時に[[ミイラ]]化しているか、完全に[[白骨化]]した[[ウマ|馬]]に乗っている事もある。また、[[脚]]が存在せず、常に浮遊しているものも多く、黒い[[翼]]を生やしている姿も描かれる。
こうした一般的に想像される禍々しい死神の姿は、一種の[[アレゴリー]]であり、死を[[擬人化]]したものである。[[神話]]や[[宗教]]・作品によってその姿は大きく変わる。時には白骨とは違った趣向の不気味なデザインとなる事もある。
その大鎌を一度振り上げると、振り下ろされた鎌は必ず何者かの魂を獲ると言われ、死神の鎌から逃れるためには、他の者の魂を捧げなければならないとされる。


[[心霊写真]]においては、鎌を持った死神が写ると命に関わる危険の前兆で、たとえ鎌を持っていなくとも何らかの危機が起きる、という迷信も存在する。
[[心霊写真]]においては、鎌を持った死神が写ると命に関わる危険の前兆で、たとえ鎌を持っていなくとも何らかの危機が起きる、という迷信も存在する。


基本的に、死神は悪い存在として扱われる事が多いが、『最高神に仕える農夫』という異名もある。この場合、死を迎える予定の人物を冥府へと導く役目を死神が持っているといわれる。その人物の魂のみが現世に彷徨い続け、悪霊化するのを防ぐためである。
基本的に、死神は悪い存在として扱われる事が多いが、『最高神に仕える農夫』という異名もある。この場合、死を迎える予定の人物を冥府へと導く役目を死神が持っているといわれる。その人物の魂のみが現世に彷徨い続け、悪霊化するのを防ぐためである。

こうした一般的に想像される禍々しい死神の姿は 一種の[[アレゴリー]]であり、死を[[擬人化]]したものである。[[神話]]や[[宗教]]・作品によってその姿は大きく変わる。時には白骨とは違った趣向の不気味なデザインとなる事もある。


== 日本の死神 ==
== 日本の死神 ==
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2024年4月20日 (土) 09:43時点における版

西洋の死神
オーストリアデュルンシュタイン市の修道院の彫刻
ろうそく消しを溶接する死神を示す古代のイラスト。[要検証]

死神(しにがみ)とは、生命を司るとされるで世界各地に類似の伝説が存在する。冥府においては管理者とされ、落語など様々な娯楽作品にも古くから死を司る存在として登場する。

西洋の死神

西洋において死の概念が擬人化されて、生きた骸骨として描かれるようになったのは中世以降である[1]。伝承における登場人物として、大鎌を手にした姿をしていることが多く、間もなく死を迎える人間の魂を集めていると言われる。イギリスとドイツでは、死神は男性として表現されるのが一般的だが、フランス、スペイン、イタリアにおいては女性の姿をしていることも珍しくない[2]

1800年代の後半から、英文学において死神というキャラクターはグリム・リーパー(Grim Reaper)の名で知られるようになった。グリム・リーパーという言葉が最初に文献に登場するのは1847年の『The Circle of Human Life』である[3][4][5]

それ以降、一般的に大鎌、もしくは小ぶりな草刈鎌を持ち、を基調にした傷んだローブを身にまとった人間の白骨の姿で描かれ、時にミイラ化しているか、完全に白骨化したに乗っている事もある。また、が存在せず、常に浮遊しているものも多く、黒いを生やしている姿も描かれる。

こうした一般的に想像される禍々しい死神の姿は、一種のアレゴリーであり、死を擬人化したものである。神話宗教・作品によってその姿は大きく変わる。時には白骨とは違った趣向の不気味なデザインとなる事もある。

その大鎌を一度振り上げると、振り下ろされた鎌は必ず何者かの魂を獲ると言われ、死神の鎌から逃れるためには、他の者の魂を捧げなければならないとされる。

心霊写真においては、鎌を持った死神が写ると命に関わる危険の前兆で、たとえ鎌を持っていなくとも何らかの危機が起きる、という迷信も存在する。

基本的に、死神は悪い存在として扱われる事が多いが、『最高神に仕える農夫』という異名もある。この場合、死を迎える予定の人物を冥府へと導く役目を死神が持っているといわれる。その人物の魂のみが現世に彷徨い続け、悪霊化するのを防ぐためである。

日本の死神

日本神話におけるイザナミや冥界の王とされる閻魔が死神とみなされることもある[6][7]。西洋における死神と日本における死神は異なると考えられることもある。日本にはその概念が存在しなかったとされることもある[8][9]

江戸時代以降、例えば近松門左衛門による心中をテーマにした人形浄瑠璃や古典の書籍などに、「死神」という言葉はみられる[10][11][12]。戦後に、西洋の死神の観念が日本に入ってきたことで、死神は人格を持つ存在として語られるようになり[8]、テレビドラマや漫画、ゲームなど様々なフィクション作品に登場するようになった[13][14]

宗教・神話における死神

多くの文化では、その神話の中に死神を組み入れている。人間の「死」は、「誕生」と共に人生にとって重要な位置を占めるものである。その性質上「悪の存在」的な認知をされている。

殆どの場合、死神は宗教の中で最も重要な神の1つとされ、最高神もしくは次いで位の高い神となっている場合が多く、崇拝の対象にしている宗教もある。

この場合、単に死神崇拝といっても「絶対的な力を持つ神」の能力の一部に「生死を操る能力」があるなど、いわゆる邪教崇拝だけではない点に注意するべきである。穀物生成や輪廻転生に関連付けられる地域では死と再生の神々として捉えられることもある。

キリスト教などの一神教においては神は唯一神以外になく、実際に生物に死を知らしめ、それを執行するのは天使(いわゆる「死の天使」)である。このためキリスト教では「死神」は存在せず、代わりに「悪魔」が存在する。また、直接死神とは書かれていないが、黙示録において「第4の封印」を開けた時、「剣と飢餓を持って蒼ざめた馬に乗った"死"という者」がやって来ると記載されている。この者が神によって遣わされているという点、そして比喩表現であるということは特筆すべきである。また民話や創作においては、悪魔とは別の存在(つまり和訳語の"死神"に反して神ではない)としての死神が登場する事がある(グリム童話の『死神の名付け親 Der Gevatter Tod』など)。

タロットカードにおける死神

タロット占いでは「大アルカナ」の13番目のカード「Death」としてまたは死神が使われる。死神は「停止」や「損失」など、不吉な出来事の予兆とされるが、カードの組み合わせやデッキから引き出したときの図柄の向きによって「死からの再生」や「やり直し」に意味が変化する。

死神の一覧

関連項目

脚注

  1. ^ Noyes, Deborah (2008). Encyclopedia of the End: Mysterious Death in Fact, Fancy, Folklore, and More. Boston: Houghton Mifflin. p. 35. ISBN 978-0618823628 
  2. ^ Guthke, Karl S. (1999). The Gender of Death: A Cultural History in Art and Literature. Cambridge: Cambridge University Press. p. 7. ISBN 0521644607 
  3. ^ The Circle of Human Life is a translation by Robert Menzies of part of an earlier German book by August Tholuck, Stunden Christlicher Andacht, published in 1841.
  4. ^ grim reaper”. Merriam-Webster. 1 September 2020閲覧。
  5. ^ Menzies, Robert (1847). The Circle of Human Life. Edinburgh: Myles Macphail. p. 11 
  6. ^ 七会静『よくわかる「世界の死神」事典』廣済堂あかつき〈廣済堂文庫〉、2009年11月30日、168-174頁。ISBN 978-4-331-65459-0 
  7. ^ 河野信子 編『女と男の時空』 1巻、藤原書店、1995年9月、115頁。ISBN 978-4-89434-022-0 
  8. ^ a b 多田克己 編『絵本百物語 桃山人夜話国書刊行会、1997年6月24日、127-128頁。ISBN 978-4-336-03948-4 
  9. ^ 木村文輝『生死の仏教学』法藏館、2007年4月1日、141頁。ISBN 978-4-8318-2418-9 
  10. ^ 近松門左衛門『近松門左衛門集』 2巻、鳥越文蔵他校中・訳、小学館新編日本古典文学全集〉、1998年4月1日、76頁。ISBN 978-4-09-658075-2 
  11. ^ 鳥越他 1998, p. 266.
  12. ^ 桃山人『桃山人夜話 絵本百物語』角川書店角川ソフィア文庫〉、2006年7月31日、131頁。ISBN 978-4-04-383001-5 
  13. ^ 七会 2009, p. 3.
  14. ^ 村上健司他編著『百鬼夜行解体新書』コーエー、2000年11月、69頁。ISBN 978-4-87719-827-5