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'''X-32'''は[[ボーイング]]社が開発した試作[[戦闘機]]である。 |
'''X-32'''は、[[アメリカ合衆国]]の[[ボーイング]]社が開発した試作[[戦闘機]]である。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画に基づいて開発された[[ステルス性|ステルス]]試作実験機(概念実証機)であ |
'''[[統合打撃戦闘機計画|統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画]]'''に基づいて開発された[[ステルス性|ステルス]]試作実験機(概念実証機)である。[[航空機の離着陸方法#CTOL|通常離着陸型]]/[[CATOBAR|空母離着陸型]]のX-32Aと[[航空機の離着陸方法#STOVL|短距離離陸垂直着陸型]]のX-32Bの2機が試作され、前者は2000年9月に、後者は2001年3月にそれぞれ初飛行した。 |
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同じくJSF計画に基づいて開発された[[ロッキード・マーティン]]社の[[X-35 (航空機)|X-35]]と比較試験が行われたが、X-35がJSF(後の[[F-35 (戦闘機)|'''F-35''']])として採用されたため、計画不採用となった<ref>{{Cite book|和書|title=F-35はどれほど強いのか|date=2018-07-25|year=2018|publisher=SBクリエイティブ株式会社|page=36}}</ref>。 |
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[[ロッキード]]社製[[X-35 (航空機)|X-35]]との比較試験の結果、[[2001年]][[10月26日]]にエンジンや垂直離着陸方式の関係で大容量の[[爆弾槽|ウェポンベイ]]を設置しにくいなどを理由に不採用となった。 |
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== 開発経緯 == |
== 開発経緯 == |
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[[アメリカ空軍]]の[[F-16 (戦闘機)|F-16]]、[[アメリカ海軍]]・[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]の[[F/A-18 (航空機)|F/A-18A-D]]、アメリカ海兵隊と[[イギリス空軍]]・[[イギリス海軍|海軍]]の[[ハリアー II (航空機)|ハリアーII]]の後継機を1機種で統合する統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画が立案され、概念実証機の開発はボーイング社とロッキード社が担う事となった。開発に際し、2社には7億5,000万[[アメリカ合衆国ドル|ドル]]もの開発費が与えられた。 |
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{{main|統合打撃戦闘機計画}} |
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ボーイング社の概念実証機は'''X-32'''と名 |
ボーイング社の概念実証機は'''X-32'''と名付けられ、通常離着陸/空母離着陸機(CTOL/CATOBAR機)のX-32Aは[[2000年]][[9月18日]]に初飛行を成功させる。短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)のX-32Bは、[[2001年]][[3月13日]]に初飛行を行った。2機はデモンストレーターとして[[ロッキード]]社製の概念実証機[[X-35 (航空機)|X-35]]との比較試験に投入され、試験は[[2001年]]7月まで行われた。比較の結果、エンジンや垂直離着陸方式の関係で大容量の[[爆弾槽|ウェポンベイ]]を設置しにくいなどを理由に[[2001年]][[10月26日]]にX-35がJSFとして選定され、X-32は不採用に終わった。 |
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X-32の不採用の理由について詳細は不明であるが、主に垂直離着陸の方法がハリアーの様な、[[ジェットエンジン]]の高温[[排気]]をスラスト・ベクトル・ノズルで下方へ噴射する方式を採用していた為<ref>X-35(F-35)は空気を排出するリフトファン方式</ref>、という俗説が流布されているが虚偽である。X-32もX-35も前方のスラスト・ベクトルは燃焼してない低温空気のファン後流であり、後方のスラスト・ベクトルは高温の排気が含まれ、何ら変わらない。 |
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== 特徴 == |
== 特徴 == |
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; 基本構造 |
; 基本構造 |
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[[image:Boeing_X-32B_Patuxent.jpg|thumb|250px|[[メリーランド州]]パタセントリ |
[[image:Boeing_X-32B_Patuxent.jpg|thumb|250px|[[メリーランド州]][[パタクセント・リバー海軍航空基地]]付属航空博物館に展示されているX-32B]] |
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: 外見的な特徴として、 |
: 外見的な特徴として、無尾翼デルタ形式である点が挙げられる。これはステルス性向上を図ったための採用となった。実際ステルス性はX-35より良好であったと言われている。無尾翼デルタ形式は機首上げの際に[[エレボン]]を上げる形になるため低速での揚力を確保できず短距離離着陸性能に劣り、艦上機として採用する際に不利となる。このため、主翼前縁にエイペックス・フラップという強力な機首上げモーメントを発生させる装置が付加され、使用時にエレボンを下げる形にすることで機首上げモーメントを相殺しつつ揚力を増加させるようになっていた<ref name="world203">『週刊ワールド・エアクラフト』203号 [[デアゴスティーニ]]社</ref>。X-32Bではエイペックス・フラップが装備されず、翼幅も短くなっている<ref name="world204">『週刊ワールド・エアクラフト』204号 デアゴスティーニ社</ref>。 |
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: また、下部に巨大な空気取り入れ口があり、膨らんでいるのも特徴的である。巨大な空気取り入れ口が設けられたのは、X-32Bが[[垂直離着陸機|垂直離着陸]]を行う際に大量の空気を取り入れるためとされる。ただしX-32Bはホバリング試験時に超音速飛行に必要な空気取り入れ口の先端部を取り外していたため{{Efn2|これは計画よりも機体重量が重くなったことで軽量化を図ったためとされ、他にも降着装置の扉を取り外していた。}}、一度の飛行で超音速飛行と垂直着陸の両方を行うことができなかった<ref name="world204"/>。 |
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: 主翼には[[炭素繊維]][[複合材料|複合材]]が用いられている。 |
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: 主翼には[[炭素繊維]][[複合材料|複合材]]が用いられている。前脚には[[F-16 (戦闘機)|F-16]]のものが、キャノピーには[[ホーカー・シドレー ハリアー|AV-8]]のものが流用されている。X-35にはなかった胴体内ウェポンベイも備えており、[[空中給油]]受油装置は2機共に海軍式のプローブを採用した。 |
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: X-32は政府が定めた全ての要求を満たしていたが、設計が確定した段階でアメリカ海軍からの要求が変更されており、そのままの設計では対応できない問題が生じた。結果、量産型では水平尾翼を装備し、また空気取り入れ口も形状を変更して大迎え角時の空気流を改善するとされていた<ref name="world203"/>。ボーイング社は、X-32はあくまでも通常型、短距離離着陸型、艦載型の3タイプの共通性を実証する機体であるため量産型と形態が同じである必要はないとしていた<ref>『週刊ワールド・エアクラフト』74号 デアゴスティーニ社</ref>。 |
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: この他、前脚には[[F-16 (戦闘機)|F-16]]の物を、キャノピーには[[ホーカー・シドレー ハリアー|AV-8]]の物が流用されている。 |
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; エンジン |
; エンジン |
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: エンジンは[[プラット・アンド・ホイットニー|P&W]]の[[プラット・アンド・ホイットニー |
: エンジンは[[プラット・アンド・ホイットニー|P&W]]の[[プラット・アンド・ホイットニー F119|F119]][[ターボファンエンジン]]を搭載する。主排気口は二次元の推力偏向ノズルとなっており、着陸進入時のピッチ操縦に使用される<ref name="world203"/>。 |
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: 垂直離着陸能力を有するX-32Bのエンジンは、[[ホーカー・シドレー ハリアー|ハリアー]]や[[ハリアー II (航空機)|ハリアーII]]の様に、胴体中央で2つに別れたリフトノズルによってジェットエンジンの排気を直接下に向けることで垂直離着陸を行う直接排気方式となっている。このリフトノズルは引き込み式であり、使用時には主排気口が完全に閉じられ、全ての排気をリフトノズルへ送り込む仕組みになっている。 |
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: 直接排気方式の利点は、垂直離着陸能力のための装備を減らすことにより、複雑化・高コスト化・重量増加を抑制できる点である。またX-32の場合、3タイプの共通性が高まるという利点もあった<ref name="world204"/>。しかしX-32Bは胴体中央にリフトノズルを増設した構造のためウェポンベイの一部を潰さなければならなかった。また、排気が混ざって高温・酸素不足となった空気をジェットエンジンが吸い込み、出力低下を招く恐れもあった。この対策としてリフトノズルの前部に低温の空気を排出するジェットスクリーンが設置されたが、ただでさえ主排気口以外に8つもの排気ノズル{{Efn2|胴体前後にピッチ制御用のノズルが2つずつ、主翼左右にローリング制御用のノズルが1つずつ、リフトノズル2つ。}}を備える構造であったため結果としてX-35のリフトファンシステム以上に複雑化した。他にも、エンジンへの変更点の多さからコスト高になる点も指摘されていた<ref>『世界の名機シリーズ F-35ライトニングII』2011年9月30日発行 [[イカロス出版]]</ref>。 |
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== スペック == |
== スペック == |
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*全高:19.03ft(5.28m) |
*全高:19.03ft(5.28m) |
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*最大離陸重量:38,000lb(17,200kg) |
*最大離陸重量:38,000lb(17,200kg) |
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*エンジン:P&W [[プラット・アンド・ホイットニー |
*エンジン:P&W [[プラット・アンド・ホイットニー F119|F119]]ターボファンエンジン(推力:28100 lbf(125 kN)アフターバーナー時:43,000 lbf(191.35 kN)) |
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*最大速度:マッハ1.6(1,200mph、1,931km/h) |
*最大速度:マッハ1.6(1,200mph、1,931km/h) |
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*武装 |
*武装 |
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**[[M61 バルカン|M61A2]]×1 |
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**[[AIM-120 (ミサイル)|AIM-120 AMRAAM]]×4 |
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<!--特筆性? |
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== 登場作品 == |
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; 『[[エアフォースデルタ]]』 |
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; 『[[エースコンバット3 エレクトロスフィア]]』 |
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: 劇中に登場する多国籍企業「ゼネラルリソース」が有する私設軍隊「GRDF(General Resource Defence Force)」が使用する機体として「F/A-32C アーン」という名称で登場。[[コフィンシステム]]を搭載する他、双発化やインテーク形状の変更が行われている。劇中では敵機として登場する他、ルートによってはプレイヤーが操縦することも可能。 |
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=== アニメシリーズ === |
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; 『[[ナジカ電撃作戦]]』 |
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: 第8話「Mission 008 欲望の空は戦い渦巻く炎と共に』のエピソードにおいて、国際戦闘機見本市会場にて、最新鋭の[[ステルス戦闘機]]「オボロ」の名称にて登場。出展企業の葛城重工業の社長令嬢「葛城梓」 [かつらぎ・あずさ]を誘拐したヒューマリット「トォニ」の逃走手段として登場。主人公「柊七虹香」(ひいらぎ なじか)とその相方「リラ」が同見本市会場の「[[ブラックバーン バッカニア]]」にて追跡する。 |
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== 脚注 |
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* [[F-35 (戦闘機)|F-35]] |
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* [[プラット・アンド・ホイットニーF135]] |
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* [[ステルス性]] |
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[[Category:デルタ翼機]] |
2024年6月6日 (木) 14:06時点における最新版
X-32は、アメリカ合衆国のボーイング社が開発した試作戦闘機である。
概要
[編集]統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画に基づいて開発されたステルス試作実験機(概念実証機)である。通常離着陸型/空母離着陸型のX-32Aと短距離離陸垂直着陸型のX-32Bの2機が試作され、前者は2000年9月に、後者は2001年3月にそれぞれ初飛行した。
同じくJSF計画に基づいて開発されたロッキード・マーティン社のX-35と比較試験が行われたが、X-35がJSF(後のF-35)として採用されたため、計画不採用となった[1]。
開発経緯
[編集]アメリカ空軍のF-16、アメリカ海軍・海兵隊のF/A-18A-D、アメリカ海兵隊とイギリス空軍・海軍のハリアーIIの後継機を1機種で統合する統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画が立案され、概念実証機の開発はボーイング社とロッキード社が担う事となった。開発に際し、2社には7億5,000万ドルもの開発費が与えられた。
詳細は「統合打撃戦闘機計画」を参照
ボーイング社の概念実証機はX-32と名付けられ、通常離着陸/空母離着陸機(CTOL/CATOBAR機)のX-32Aは2000年9月18日に初飛行を成功させる。短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)のX-32Bは、2001年3月13日に初飛行を行った。2機はデモンストレーターとしてロッキード社製の概念実証機X-35との比較試験に投入され、試験は2001年7月まで行われた。比較の結果、エンジンや垂直離着陸方式の関係で大容量のウェポンベイを設置しにくいなどを理由に2001年10月26日にX-35がJSFとして選定され、X-32は不採用に終わった。
特徴
[編集]- 基本構造
- 外見的な特徴として、無尾翼デルタ形式である点が挙げられる。これはステルス性向上を図ったための採用となった。実際ステルス性はX-35より良好であったと言われている。無尾翼デルタ形式は機首上げの際にエレボンを上げる形になるため低速での揚力を確保できず短距離離着陸性能に劣り、艦上機として採用する際に不利となる。このため、主翼前縁にエイペックス・フラップという強力な機首上げモーメントを発生させる装置が付加され、使用時にエレボンを下げる形にすることで機首上げモーメントを相殺しつつ揚力を増加させるようになっていた[2]。X-32Bではエイペックス・フラップが装備されず、翼幅も短くなっている[3]。
- また、下部に巨大な空気取り入れ口があり、膨らんでいるのも特徴的である。巨大な空気取り入れ口が設けられたのは、X-32Bが垂直離着陸を行う際に大量の空気を取り入れるためとされる。ただしX-32Bはホバリング試験時に超音速飛行に必要な空気取り入れ口の先端部を取り外していたため[注 1]、一度の飛行で超音速飛行と垂直着陸の両方を行うことができなかった[3]。
- 主翼には炭素繊維複合材が用いられている。前脚にはF-16のものが、キャノピーにはAV-8のものが流用されている。X-35にはなかった胴体内ウェポンベイも備えており、空中給油受油装置は2機共に海軍式のプローブを採用した。
- X-32は政府が定めた全ての要求を満たしていたが、設計が確定した段階でアメリカ海軍からの要求が変更されており、そのままの設計では対応できない問題が生じた。結果、量産型では水平尾翼を装備し、また空気取り入れ口も形状を変更して大迎え角時の空気流を改善するとされていた[2]。ボーイング社は、X-32はあくまでも通常型、短距離離着陸型、艦載型の3タイプの共通性を実証する機体であるため量産型と形態が同じである必要はないとしていた[4]。
- 将来的な部品共通率は、3タイプで85%前後とされた。
- エンジン
- エンジンはP&WのF119ターボファンエンジンを搭載する。主排気口は二次元の推力偏向ノズルとなっており、着陸進入時のピッチ操縦に使用される[2]。
- 垂直離着陸能力を有するX-32Bのエンジンは、ハリアーやハリアーIIの様に、胴体中央で2つに別れたリフトノズルによってジェットエンジンの排気を直接下に向けることで垂直離着陸を行う直接排気方式となっている。このリフトノズルは引き込み式であり、使用時には主排気口が完全に閉じられ、全ての排気をリフトノズルへ送り込む仕組みになっている。
- 直接排気方式の利点は、垂直離着陸能力のための装備を減らすことにより、複雑化・高コスト化・重量増加を抑制できる点である。またX-32の場合、3タイプの共通性が高まるという利点もあった[3]。しかしX-32Bは胴体中央にリフトノズルを増設した構造のためウェポンベイの一部を潰さなければならなかった。また、排気が混ざって高温・酸素不足となった空気をジェットエンジンが吸い込み、出力低下を招く恐れもあった。この対策としてリフトノズルの前部に低温の空気を排出するジェットスクリーンが設置されたが、ただでさえ主排気口以外に8つもの排気ノズル[注 2]を備える構造であったため結果としてX-35のリフトファンシステム以上に複雑化した。他にも、エンジンへの変更点の多さからコスト高になる点も指摘されていた[5]。
スペック
[編集]- 乗員:1名
- 全長:50.77ft(15.47m)
- 翼長:36ft(10.97m)
- 全高:19.03ft(5.28m)
- 最大離陸重量:38,000lb(17,200kg)
- エンジン:P&W F119ターボファンエンジン(推力:28100 lbf(125 kN)アフターバーナー時:43,000 lbf(191.35 kN))
- 最大速度:マッハ1.6(1,200mph、1,931km/h)
- 武装
- M61A2×1
- AIM-120 AMRAAM×4