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「MQ-8 ファイアスカウト」の版間の差分

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'''MQ-8 ファイアスカウト'''(MQ-8 Fire Scout, [[英語]]で[[火力 (軍事)|火力]][[偵察]]兵の意)は、[[ノースロップ・グラマン]]社が[[アメリカ海軍]]向けに開発した偵察・戦場認識・ターゲッティングの支援を任務とする[[無人航空機]]である。
[[ファイル:Fire Scout unmanned helicopter crop.jpg|thumb|200px|ナッシュビルに着艦を行うRQ-8A]]
'''ノースロップ・グラマン MQ-8 ファイアスカウト'''(Fire Scout,[[英語]]で火力[[偵察]]兵の意)は、[[ノースロップ・グラマン]]社が[[アメリカ海軍]]向けに開発した偵察、戦場認識、ターゲティングの支援を任務とする[[無人航空機]]である。


有人機を原型にして開発された機体であり、初期型のRQ-8Aはシュワイザー330、改良型のMQ-8Bはシュワイザー333が原型になっている。
有人機を原型にして開発された機体であり、初期型のRQ-8Aはシュワイザー330、改良型のMQ-8Bは[[:en:Sikorsky S-333|シュワイザー333]]が原型になっている。
__TOC__
{{-}}


== 機体の性能 ==
== 概要 ==
=== RQ-8A ===
=== RQ-8A ===
[[ファイル:Fire Scout unmanned helicopter crop.jpg|thumb|250px|「ナッシュビル」に着艦を行うRQ-8A]]
アメリカ海軍は[[RQ-2 パイオニア]]の退役後、その後継となる第2世代の[[無人航空機]]を探し始めた。海軍がパイオニアの後継機に求めたスペックは[[垂直離着陸機]]であり、90kgのペイロード、200kmの航続距離、高度6kmで3時間の滞空能力、風速46km/h (29mph)の条件下で艦艇に着艦する能力および整備間隔が190飛行時間であることだった。
[[アメリカ海軍]]は[[RQ-2 パイオニア]]の退役後、その後継となる第2世代の[[無人航空機]]を探し始めた。海軍がRQ-2の後継機に求めたスペックは[[垂直離着陸機]]であり、90kgの[[ペイロード (航空宇宙)|ペイロード]]、200kmの[[航続距離]]、高度6kmで3時間の滞空能力、風速46km/h(29mph)の条件下で[[軍艦|艦艇]]に着艦する能力および整備間隔が190飛行時間であることだった。


このコンペディションには[[ベル・ヘリコプター]]社、[[シコルスキー・エアクラフト]]社そしてテレダイン・ライアン社(ライアン・エアロノーティカル社)とシュワイザー・エアクラフト社協力の3案が参加しておこなわれ、[[2000年]]夏にライアン・エアロノーティカル社の案が選定された。
このコンペディションには[[ベル・ヘリコプター]]社、[[シコルスキー・エアクラフト]]社そしてテレダイン・ライアン社({{仮リンク|ライアン・エアロノーティカル|en|Ryan Aeronautical}}社)とシュワイザー・エアクラフト社協力の3案が参加してわれ、[[2000年]]夏にライアン・エアロノーティカル社の案が選定された。


選定後にRQ-8A ファイアスカウトと命名されたこの機体はシュワイザー社製の有人ヘリコプターを元に、艦船で安全に保管できるJP-5とJP-8を燃料とするロールスロイス・アリソン250-C20[[ガスタービンエンジン]]を搭載して無人化したもので、試作機は2000年1月に自立飛行を成功させていた。
選定後にRQ-8A ファイアスカウトと命名されたこの機体はシュワイザー社製の有人[[ヘリコプター]]を元に、艦船で安全に保管できる[[ジェット燃料#軍用規格|JP-5]][[JP-8]][[燃料]]とする[[ロールスロイス・ホールディングス#アリソン・エンジン社の買収|ロールスロイス・]][[アリソン 250|アリソン250-C20]] [[ガスタービンエンジン]]を搭載して無人化したもので、[[プロトタイプ|試作機]][[2000年]]1月に自立飛行を成功させていた。


ファイアスカウトには機首下部に電子光学および[[赤外線]](EO/IR)カメラと[[レーザー]][[光波測距儀|距離測定装置]]を搭載したセンサーボールターレットが積まれており、これは海軍の艦艇や[[アメリカ海兵隊]]の[[ハンヴィー]]に搭載された操縦システムから280km離れた見通し線外においても[[RQ-4|RQ-4 グローバルホーク]]との[[戦術データ・リンク]]を通じて制御することが可能であった。
RQ-8Aには機首下部に電子光学および[[赤外線]](EO/IR)[[カメラ]]と[[レーザー]][[光波測距儀|距離測定装置]]を搭載したセンサーボール[[ターレット]]が積まれており、これは海軍の艦艇や[[アメリカ海兵隊]]の[[ハンヴィー]]に搭載された操縦システムから280km離れた見通し線外においても[[RQ-4|RQ-4 グローバルホーク]]との[[戦術データ・リンク]]を通じて制御することが可能であった。


[[2006年]]1月、RQ-8A ファイアスカウトは航行する[[クリーブランド級ドック型輸送揚陸艦]]「[[ナッシュビル (ドック型輸送揚陸艦)|ナッシュビル]]」に着艦することに成功した。無人ヘリがパイロットの制御無しで移動中のアメリカ海軍の艦船に着艦するのはこれが史上初めてであった。
[[2006年]]1月、RQ-8Aは航行する[[クリーブランド級ドック型輸送揚陸艦]]「[[ナッシュビル (ドック型輸送揚陸艦)|ナッシュビル]]」に着艦することに成功した。無人ヘリが[[パイロット (航空)|パイロット]]の制御無しで移動中の海軍の艦船に着艦するのはこれが史上初めてであった。


=== MQ-8B ===
=== MQ-8B ===
[[ファイル:MQ-8B Fire Scout.jpeg|200px|thumb|[[:en:RoyalInternational Air Tattoo|RIAT]]で展示されるMQ-8B ファイアスカウト]]
[[ファイル:MQ-8B Fire Scout.jpeg|250px|thumb|[[:en:RoyalInternational Air Tattoo|RIAT]]で展示されるMQ-8B]]
[[ファイル:US Navy 090331-N-8273J-430 Chief of Naval Operations (CNO) Adm. Gary Roughead tours the Northrop Grumman MQ-8B Fire Scout Vertical Takeoff and Landing Tactical Unmanned Aerial Vehicle (VTUAV) Facility in Pascugula, Miss.jpg|200px|thumb|組み立て中のMQ-8B]]
[[ファイル:US Navy 090331-N-8273J-430 Chief of Naval Operations (CNO) Adm. Gary Roughead tours the Northrop Grumman MQ-8B Fire Scout Vertical Takeoff and Landing Tactical Unmanned Aerial Vehicle (VTUAV) Facility in Pascugula, Miss.jpg|250px|thumb|組み立て中のMQ-8B]]
RQ-8の開発計画は問題なく進行していたが、[[アメリカ海軍|海軍]]はRQ-8の性能に満足せず[[2001年]]に計画への資金提供を停止してしまった。だが、RQ-8の開発はその後も継続され、テレダイン・ライアンの親会社である[[ノースロップ・グラマン]]はさまざまな方面に売り込みを始めることとなる。その結果[[フューチャー・コンバット・システム|FCS]]で使用する[[無人航空機|無人機]]を探していた[[アメリカ陸軍]]が興味を持ち、[[2003年]]に7機のRQ-8B([[2006年]]に名称をMQ-8Bに変更)を評価目的で購入することになった。


MQ-8Bは4枚ブレードのメインローターを採用しており、RQ-8Aの3枚ブレードよりも騒音が抑えられ同時に上昇性能も向上している。このメインローターの改良で最大離陸重量はRQ-8Aから500ポンド(225kg)増加して3,150ポンド(1,430kg)となっている。また、[[小翼|スタブウィング]]を装備しており、[[ヘルファイア (ミサイル)|AGM-114 ヘルファイア]][[対戦車ミサイル]]、[[GBU-44/B バイパーストライク|ヴァイパーストライク]][[誘導爆弾]]、[[ハイドラ70ロケット弾#APKWS|APKWS]] 70mm [[レーザー誘導]][[ロケット弾]]を搭載して対地攻撃を行うことができる他、[[弾薬]]や医療品などの[[補給]]物資を前線に[[輸送]]するといった任務にも使用できる。
ファイアスカウトの開発計画は問題なく進行していたが、海軍はファイアスカウトの性能に満足せず[[2001年]]に計画への資金提供を停止してしまった。だが、ファイアスカウトの開発はその後も継続され、ノースロップ・グラマンはさまざまな方面に売り込みを始めることとなる。その結果[[フューチャー・コンバット・システム|FCS]]で使用する無人機を探していた[[アメリカ陸軍]]が興味を持ち、2003年に7機のRQ-8B(2006年に名称をMQ-8Bに変更)を評価目的で購入することになった。


MQ-8Bは[[センサー]]類を交換することでさまざまな任務に対応できるように設計されており、昼夜(day/night)両用センサーおよび[[レーザー目標指示装置]]、[[:en:Tactical Synthetic Aperture Radar|TSAR]]および移動目標インジケーター(MTI)、[[シギント|SIGINT]]モジュール、[[地雷]]検出システム(ASTAMIDS)、[[戦術データ・リンク#TCDL|共通戦術データ・リンク(TCDL)]]などを搭載できる。
MQ-8Bは4枚ブレードのメインローターを採用しており、RQ-8Aの3枚ブレードよりも騒音が抑えられ同時に上昇性能も向上している。このメインローターの改良で最大離陸重量はRQ-8A から500ポンド(225kg)増加して3150ポンド(1,430kg)となっている。また、スタブウィングを装備しており、[[ヘルファイア (ミサイル)|ヘルファイア]][[対戦車ミサイル]]、[[GBU-44/B バイパーストライク|ヴァイパーストライク]][[誘導爆弾]]、[[ハイドラ70ロケット弾#APKWS|APKWS]] 70mmレーザー誘導ロケット弾を搭載して対地攻撃を行うことができる他、弾薬や医療品などの補給物資を前線に輸送するといった任務にも使用できる。


陸軍での採用は実現しなかったが、皮肉なことに海軍がかつて放棄したRQ-8に再び興味を示し、MQ-8Bの派生型である「シースカウト」を8機評価目的で購入した。
ファイアスカウトはセンサー類を交換することでさまざまな任務に対応できるように設計されており、昼夜(day/night)両用センサーおよびレーザー目標指示器、[[:en:Tactical Synthetic Aperture Radar|TSAR]]および移動目標インジケーター (MTI)、[[シギント|SIGINT]]モジュール、[[地雷]]検出システム(ASTAMIDS)、戦術指令データリンク(TCDL)などを搭載できる。


この陸軍の計画が順調に推移したのを見たアメ軍は皮肉なことにかつて放棄したファイアスカウトに再興味を示し、MQ-8Bの派生型である「シースカウト」を8機評価目的で購入した。海軍は将来的にシースカウトを[[沿海域戦闘艦|沿海域戦闘艦(LCS)]]に搭載して運用する予定である。
[[ノースアイランド海航空基地]]や[[ノーフォーク海軍基地]]HSC(ヘコプター上戦闘飛行隊[[英語|英]]: Helicopter Sea Combat Squadron)及HSM(ヘリコプター海洋打撃飛行隊[[英語|英]]: Helicopter Maritime Strike Squadron)の一部の部隊では既にMQ-8Bが配備されており<ref>{{Cite book|和書|title=航空ファン|date=2022/05/20|year=2022|publisher=文林堂}}</ref>、海軍は将来的にシースカウトを[[沿海域戦闘艦]](LCS)に搭載して運用する予定である。
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== 派生型 ==
=== MQ-8C ===
[[ファイル:MQ-8C_Fire_Scout_flying_over_Webster_Field_Annex.jpg|250px|thumb|MQ-8C]]
;RQ-8A :
{{Main|ノースロップ・グラマン MQ-8C ファイア・スカウト}}
;RQ-8B :
;MQ-8B :


有人機である[[ベル 407]]の機体にMQ-8Bの遠隔操縦システムを搭載し[[無人航空機|無人機]]とした派生型。
== 運用者 ==
;{{USA}}
* [[アメリカ陸軍]]
* [[アメリカ海軍]]


システムはMQ-8Bと95%が共通ながら、MQ-8Bと比べて航続距離が2倍、ペイロードが3倍となった。貨物を搭載するスペースを備え、[[輸送]]任務も想定されている。MQ-8B同様に、ノースアイランド海軍航空基地やノーフォーク海軍基地のHSC及びHSMの部隊に配備されており、[[コンステレーション級ミサイルフリゲート]]にも搭載される予定である。
== スペック ==
{{-}}
* '''乗員:''' 無し

* '''全長:''' 22.87 ft(7m)
== 要目 (MQ-8B)==
* '''メインローター直径:''' 27ft 6in(8.4m)
[[File:US Navy 040924-N-0295M-043 A Northrop Grumman RQ-8B Fire Scout Vertical Take-Off and Landing Tactical Unmanned Aerial Vehicle (VTUAV) System sits on the flight line as a static display at the 2004 Naval Air Station Oceana Air S.jpg|thumb|right|[[ハイドラ70ロケット弾#APKWS|APKWS]]を搭載したMQ-8B]]
* '''全高:''' 9.42ft(2.9m)
{{航空機スペック
* '''総重量:''' 3,150lb(1,430kg)
|出典 = Northrop Grumman,<ref>[http://www.as.northropgrumman.com/products/mq8bfirescout_navy/assets/fsn_ds.pdf "MQ-8B Fire Scout"] ''Northrop Grumman''. Retrieved: 21 April 2010.</ref> Nav Air<ref name="navair">[http://www.navair.navy.mil/index.cfm?fuseaction=home.display&key=8250AFBA-DF2B-4999-9EF3-0B0E46144D03 "MQ-8B Fire Scout"] ''Nav Air''. Retrieved: 21 April 2010.</ref>
* '''巡航速度:''' 125+mph(201+km/h)
|固定翼 or 回転翼?=回転翼<!-- 選択肢: 固定翼/回転翼 -->
* '''滞空時間:''' 8時間
|ジェット or プロペラ?=プロペラ<!-- 選択肢: ジェット/プロペラ/混載/その他 -->
* '''実用上昇限度:''' 20,000ft(6,100m)
|乗員=[[無人航空機|無人]]
|ペイロード SI=272kg
|ペイロード fp=600lb
|全長 SI=7.3m
|全長 fp=23.95ft
|スパン SI=8.4m
|スパン fp=27.5ft
|全高 SI=2.9m
|全高 fp=9.71ft
|面積 SI=
|面積 fp=
|翼型 =
|空虚重量 SI=940.3kg
|空虚重量 fp=2,073lb
|最大離陸重量 SI=1,430kg
|最大離陸重量 fp=3,150lb
|その他の諸元=
|エンジン数(プロペラ)=1
|エンジン名(プロペラ)=[[アリソン 250]]
|エンジン種類(プロペラ)=[[ターボシャフトエンジン]]
|出力 SI=420hp
|出力 fp=313kW
|出力 original=
|出力 more=
|最大速度 SI=213km/h以上
|最大速度 fp=115ノット
|巡航速度 SI=200km/h
|巡航速度 fp=110ノット
|航続距離 SI=
|航続距離 fp=
|戦闘行動半径 SI=203.7km
|戦闘行動半径 fp=110nmi
|戦闘行動半径 more= ※進出先での5時間以上の哨戒任務を含む
|フェリーレンジ SI=
|フェリーレンジ fp=
|上昇限度 SI=6,100m
|上昇限度 fp=20,000ft
|翼面(円板)荷重 SI=
|翼面(円板)荷重 fp=
|最大荷重 SI=
|最大荷重 fp=
|その他の性能=
|アビオニクス=
}}

== 登場作品 ==
; 『[[空母いぶき|空母いぶき GREAT GAME]]』
: [[あさひ型護衛艦 (2代)|あさひ型汎用護衛艦]]「[[しらぬい (護衛艦)|しらぬい]]」の艦載されている無人哨戒ヘリとして登場。

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
73行目: 124行目:


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{{Mil-aviation-stub}}
{{アメリカ軍の固定翼 (呼称統一以降)}}
{{アメリカ軍の無人航空機}}
{{アメリカ軍の偵察機}}


{{DEFAULTSORT:MQ008}}
[[Category:アメリカ合衆国の軍用機]]
[[Category:アメリカ合衆国の軍用機]]
[[Category:無人航空機]]
[[Category:アメリカ合衆国の無人航空機]]
[[Category:無人偵察機]]
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[[Category:シギント]]
[[Category:軍用ヘリコプター]]

[[Category:艦載ヘリコプター]]
[[de:Northrop Grumman MQ-8]]
[[Category:ノースロップ・グラマンの航空機]]
[[en:Northrop Grumman MQ-8 Fire Scout]]
[[fa:ام‌کیو-۸ فایر اسکات]]
[[fr:MQ-8 Fire Scout]]
[[it:Northrop Grumman MQ-8 Fire Scout]]
[[ru:MQ-8 Fire Scout]]
[[tr:MQ-8 Fire Scout]]
[[zh:MQ-8火力侦察兵无人机]]

2024年5月29日 (水) 15:18時点における最新版

MQ-8 ファイアスカウト

MQ-8B

MQ-8B

MQ-8 ファイアスカウト(MQ-8 Fire Scout, 英語火力偵察兵の意)は、ノースロップ・グラマン社がアメリカ海軍向けに開発した偵察・戦場認識・ターゲッティングの支援を任務とする無人航空機である。

有人機を原型にして開発された機体であり、初期型のRQ-8Aはシュワイザー330が、改良型のMQ-8Bはシュワイザー333が原型になっている。

概要

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RQ-8A

[編集]
「ナッシュビル」に着艦を行うRQ-8A

アメリカ海軍RQ-2 パイオニアの退役後、その後継となる第2世代の無人航空機を探し始めた。海軍がRQ-2の後継機に求めたスペックは垂直離着陸機であり、90kgのペイロード、200kmの航続距離、高度6kmで3時間の滞空能力、風速46km/h(29mph)の条件下で艦艇に着艦する能力および整備間隔が190飛行時間であることだった。

このコンペディションにはベル・ヘリコプター社、シコルスキー・エアクラフト社、そして、テレダイン・ライアン社(ライアン・エアロノーティカル英語版社)とシュワイザー・エアクラフト社協力の3案が参加して行われ、2000年夏にライアン・エアロノーティカル社の案が選定された。

選定後にRQ-8A ファイアスカウトと命名されたこの機体はシュワイザー社製の有人ヘリコプターを元に、艦船で安全に保管できるJP-5JP-8燃料とするロールスロイス・アリソン250-C20 ガスタービンエンジンを搭載して無人化したもので、試作機2000年1月に自立飛行を成功させていた。

RQ-8Aには機首下部に電子光学および赤外線(EO/IR)カメラレーザー距離測定装置を搭載したセンサーボールターレットが積まれており、これは海軍の艦艇やアメリカ海兵隊ハンヴィーに搭載された操縦システムから280km離れた見通し線外においてもRQ-4 グローバルホークとの戦術データ・リンクを通じて制御することが可能であった。

2006年1月、RQ-8Aは航行するクリーブランド級ドック型輸送揚陸艦ナッシュビル」に着艦することに成功した。無人ヘリがパイロットの制御無しで移動中の米海軍の艦船に着艦するのはこれが史上初めてであった。

MQ-8B

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RIATで展示されるMQ-8B
組み立て中のMQ-8B

RQ-8の開発計画は問題なく進行していたが、海軍はRQ-8の性能に満足せず2001年に計画への資金提供を停止してしまった。だが、RQ-8の開発はその後も継続され、テレダイン・ライアンの親会社であるノースロップ・グラマンはさまざまな方面に売り込みを始めることとなる。その結果FCSで使用する無人機を探していたアメリカ陸軍が興味を持ち、2003年に7機のRQ-8B(2006年に名称をMQ-8Bに変更)を評価目的で購入することになった。

MQ-8Bは4枚ブレードのメインローターを採用しており、RQ-8Aの3枚ブレードよりも騒音が抑えられ同時に上昇性能も向上している。このメインローターの改良で最大離陸重量はRQ-8Aから500ポンド(225kg)増加して3,150ポンド(1,430kg)となっている。また、スタブウィングを装備しており、AGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイルヴァイパーストライク誘導爆弾APKWS 70mm レーザー誘導ロケット弾を搭載して対地攻撃を行うことができる他、弾薬や医療品などの補給物資を前線に輸送するといった任務にも使用できる。

MQ-8Bはセンサー類を交換することでさまざまな任務に対応できるように設計されており、昼夜(day/night)両用センサーおよびレーザー目標指示装置TSARおよび移動目標インジケーター(MTI)、SIGINTモジュール、地雷検出システム(ASTAMIDS)、共通戦術データ・リンク(TCDL)などを搭載できる。

陸軍での採用は実現しなかったが、皮肉なことに海軍がかつて放棄したRQ-8に再び興味を示し、MQ-8Bの派生型である「シースカウト」を8機評価目的で購入した。

ノースアイランド海軍航空基地ノーフォーク海軍基地のHSC(ヘリコプター海上戦闘飛行隊、: Helicopter Sea Combat Squadron)及びHSM(ヘリコプター海洋打撃飛行隊、: Helicopter Maritime Strike Squadron)の一部の部隊では既にMQ-8Bが配備されており[1]、海軍は将来的にシースカウトを沿海域戦闘艦(LCS)に搭載して運用する予定である。

MQ-8C

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MQ-8C

有人機であるベル 407の機体にMQ-8Bの遠隔操縦システムを搭載し無人機とした派生型。

システムはMQ-8Bと95%が共通ながら、MQ-8Bと比べて航続距離が2倍、ペイロードが3倍となった。貨物を搭載するスペースを備え、輸送任務も想定されている。MQ-8B同様に、ノースアイランド海軍航空基地やノーフォーク海軍基地のHSC及びHSMの部隊に配備されており、コンステレーション級ミサイルフリゲートにも搭載される予定である。

要目 (MQ-8B)

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APKWSを搭載したMQ-8B

出典: Northrop Grumman,[2] Nav Air[3]

諸元

性能

  • 最大速度: 213km/h以上 (115ノット)
  • 巡航速度: 200km/h (110ノット)
  • 戦闘行動半径: 203.7km (110nmi) ※進出先での5時間以上の哨戒任務を含む
  • 実用上昇限度: 6,100m (20,000ft)


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登場作品

[編集]
空母いぶき GREAT GAME
あさひ型汎用護衛艦しらぬい」の艦載されている無人哨戒ヘリとして登場。

出典

[編集]
  1. ^ 『航空ファン』文林堂、2022年5月20日。 
  2. ^ "MQ-8B Fire Scout" Northrop Grumman. Retrieved: 21 April 2010.
  3. ^ "MQ-8B Fire Scout" Nav Air. Retrieved: 21 April 2010.

関連項目

[編集]