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== 機体の性能 ==
== 機体の性能 ==
=== RQ-8A ===
=== RQ-8A ===
アメリカ海軍は[[RQ-2 パイオニア]]の退役後、その後継となる第2世代の[[無人航空機]]を探し始めた。海軍がパイオニアの後継機に求めたスペックは[[垂直離着陸機]]であり90kgのペイロード、200kmの航続距離、高度6kmで3時間の滞空、風速46km/h (29mph)の条件下で艦艇に着艦する能力および整備間隔が190飛行時間であることだった。
アメリカ海軍は[[RQ-2 パイオニア]]の退役後、その後継となる第2世代の[[無人航空機]]を探し始めた。海軍がパイオニアの後継機に求めたスペックは[[垂直離着陸機]]であり90kgのペイロード、200kmの航続距離、高度6kmで3時間の滞空、風速46km/h (29mph)の条件下で艦艇に着艦する能力および整備間隔が190飛行時間であることだった。


このコンペディションには[[ベル・ヘリコプター]]社、[[シコルスキー]]社そしてテレダイン・ライアン社(ライアン・エアロノーティカル社)とシュワイザー・エアクラフト社協力の3案が参加しておこなわれ、[[2000年]]夏にライアン・エアロノーティカル社の案が選定された。この機体は有人のシュワイザー社製ヘリコプターを元に新設計の機体と燃料システムを搭載して無人化したもので、試作機は2000年1月に自立飛行を成功させていた。エンジンには艦船で安全に保管できるJP-5とJP-8を燃料とするロールスロイス・アリソン250-C20タービンエンジンが搭載されていた。この機体は選定後RQ-8Aファイアスカウトと命名された。
このコンペディションには[[ベル・ヘリコプター]]社、[[シコルスキー]]社そしてテレダイン・ライアン社(ライアン・エアロノーティカル社)とシュワイザー・エアクラフト社協力の3案が参加しておこなわれ、[[2000年]]夏にライアン・エアロノーティカル社の案が選定された。


選定後にRQ-8A ファイアスカウトと命名されたこの機体はシュワイザー社製の有人ヘリコプターを元に、艦船で安全に保管できるJP-5とJP-8を燃料とするロールスロイス・アリソン250-C20タービンエンジンを搭載して無人化したもので、試作機は2000年1月に自立飛行を成功させていた。
ファイアスカウトには機首下部に電子光学および[[赤外線]](EO/IR)カメラとレーザー距離測定装置を搭載したセンサーボールターレットが搭載されていた。これは海軍の艦艇や[[アメリカ海兵隊]]の[[ハンヴィー]]に搭載された操縦システムから280km離れた見通し線外においても[[RQ-4|RQ-4 グローバルホーク]]との[[データリンク]]を通じて制御することが可能であった。


ファイアスカウトには機首下部に電子光学および[[赤外線]](EO/IR)カメラとレーザー距離測定装置を搭載したセンサーボールターレットが積まれており、これは海軍の艦艇や[[アメリカ海兵隊]]の[[ハンヴィー]]に搭載された操縦システムから280km離れた見通し線外においても[[RQ-4|RQ-4 グローバルホーク]]との[[データリンク]]を通じて制御することが可能であった。
[[2006年]]1月、RQ-8A ファイアスカウトは航行する[[クリーブランド級ドック型輸送揚陸艦]]「[[ナッシュビル (ドック型輸送揚陸艦)|ナッシュビル]]」に着艦することに成功した。無人ヘリがパイロットの制御無しで移動するアメリカ海軍の艦船に着艦したのはこれが史上初めてであった。


[[2006年]]1月、RQ-8A ファイアスカウトは航行する[[クリーブランド級ドック型輸送揚陸艦]]「[[ナッシュビル (ドック型輸送揚陸艦)|ナッシュビル]]」に着艦することに成功した。無人ヘリがパイロットの制御無しで移動中のアメリカ海軍の艦船に着艦するのはこれが史上初めてであった。
=== MQ-8B ===
ファイアスカウトの開発計画は問題なく進行していたが、海軍はファイアスカウトの性能に満足せず[[2001年]]に計画への資金提供を停止してしまった。しかし、ファイアスカウトの開発はその後も続けられ、ノースロップ・グラマンはさまざまな方面に売り込みを始めることった。その結果[[アメリカ陸軍]]がこの計画に興味を持ち、2003年に7機のRQ-8Bを評価目的で購入した。の機体は2006年名称を変えてMQ-8Bとなった。


=== MQ-8B ===
MQ-8Bは4枚ブレードのメインローターを採用しており、RQ-8Aの3枚ブレードよりも騒音が抑えられ、同時に上昇性能も向上している。このメインローターの改良で最大離陸重量はRQ-8A から500ポンド(225kg)増加して3150ポンド(1,430kg)に増加している。ちなみにこの4枚ブレードは試作機ですでに評価が行われていたものであった。
ファイアスカウトの開発計画は問題なく進行していたが、海軍はファイアスカウトの性能に満足せず[[2001年]]に計画への資金提供を停止してしまった。だが、ファイアスカウトの開発はその後もれ、ノースロップ・グラマンはさまざまな方面に売り込みを始めること。その結果[[フューチャー・コンバット・システム|FCS]]で使用する無人機を探していた[[アメリカ陸軍]]が興味を持ち、2003年に7機のRQ-8B(2006年に名称をMQ-8Bに変更)を評価目的で購入するになった。


また、MQ-8Bは武装搭載能なスタブウィングを装備しており、[[ヘルファイア (ミサイル)|ヘルファイア]][[対戦車ミサイル]]、[[:en:GBU-44/B Viper Strike|ヴァイパーストライク]][[誘導爆弾]]、APKWS70mmレーザー誘導ロケット弾を搭載して対地攻撃を行うことができる。
MQ-8Bは4枚ブレードメインローターを採用しており、RQ-8Aの3枚ブレードよりも騒音抑えられ同時に上昇性も向上している。このメインローターの改良で最大離陸重量はRQ-8A から500ポンド(225kg)増加して3150ポンド(1,430kg)とっている。また、スタブウィングを装備しており、[[ヘルファイア (ミサイル)|ヘルファイア]][[対戦車ミサイル]]、[[:en:GBU-44/B Viper Strike|ヴァイパーストライク]][[誘導爆弾]]、APKWS70mmレーザー誘導ロケット弾を搭載して対地攻撃を行うことができる他、弾薬や医療品などの補給物資を前線に輸送するといった任務にも使用できる。


[[ファイル:MQ-8B Fire Scout.jpeg|250px|thumb|[[:en:RoyalInternational Air Tattoo|RIAT]]で展示されるMQ-8B ファイアスカウト]]
[[ファイル:MQ-8B Fire Scout.jpeg|250px|thumb|[[:en:RoyalInternational Air Tattoo|RIAT]]で展示されるMQ-8B ファイアスカウト]]
ファイアスカウトはセンサー類を交換することでさまざまな任務に対応できるように設計されており、昼夜(day/night)両用センサーおよびレーザー目標指示器、[[:en:Tactical Synthetic Aperture Radar|TSAR]]および移動目標インジケーター (MTI)、[[シギント|SIGINT]]モジュール、目標捕捉[[地雷]]検出システム(ASTAMIDS)、戦術指令データリンク(TCDL)などを搭載できる。
ファイアスカウトはセンサー類を交換することでさまざまな任務に対応できるように設計されており、昼夜(day/night)両用センサーおよびレーザー目標指示器、[[:en:Tactical Synthetic Aperture Radar|TSAR]]および移動目標インジケーター (MTI)、[[シギント|SIGINT]]モジュール、[[地雷]]検出システム(ASTAMIDS)、戦術指令データリンク(TCDL)などを搭載できる。


この陸軍の計画が順調に推移したのを見たアメリカ海軍は、皮肉なことにかつて放棄したファイアスカウトに再び興味を示し、MQ-8Bの派生型である「シースカウト」を8機評価目的で購入した。海軍は将来的にシースカウトを[[沿海域戦闘艦|沿海域戦闘艦(LCS)]]に搭載して運用する予定である。
この陸軍の計画が順調に推移したのを見たアメリカ海軍は、皮肉なことにかつて放棄したファイアスカウトに再び興味を示し、MQ-8Bの派生型である「シースカウト」を8機評価目的で購入した。海軍は将来的にシースカウトを[[沿海域戦闘艦|沿海域戦闘艦(LCS)]]に搭載して運用する予定である。

2009年9月17日 (木) 08:06時点における版

MQ-8 ファイアスカウト

MQ-8 ファイアスカウト

MQ-8 ファイアスカウト

ナッシュビルに着艦を行うRQ-8A

ノースロップ・グラマン MQ-8 ファイアスカウト(Fire Scout,英語で火力偵察兵の意)は、ノースロップ・グラマン社がアメリカ海軍向けに開発した偵察、戦場認識、ターゲティングの支援を任務とする無人ロボットヘリコプターである。初期型のRQ-8Aはシュワイザー330、改良型のMQ-8Bはシュワイザー333を原型として開発された。

機体の性能

RQ-8A

アメリカ海軍はRQ-2 パイオニアの退役後、その後継となる第2世代の無人航空機を探し始めた。海軍がパイオニアの後継機に求めたスペックは垂直離着陸機であり、90kgのペイロード、200kmの航続距離、高度6kmで3時間の滞空、風速46km/h (29mph)の条件下で艦艇に着艦する能力および整備間隔が190飛行時間であることだった。

このコンペディションにはベル・ヘリコプター社、シコルスキー社そしてテレダイン・ライアン社(ライアン・エアロノーティカル社)とシュワイザー・エアクラフト社協力の3案が参加しておこなわれ、2000年夏にライアン・エアロノーティカル社の案が選定された。

選定後にRQ-8A ファイアスカウトと命名されたこの機体はシュワイザー社製の有人ヘリコプターを元に、艦船で安全に保管できるJP-5とJP-8を燃料とするロールスロイス・アリソン250-C20タービンエンジンを搭載して無人化したもので、試作機は2000年1月に自立飛行を成功させていた。

ファイアスカウトには機首下部に電子光学および赤外線(EO/IR)カメラとレーザー距離測定装置を搭載したセンサーボールターレットが積まれており、これは海軍の艦艇やアメリカ海兵隊ハンヴィーに搭載された操縦システムから280km離れた見通し線外においてもRQ-4 グローバルホークとのデータリンクを通じて制御することが可能であった。

2006年1月、RQ-8A ファイアスカウトは航行するクリーブランド級ドック型輸送揚陸艦ナッシュビル」に着艦することに成功した。無人ヘリがパイロットの制御無しで移動中のアメリカ海軍の艦船に着艦するのはこれが史上初めてであった。

MQ-8B

ファイアスカウトの開発計画は問題なく進行していたが、海軍はファイアスカウトの性能に満足せず2001年に計画への資金提供を停止してしまった。だが、ファイアスカウトの開発はその後も継続され、ノースロップ・グラマンはさまざまな方面に売り込みを始めることとなる。その結果FCSで使用する無人機を探していたアメリカ陸軍が興味を持ち、2003年に7機のRQ-8B(2006年に名称をMQ-8Bに変更)を評価目的で購入することになった。

MQ-8Bは4枚ブレードのメインローターを採用しており、RQ-8Aの3枚ブレードよりも騒音が抑えられ同時に上昇性能も向上している。このメインローターの改良で最大離陸重量はRQ-8A から500ポンド(225kg)増加して3150ポンド(1,430kg)となっている。また、スタブウィングを装備しており、ヘルファイア対戦車ミサイルヴァイパーストライク誘導爆弾、APKWS70mmレーザー誘導ロケット弾を搭載して対地攻撃を行うことができる他、弾薬や医療品などの補給物資を前線に輸送するといった任務にも使用できる。

RIATで展示されるMQ-8B ファイアスカウト

ファイアスカウトはセンサー類を交換することでさまざまな任務に対応できるように設計されており、昼夜(day/night)両用センサーおよびレーザー目標指示器、TSARおよび移動目標インジケーター (MTI)、SIGINTモジュール、地雷検出システム(ASTAMIDS)、戦術指令データリンク(TCDL)などを搭載できる。

この陸軍の計画が順調に推移したのを見たアメリカ海軍は、皮肉なことにかつて放棄したファイアスカウトに再び興味を示し、MQ-8Bの派生型である「シースカウト」を8機評価目的で購入した。海軍は将来的にシースカウトを沿海域戦闘艦(LCS)に搭載して運用する予定である。

派生型

RQ-8A
RQ-8B
MQ-8B

運用者

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

スペック

離陸するRQ-8A
  • 乗員: 無し
  • 全長: 22.87 ft(7m)
  • メインローター直径: 27ft 6in(8.4m)
  • 全高: 9.42ft(2.9m)
  • 総重量: 3,150lb(1,430kg)
  • 巡航速度: 125+mph(201+km/h)
  • 滞空時間: 8時間
  • 実用上昇限度: 20,000ft(6,100m)

関連項目