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「Long Term Evolution」の版間の差分

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米国携帯電話事業首位の[[ベライゾン・ワイヤレス]]が親会社である英ボーダフォンと共に2008年後半からLTE用基地局設備の試験運用を開始している。日本のKDDIならびに沖縄セルラー電話、[[大韓民国|韓国]]の[[SKテレコム]]、[[中華人民共和国|中国]]の[[中国電信]]同様のcdma2000陣営(中国電信の[[CDMA2000]]は、もとは、[[UMTS]]に移行した[[中国聯合通信]]から譲受したもの)からの参加となっており、既に[[700MHz帯]]の使用権を取得している。当時、[[AT&Tモビリティ]]は今後の数年間、LTEとHSPA Evolutionのいずれで行くか決めかねていた<ref name = "ケータイが迎える種の爆発"/>。
米国携帯電話事業首位の[[ベライゾン・ワイヤレス]]が親会社である英ボーダフォンと共に2008年後半からLTE用基地局設備の試験運用を開始している。日本のKDDIならびに沖縄セルラー電話、[[大韓民国|韓国]]の[[SKテレコム]]、[[中華人民共和国|中国]]の[[中国電信]]同様のcdma2000陣営(中国電信の[[CDMA2000]]は、もとは、[[UMTS]]に移行した[[中国聯合通信]]から譲受したもの)からの参加となっており、既に[[700MHz帯]]の使用権を取得している。当時、[[AT&Tモビリティ]]は今後の数年間、LTEとHSPA Evolutionのいずれで行くか決めかねていた<ref name = "ケータイが迎える種の爆発"/>。


[[スプリント・ネクステル]]は、3.9Gとしては[[モバイルWiMAX]]も手がけているが、本業の携帯電話の通信方式については明言していない。[[T-Mobile USA]]も特段の方針については名言していない。
[[スプリント・ネクステル]]は、3.9Gとしては[[モバイルWiMAX]]も手がけているが、本業の携帯電話の通信方式については将来的なサービスを検討しつつも時期については明言していない。[[T-Mobile USA]]も特段の方針については名言していない。


2010年9月21日、[[:en:MetroPCS|MetroPCS]]は商用LTEサービスをラスベガスで開始した。[[700MHz帯]]ではなくAWS帯を使用する。
2010年9月21日、[[:en:MetroPCS|MetroPCS]]は商用LTEサービスをラスベガスで開始した。[[700MHz帯]]ではなくAWS帯を使用する。

2012年1月18日 (水) 05:10時点における版

Long Term Evolution(LTE、ロング・ターム・エボリューション)は新たな携帯電話の通信規格である。2010年頃から世界中でのサービス開始が見込まれており、仕様は標準化団体である3GPPにて3GPP Release.8内で2009年3月に凍結された[1]。現在普及しているW-CDMAやCDMA2000といった第3世代携帯電話(3G)と将来登場する第4世代携帯電話(4G)との間の技術であるため、第3.9世代携帯電話(3.9G)とも呼ばれる。しかし、2010年12月6日に国際電気通信連合はLTEを4Gと呼称することを認可したためマーケットでは呼称にばらつきが見られる[2]

3GPP上ではE-UTRA (Evolved Universal Terrestrial Radio Access)/E-UTRAN (Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)とも表記されている。

この規格は当初NTTドコモSuper 3Gという名称でコンセプトを含めた提唱をしていた。このため同社では長らく「Super 3G」と呼んでいたが、近年は「LTE」と呼んでいる。

概要

下りはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access 直交周波数分割多元接続)、上りはSC-FDMA (Single Carrier Frequency Division Multiple Access シングルキャリア周波数分割多元接続)を採用し、ピークデータレートが下り方向100Mbps以上、上り方向50Mbps以上(いずれも20MHz幅において)の通信速度を要求条件として仕様策定が進められている。

パケット通信のみをサポートし、音声の通信はVoIPでサポートされる。

3Gと同じ周波数帯域を使用し、帯域幅は1.4, 3, 5, 10, 15, 20MHzを選択して使用できる。

伝送遅延、待ち受けからの通信状態への遅延(接続遅延)を以前の通信規格に比較して低減するような技術が盛り込まれている。

「Long Term Evolution」の名称通り、3Gを「長期的進化・発展」させることで、スムーズに4Gに移行出来るようにする、いわば橋渡し(中継ぎ)的な役割を期待されている。

経緯と市場

3Gは、W-CDMACDMA2000というCDMA方式が先行し、特許使用料も高かったために世界市場への普及が遅れた。こういった反省から、世界中で使える高速通信可能で低遅延な携帯電話を低価格の特許で実現すべく、3GPPでLTEの標準化が携帯電話通信事業者と機器メーカーの主導で進められている。3Gでの周波数帯内で将来4Gで採用される予定の先進の通信技術を取り込み、現在使われているW-CDMACDMA2000HSPAEV-DOといった通信規格との後方互換性には配慮していない。

携帯機器用の高速無線通信サービスとしては、2009年に日本や米国で商用サービスが開始されたモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)がある。WiMAXはLTEと非常に似た要素技術に基づくために、2010年でのLTEのサービス立ち上がり予定時期には、無線基地局の共通化や関連部品の量産効果といった恩恵が受けられるのではないかと期待されている[3]

使用技術

周波数帯域幅
1.4, 3, 5, 10, 15, 20MHzから選択(最大20MHz)
データ変調方式
QPSK、16QAM、64QAMのいずれか(上り方向では64QAMはオプション)
多重化方式
FDDの場合、OFDMA(下り)/SC-FDMA(上り)
上りでは単一搬送波を使うSC-FDMAの採用により、電力消費量の削減を考慮した。
全二重化モード
FDDまたはTDD
経路多重化
(基地局アンテナ×端末アンテナ)1×2, 2×2, 4×2, 4×4 MIMO

周波数帯

3GPPの仕様書(TS 36.101)にて規定されているE-UTRA(LTE)の周波数は以下の通り。基本的にW-CDMA(UMTS)の帯域は利用可能となっている。

バンド 上り
(MHz)
下り
(MHz)
間隔
(MHz)
帯域幅
(MHz)
FDD/TDD 地域・オペレータ
1 2100 1920~1980 2110~2170 190 60×2 FDD NTTドコモ
ソフトバンクモバイル(予定)
2 1900 1850~1910 1930~1990 80 60×2 FDD
3 1800 1710~1785 1805~1880 95 75×2 FDD CSL(香港)
4 1700/2100
(1721)
1710~1755 2110~2155 400 45×2 FDD AT&Tモビリティ
MetroPCS(アメリカ)
5 850 824~849 869~894 45 25×2 FDD
6 800 830~840 875~885 45 10×2 FDD
7 2600 2500~2570 2620~2690 120 70×2 FDD TeliaSonera(北欧)CSL(香港)
8 900 880~915 925~960 45 35×2 FDD
9 1700 1749.9~1784.9 1844.9~1879.9 95 35×2 FDD イー・モバイル(予定)
10 1700/2100
(1721)
1710~1770 2110~2170 400 60×2 FDD
11 1500 1427.9~1447.9 1475.9~1495.9 48 20×2 FDD KDDI/沖縄セルラー電話(予定)
12 700 699~716 729~746 30 17×2 FDD ベライゾン・ワイヤレス(米・Cブロック部分。A/Bブロックは獲得していない)
13 700 777~787 746~756 -31 10×2 FDD AT&Tモビリティ(米・予定)
14 700 788~798 758~768 -30 10×2 FDD AT&Tモビリティ(米・予定)
15 Reserved
16 Reserved
17 700 704~716 734~746 30 12×2 FDD AT&Tモビリティ
18 800 815~830 860~875 45 15×2 FDD KDDI/沖縄セルラー電話(予定)
19 800 830~845 875~890 45 15×2 FDD
20 800 832~862 791~821 -41 30×2 FDD 欧州
21 1500 1447.9~1462.9 1495.9~1510.9 48 15×2 FDD NTTドコモ(予定)
22 3410~3490 3510~3590 100 80×2 FDD
23 2000~2020 2180~2200 180 20×2 FDD
24 1626.5~1660.5 1525~1559 -101.5 34×2 FDD
25 1900 1850~1915 1930~1995 80 65×2 FDD
...
33 1900~1920 1900~1920 20 TDD
34 2010~2025 2010~2025 15 TDD
35 1850~1910 1850~1910 60 TDD
36 1930~1990 1930~1990 60 TDD
37 1910~1930 1910~1930 20 TDD
38 2570~2620 2570~2620 50 TDD
39 1880~1920 1880~1920 40 TDD
40 2300~2400 2300~2400 100 TDD
41 2496~2690 2496~2690 194 TDD
42 3400~3600 3400~3600 200 TDD
43 3600~3800 3600~3800 200 TDD

各国・地域の状況

日本

オペレータ毎の利用バンド
オペレータ バンド
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 17 18 19 20 21
NTTドコモ
KDDI/沖縄セルラー電話
ソフトバンクモバイル
イー・アクセス
NTTドコモ
2006年7月から8月にかけて装置開発に向けたメーカーを募集し[4]、2007年7月より実証実験を開始している[5]。2008年2月~3月には、神奈川県横須賀市での屋外実証実験にて250Mbpsのパケット信号伝送に成功[6]。ユビキタス特区制度を利用し、富士通と共同で北海道札幌市市街地で1.5GHz帯の電波を利用したフィールド実証実験を行い[7][8]、4×4 Pre-coding MIMOを適用し、帯域幅10MHzにおいて下り最大120Mbpsの伝送を実現した[9]
ほかにも、低消費電力のMIMO信号分離用LSIを試作するなど、ハード面での研究開発も行っている[10][11]
2010年6月8日、LTE商用ネットワークの試験運用を開始。[12]
2010年7月29日、ドコモのLTEサービス名をXi(クロッシィ)と発表。
2010年12月24日に、上り又は下りの片側の5MHzの帯域を使用した商用サービスを開始した。この時点ではFOMAハイスピードとのデュアル式のデータ端末(L-02C)のみで、2GHz帯(バンド1)を用いる。2011年度中にFOMAとのデュアルモード端末で音声通話サービスを提供し、1.5GHz帯(バンド21)を利用したサービスは、2014年のMCAバンドの免許失効(このために、獲得した周波数帯のうち、7.5MHz幅が東名阪では使えないため)と前後して全国展開する方向。
NTTドコモでは、過去のPDCや、FOMA初期におけるW-CDMA標準仕様の非準拠という反省を踏まえ、世界市場と協調して規格の制定・導入を行うと表明しており、商用サービスの開始についても、W-CDMAの時のように世界初ではなく、他国のオペレーターの開始と合わせたものになった。
KDDI沖縄セルラー電話連合(各auブランド
2008年11月7日、第3.9世代の通信方式にLTEを導入することを明らかにし[13]、2008年12月3日に正式にリリースを行った[14]。ちなみに同社は当初、同社が推進する『Ultra 3G』の構想の一環として第3.9世代の通信方式にUMBを導入する予定だった。
LTEは2012年12月[15][16]に商用サービスを開始予定で(2010年現在、新800MHz帯(バンド18)および1.5GHz帯(バンド11)の電波を検討中)、2010年3月には那須塩原地区においてLTEに対応した5つの基地局を設置した。なお、2009年~2010年には「CDMA 1X WIN」の最上位サービスにあたるCDMA2000 1x EV-DO Rev.Bのサービスを検討していたが、LTEの導入を決定したため、Rev.Bの導入を解消した[17]。その代わりにCDMA2000 1x EV-DO Multicarrier Rev.A新800MHz帯および2GHz帯の電波を利用する)をWIN HIGH SPEEDとして2010年10月に開始した[18][19]
2012年4月頃にはLTEの導入前の対策としてCDMA2000 1x EV-DO Advancedが導入される見込み[20]
また、KDDIグループとして、第3.9世代のモバイルWiMAXUQコミュニケーションズで提供し、第3.5世代移動通信システムとのハイブリッド端末も、auでは+WiMAXブランドで提供している[21]。auのスマートフォンでも+WiMAX対応端末を提供している[22]
ソフトバンクモバイル
2008年1月から2月にかけて日本エリクソンと共同で屋内実験を行った[23]。2009年初めより華為技術の実験装置を用い、茨城県水戸市で実験を行うと発表した[24]。また、ユビキタス特区制度を利用し、2009年度中に福岡県北九州市八幡東区でも実証実験を行う予定(1.5GHz帯の電波を利用する)[7]
2011年の段階ではDC-HSDPAのサービスを開始して、LTEは2013年頃に商用化する予定である[3][25]
イー・アクセスイー・モバイルブランド)
2008年10月6日に東京都港区での屋外実証実験に向け実験試験局免許を申請した(1.5GHz帯の電波を利用する)[26]。2011年11月より既存の獲得帯域(1.7GHz帯)で試験電波実験を開始し、本サービスは2012年3月の導入を目指している。

今後の方向性

SIMロックとの関係

現在、日本では3Gとして、NTTドコモソフトバンクモバイルイー・モバイルW-CDMA、KDDI/沖縄セルラー電話(各auブランド)がCDMA2000(→CDMA2000 1x)を採用しており、端末にはすべてSIMロックがかけられている。仮に、すべての端末をSIMロックフリー化したとしても、au端末は他のキャリアでは使えないことになり、SIMロックフリーの意味合いは薄れる。

次世代の携帯電話規格がLTEで統一されるとなると、SIMロックフリー化も進めやすくなると考えられ、携帯電話端末と事業者間の縛りも無くすことが可能となる。ただし、各キャリア独自のサービスは他社端末で利用できる可能性は低く、SIMロックフリー化の恩恵はiモードEZwebを利用しない(ただし、spモードメールやIS NETによるメールを利用するアプリを利用しない場合)スマートフォン利用者、海外出張の多いビジネスマンなどに限られる可能性が高い。また、各オペレータが採用する周波数帯の違いはもちろんのこと、音声通話についても、VoIPを利用したLTEのサービスではなく、ドコモが2011年冬モデルから当面の導入を予定している従来のUMTS、ないしはKDDIのケースであればCDMA方式の音声とのデュアルでの提供の継続可能性もあり、この点においても障害になる可能性もあるとしている。

当然ながら、各オペレータの獲得周波数帯や3GPPが策定したバンドの違いなどによっても、利用可否が分かれてくる。

周波数割り当て
1.5/1.7GHz帯

当初は周波数の帯域の狭さから最大3社に免許が与えられ、落選する事業者がでる見込みだったが、2009年1月に総務省は1.5/1.7GHz帯を使うことで最大4事業者に割り当てる方針を示した[27]。このうち、1.5GHz帯は、10MHz幅2ブロックと2014年まで東名阪地区に限り利用できない7.5MHz幅(同帯域は、デジタルMCAが東名阪バンドとして利用しているため。2014年3月末を以てデジタルMCAの免許が失効予定であり、それ以降順次利用可能となる)の帯域を含んだ15MHz幅の1ブロック、1.7GHz帯の10MHz幅1ブロックの4つで申請を受け付けることになった。

2009年5月7日に免許申請が締め切られ、4社が申請し、KDDI/沖縄セルラー電話が1.5GHz帯(希望帯域幅は非公表)でLTE向け、ソフトバンクモバイルが1.5GHz帯で10MHz帯域幅を利用しHSPA+・DC-HSDPA・LTE向け、イー・モバイルが1.7GHz帯・帯域幅が10MHzでHSPA+・DC-HSDPA・LTE向け、NTTドコモが周波数帯・帯域幅とも非公表だがLTE向けとして申請を出した事が明らかになった。

2009年6月10日に免許の交付予定が明らかになり、KDDI/沖縄セルラー連合とソフトバンクモバイルが、何れも1.5GHz帯(バンド11)10MHz幅、NTTドコモが1.5GHz帯(バンド21)15MHz幅、イー・モバイルが1.7GHz帯(バンド9)10MHz幅をそれぞれ割り当てられた。

なお、NTTドコモは1.5GHz帯(バンド21)とFOMAサービスエリア用に使われている2GHz帯(バンド1)のオーバーレイによりLTEを展開する予定で(当初は、2GHz帯のみの利用で、データ端末のみ。FOMA網を利用した音声とのデュアル端末は2011年度冬春モデルから全国展開。1.5GHz帯でのLTEサービスは、2014年3月までに行われるデジタルMCAの失効と前後して順次展開予定)、かつてのFOMA展開初期のエリアの狭さでの不評を買った事への反省から、サービス開始当初はLTEとFOMAのデュアルモード端末での展開を予定している(即ち、LTEのエリア外でも、FOMAサービスエリアないしはFOMAプラスエリアでの利用が可能となる。場合によっては、東名阪バンドの1.7GHz帯エリアの利用も想定される)。なお、音声サービスは当面LTE網では提供せず、FOMAネットワークを利用する形を取るとしている。また、海外事業者ローミング受け入れの関係で、割当の2GHz帯をすべてLTEへ転用することはしないとしている。今後周波数帯の割当があった場合は、LTE向けに丸々利用する方針を検討している。

KDDI/沖縄セルラーは新800MHz帯(バンド18)/1.5GHz帯(バンド11)のオーバーレイ(新800MHzをメインバンドとして、10MHz幅利用し、サブバンドとして1.5GHz帯10MHz幅全部を用いる方針で、新800MHz帯の残り5MHz幅分は、WINで継続利用の方針)により、LTEを展開予定(WINで利用されている2GHz帯の、3.9G方式採用後の活用方法については未定だが、音声は当面CDMA2000 1xで提供する方針であることから、当面は音声通話向けに丸々残すものと見られる)。KDDI/沖縄セルラー電話についても、音声は当面は既存のCDMA2000網で対応するとしている。KDDIも、今後周波数帯の割当があった場合は、LTE向けに丸々利用する方針を検討している。

ソフトバンクモバイルは、LTEは既存のSoftBank 3Gで利用している2GHz帯(バンド1)を転用し、1.5GHz帯(バンド11)はHSPA+DC-HSDPAで利用する。ドコモのように、LTEで利用予定の2GHz帯の一部帯域をW-CDMA用に残すか、全部LTEへ転用するかについては明らかにしていない。後述のように、新規に割当方針が検討される、他社のような800MHz帯を持っていないことを理由として900MHz帯(バンド8)の獲得に固執しており、獲得した場合は、あくまでLTE向けに利用するとは言うものの、当初はHSPA+として運用を行ってからという方針であり、すでに3GPPで策定されているBand8に相当する帯域であることから、一部3G端末でも、現状ではローミング向けではあるものの、Band8の利用が可能な端末を発売している。

イー・モバイル(現・イー・アクセス)は、すでに利用している1.7GHz帯(バンド9)と新規獲得予定の帯域とを連続する形で、2010年10月をめどに開始される予定のDC-HSDPAで5MHz幅分(従来の割り当て幅に隣接する、当社とBBモバイルのいずれかに追加割り当てを予定していた幅分)を新たに利用開始し、残る5MHz幅分(当初、BBモバイルに割り当てされていた帯域)を、2012年3月をめどにLTEによる利用でそれぞれ計画している(この場合、下り37.5Mbpsまでしかスピードが出ないため、DC-HSDPAの運用を行っていない基地局については使っていない5MHz幅分をLTE用にした上で、下り75Mbpsとして運用するとしている)。これに伴い、2011年11月より商用サービスの試験運用を開始した。今後、周波数帯の新規割当があった場合は、LTEバンドとして利用する方針。

なお、本帯域は逼迫対策バンド(イー・アクセスを除く)の意味合いが強く、本来のLTE向け帯域としては既存の帯域ないしは、後述の700/900MHz帯がメインとされている(上述のように、KDDI/沖縄セルラー電話も、LTE向け帯域としては、新800MHz帯(バンド18)をメインバンド、1.5GHz帯(バンド11)をサブバンドに位置づけているとしている)。

700/900MHz帯

その後、800MHz帯再編と前後して空きとなる予定の700MHz帯/900MHz帯(いわゆる、プラチナバンドと称される)が、移動体通信向け新バンドに割り当てる可能性を総務省が示唆しており、仮に割当が実現されることになった場合は、900MHz帯ドコモKDDIソフトバンクモバイルイー・アクセスの4社が、700MHz帯ドコモKDDIイー・アクセスの3社が獲得の意向を表明している。700MHz帯は、CDMA2000を提供する米・ベライゾン・ワイヤレスや、UMTSを提供する米・AT&TがLTEで利用予定の帯域に近い周波数帯(北米ハーモナイズ案の場合)である。900MHz帯はUMTS900(バンド8)に近い周波数帯で、国際調達力、相互ローミングなどの向上が期待できる。ただし日本の700MHz帯がアジア太平洋地域にハーモナイズしたAWF案になった場合は北米市場とハーモナイズできないのが大きな課題となっている。

また、中国はTDDのTD-LTEを推進しており、700MHzにおいてFDDのLTEを推進している日本とはハーモナイズできない見込み。

この、700MHz帯/900MHz帯割当方針(総務省では、前者は2015年頃、後者は2012年頃に割当を検討しているとされる)次第では、実際の利用帯域に変更などが生じる可能性もある。

900MHz帯の割り当て可能な周波数範囲は900~915MHzおよび945~960MHzの計30MHzで、ここに3GPPバンド8相当の15MHz幅×2を1ブロック分割り当てる案が有力とされている。700MHz帯は割り当て可能な周波数範囲が全体で710MHz~806MHzの96MHzであるが配置は未定。700MHz帯配置案には北米にハーモナイズした案やアジア太平洋地域にハーモナイズしたAWF案などがある。国際調達力はLTE市場の大きい北米案(2015年における世界のLTE市場はその50%以上が北米)が優位、AWF案は割り当て帯域幅で優位と思われていたが、AWF案は送信周波数703MHz~748MHz、受信周波数758MHz~803MHzのバンドギャップ55MHzとなっている為に日本の710MHzからの割り当てでは45MHz×2を全て割り当てることは不可能でTV放送とのガードバンドを15MHz、800MHz帯上りとのガードバンドを15MHz必要な上にバンドギャップ55MHzで配置しようとすると、700MHz全体で96MHz空いていた帯域が20MHz×2しか割り当てできず、当初周波数利用効率が良いと思われていたAWF案の思惑から大きく外れている。このため、諸外国とのハーモナイズを重視した場合は割当が2社になってしまう可能性があること、3社に割り当てる形にする場合は3GPPによる新たなバンド策定を要する形となるが、後者の場合は、当然日本ローカルな周波数帯となる恐れが出てくる。対して、前者の場合は、900MHz帯に割り当てられる事業者を含め、落選事業者が1社出る恐れがあるとしている。

700MHz帯/900MHz帯割当方針については、総務省が上記の年度をめどに割当を検討しており、2011年8月に同省が募集した意見書が9月に公開されたものによると、ソフトバンクバンクモバイルは900MHz帯に固執しており、獲得できなかった場合には訴訟も辞さない意向を示しているが、他の事業者については、イー・アクセスが900MHz帯15MHz幅ないしは700MHz帯の10MHz幅ないし15MHz幅、KDDI/沖縄セルラー電話は900MHz/700MHz帯のいずれかを15MHz幅、ドコモは900MHz/700MHz帯で、帯域幅は明らかにしていない。なお、利用通信方式は、いずれの事業者もLTE向け(ソフトバンクモバイルのみ、当初はHSPA+向けに運用してからの転換を検討)としている。これに対し、イー・アクセスは、900MHz帯を獲得できた場合は、世界初の900MHz帯(バンド8)によるLTEサービスを開始し、データ通信網で同社のMVNOとなっているソフトバンクモバイルを含め、同社の回線を利用した新規MVNO事業者を募る方針を目指している。900MHz帯については、他社は(KDDI/沖縄セルラー連合の場合は、UQコミュニケーションズの分を含めた帯域、ソフトバンクモバイルの場合は、ウィルコムおよびWireless City Planning保有分を含めた帯域がいずれもドコモ並みに多いとした上で)100MHz幅クラスの帯域を保有しており(ドコモは東名阪バンドを含め140MHz幅)、なおかつ、ゴールデンバンド/プラチナバンドもIMT-コアバンドも自社で保有していないことから、700MHz帯よりも先に割り当てられることもあり、優先的に割当がほしいという意図もあるようである。

米国

米国携帯電話事業首位のベライゾン・ワイヤレスが親会社である英ボーダフォンと共に2008年後半からLTE用基地局設備の試験運用を開始している。日本のKDDIならびに沖縄セルラー電話、韓国SKテレコム中国中国電信同様のcdma2000陣営(中国電信のCDMA2000は、もとは、UMTSに移行した中国聯合通信から譲受したもの)からの参加となっており、既に700MHz帯の使用権を取得している。当時、AT&Tモビリティは今後の数年間、LTEとHSPA Evolutionのいずれで行くか決めかねていた[3]

スプリント・ネクステルは、3.9GとしてはモバイルWiMAXも手がけているが、本業の携帯電話の通信方式については将来的なサービスを検討しつつも時期については明言していない。T-Mobile USAも特段の方針については名言していない。

2010年9月21日、MetroPCSは商用LTEサービスをラスベガスで開始した。700MHz帯ではなくAWS帯を使用する。

2010年12月1日、ベライゾン・ワイヤレスは商用LTEサービス(700MHz帯、Band 12)を開始し、2011年にはAT&Tモビリティが700MHz帯であるBand 17でサービスを開始し、今後Band 4(AWS帯)も利用する予定。

欧州

欧州はまさに3Gが普及し始めた段階にあり、LTEの導入よりも、今あるGSMと新たな3G、将来のHSPA Evolutionという流れに横からLTEという選択肢が加わったのを、今後、米日やアジアといった他地域でのLTEの普及を見ながら、検討していくところである[3]
2009年12月14日、TeliaSoneraはスウェーデンのストックホルムとノルウェーのオスロで商用LTEサービスを開始した。[28]

アジア

中国では、現在UMTSを採用している中国聯合通信CDMA2000を導入している中国電信が、いずれもLTEへの移行を検討している。一方で、中国移動通信は、現在の3G(TD-SCDMA)の次の世代の通信規格として、LTEのTDD版であるTD-LTEを導入する予定であると伝えられている。

香港では、CSLにてLTEサービスが開始されている。

韓国では、2011年7月1日より、SKテレコムとLG Uplusにて商用LTEサービスが開始された。SKテレコム、LG Uplus共に800MHz帯を利用する。

新興市場

インドやアフリカといった新興国市場は、従来の携帯電話事業者の進出が余り進んでおらず、存在するサービスもこなれた技術のGSMが主流となっている。大手携帯電話事業者は新興国市場より先に先進国市場での自社技術の普及を目指すため、こういった新興国市場は比較的規模の小さなベンチャー企業が、無線通信技術としてはLTEに先行するWiMAX技術を使うことで、新たな市場の開拓を目指すと今後の活動を表明している。ベンチャー企業が新興国市場に向かう理由の1つは、先進国市場では既に混み合った無線周波数帯の利用権取得に多額の投資が求められることがある。こういった新興国市場ではGSMと同等コストでのサービス提供が求められる[3]

新たな無線端末と今後の展開

LTEは高速通信だけでなく接続遅延が短く、携帯電話機だけでなくノートパソコンのような携帯情報端末からの利用も想定して開発されている。LTEの登場後は、モバイルWiMAXXGPといった通信規格と通信サービスでの競争がはじまり、日本では仮想移動体通信事業者(MVNO)という新たなサ-ビス型企業を生み出すことになる。電話網とインターネット接続の境界がますますなくなってゆく。

将来的に4Gの携帯電話通信が開始される時に、使用電波帯域が3.9G(LTE)と4G(IMT-Advancedなど)で異なっても、LTEが多くの点で共通した技術を使用していれば4Gへの移行が簡単に行なえると期待されている。LTEでは3Gに比べて、単に使用周波数の帯域を広げることで高速通信を実現するだけでなく、フェムトセルの活用やマルチユーザーMIMOといったさらに電波を有効活用して高速接続を実現する工夫が検討されている[3]

TD-LTE

TDD方式のLTEを特にTD-LTEと称することがある。

先述の通り中国の中国移動通信が早くから次世代規格として詳細検討・開発を行っている。

FDDのように上りリンクと下りリンクのために2つの周波数帯を用意する必要がなく、上りリンクと下りリンクを跨いでの無線資源の共有が比較的容易となる。同じくTDDを使用しているWiMAX、XGP、PHS、TD-SCDMAのリプレースにも向いている。

この方式は上りリンクと下りリンクの無線資源を分割するガード帯域の存在に起因する通信速度の低下を防ぐことが技術的に困難と考えられ、当初は世界でも中国移動通信以外で導入を視野に入れている大手キャリアは在しなかった。 しかし、中国移動通信はリモートラジオヘッドの性能向上やセルの小型化などの工夫で通信速度の低下を大幅に解消し、上海万博でもTD-LTEのデモを行い、100Mbpsを超えるスループットを実現した。この時点のTD-LTEのスペックですでに次世代モバイルWiMAXであるWiMAX2の要求仕様を上回っており、WiMAXの市場は最終的にWiMAX2でなく、TD-LTEに覆われるとの見方もある[29]。さらに、地域ごとに異なる周波数を設定せざるをえないような国土の広い国で必要とされる周波数境界上の制御には、TD-LTEのほうがFDD方式のLTEよりも適していることをフィールドテストなどで実証している。

2010年にはアメリカのClearWireがTD-LTEのフィールドテストを行うと発表し[30][31]、ロシアのYotaもTD-LTEによるサービスの開始を予定していると表明した[32]。さらに2011年にはフィンランドのノキアがTD-LTEのフィールドテストを行うと発表し[33]、インドの規制当局もTD-LTEの周波数割り当てを行うことを決め[34]、日本のWireless City Planningも、従来のeXtended Global Platform(XGP)方式の後継規格として、TD-LTEと互換性を持つとされるAXGP(Advanced eXtended Global Platform)方式を2011年11月より採用した(また、同社のMVNOとしてソフトバンクモバイルSoftBank 4Gとして、2012年2月より、自社回線のDC-HSDPAとのデュアルモード対応端末を提供)と発表し[35]、また、2011年9月、サウジアラビア最大手のモビリーと二番手のザインがTD-LTEによるサービスを開始した[36]

LTE-Advanced

現在3GPPではLTEの発展規格であるLTE-Advanced[37]の標準化を行っている。LTEの10倍程度の速度を予定している。ITUの定める第4世代移動通信システムの一つ。

2011年1月27日、NTTドコモは、LTE-Advancedの実験用予備免許を取得した[38]。今後、神奈川県横須賀市および相模原市にて実証実験を行う予定。商用サービスは、2015年ごろをめどに、当初は1.5GHz帯(band21)を利用してサービスインする方針。

脚注

  1. ^ LTE Freeze Completed 3GPP
  2. ^ [1]
  3. ^ a b c d e f 竹居智久、蓮田宏樹著 『ケータイが迎える種の爆発』 日経エレクトロニクス 2008年9月8日号
  4. ^ Super 3Gの装置開発に向けたメーカ募集を開始 NTTドコモ 2006年7月7日
  5. ^ Super 3Gの実証実験を開始 NTTドコモ 2007年7月13日
  6. ^ Super 3Gの屋外実証実験にて実用化に向けた250Mbpsのパケット信号伝送に成功 NTTドコモ 2008年3月26日
  7. ^ a b 「ユビキタス特区」の創設について 総務省 2008年1月25日
  8. ^ ユビキタス特区における実験試験局の免許 北海道総合通信局 2008年10月16日
  9. ^ 札幌市ユビキタス特区でのLTEフィールド実証実験を実施 富士通 2009年3月16日
  10. ^ MIMO信号分離の低消費電力化高性能LSI試作に成功 -Super 3Gシステムに向けた取り組み-
  11. ^ 100Mbpsの伝送速度を実現するMIMO用低消費電力化復調・復号LSIの試作に成功 NTTドコモ 2008年12月17日
  12. ^ LTE商用ネットワークの試験運用を開始 NTTドコモ 2010年6月8日
  13. ^ KDDI、次世代通信技術でLTE導入へ ケータイWatch 2008年11月7日
  14. ^ 3.9世代移動通信システムへのLTE採用について KDDI 2008年12月3日
  15. ^ KDDI黒澤氏、LTEに向けた取り組みを紹介 - ケータイ Watch
  16. ^ 【LTE会議】ドコモ,KDDI,イー・モバイルがLTEを語る,「7年かけて,ようやくここまできた」 - 日経BP Tech-On!(2010年9月3日)
  17. ^ 2009年3月期第3四半期決算 質疑応答 KDDI 2009年1月23日
  18. ^ 「KDDI、マルチキャリア化によりEV-DO Rev.Aを高速化――LTE導入までの競争力を確保」 - ITmedia2009年4月23日
  19. ^ CDMA2000陣営はLTEの前にRev.Aをマルチキャリア化,KDDIが表明《訂正あり》 - 日経BP Tech-On!(2009年4月23日)
  20. ^ ワイヤレスジャパン2011:LTEの前に「EV-DO Advanced」、KDDIが2012年4月以降に導入 - ITmedia プロモバ(2011年5月27日)
  21. ^ 例・データ端末では、DATA01(HID01)、DATA02(HID02)等
  22. ^ 例・HTC EVO WiMAX ISW11HT(HTI11)、HTC EVO 3D ISW12HT(HTI12)、MOTOROLA PHOTON ISW11M(MOI11)、DIGNO ISW11K(KYI11)、ARROWS Z ISW11F(FJI11)等
  23. ^ LTEシステムの屋内実験に成功 ソフトバンクモバイル 2008年2月14日
  24. ^ LTEの商用化に向けた実証実験用装置ベンダーを選定 ソフトバンクモバイル 2008年11月7日
  25. ^ 【WIRELESS JAPAN 2010】 ソフトバンク松本副社長、トラフィック対策の重要性を語る - ケータイWatch(2010年7月13日)
  26. ^ 次世代移動通信システム LTEの屋外実証実験に向け実験試験局免許を申請 イー・モバイル 2008年10月6日
  27. ^ 3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案等に対する意見募集 総務省 2009年1月23日
  28. ^ 4G | TeliaSonera
  29. ^ 中国発の3.9G「TD-LTE」の威力-次世代PHS、WiMAXの代替規格として急浮上 - business network.jp
  30. ^ Clearwire、LTE技術の実地テストを開始へ | ZDNet Japan
  31. ^ Clearwire Corp NewsRelease
  32. ^ ワイヤレスブロードバンド事業成長戦略への取り組み - 日本電気株式会社
  33. ^ 日本でも今年第2四半期にTD-LTEのテストを始める
  34. ^ インドで新たにLTE周波数割り当ての動き/TD-LTEサービスは年内にも開始か - WirelessWire News
  35. ^ ソフトバンクモバイルが“TD-LTE 100%互換”“国内最高速”の「Softbank 4G」を開始
  36. ^ 世界初のTD-LTE商用サービス、サウジアラビアで始ま
  37. ^ LTE-Advanced 3GPP
  38. ^ 第4世代移動通信方式LTE-Advancedの実験用予備免許を取得 NTTドコモ 2011年2月7日

関連項目

外部リンク