チベタン・マスティフ
原産地 | 中国チベット高原 | |||||||||||||||||||||||||||
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イヌ (Canis lupus familiaris) |
チベタン・マスティフ (英語:Tibetan Mastiff) は、チベット高原を原産地とする超大型犬。その名が示すように俗にチベット犬とも呼ばれる希少種である。中国語では「藏獒」(Zàng áo) あるいは「西藏獒犬」(Xīzàng áoquàn) となり、「東方神犬」の異名もある[1]。チベット語ではདོ་ཁྱི།(ドーキー)と呼ばれている。
特徴
[編集]体高66cm、体重64~82kg。主人への忠誠心が強く、外敵に対しては勇敢に戦う犬種である。そのため番犬、護衛犬、猟犬に優れている[2]。
本種の外見上、特に首周りの毛の特徴から「獅子型」と「虎型」にタイプが分けられる。なお「獅子型」はさらに毛の長い「大獅子頭型」と短い「小獅子頭型」に分けられる。毛の色からは、主に黒色、赤毛、金黒、灰、白、黄から構成されており、尾の毛は長く巻いているため、中国ではその部位をキクの花に例えられている。
本種の疾患としては、大型犬特有の股関節形成不全になりやすいことが挙げられている。
歴史
[編集]古くからチベット高原の牧畜民が牧羊犬や番犬として飼育し、世界の大型犬、特にモロシア犬(モロサス・タイプ)の原種の一つと見られている。
モンゴル帝国の初代皇帝であるチンギス・ハーンは3万匹のチベタン・マスティフ軍団を引き連れて西征したと言われる。またマルコ・ポーロの『世界の記述』(いわゆる『東方見聞録』)で「ロバのように高く、ライオンのように力強い声。凶暴で大胆」と記述されている生物は、チベタン・マスティフを指していると考えられている。中央アジアに遠征したアレクサンドロス大王によってギリシャに、さらにそこからローマに伝わり、ヨーロッパのマスティフの祖先となったとされる。
19世紀初めにチベットではほとんど絶滅したが、イギリスでは国王のジョージ4世が2頭所有し、ヴィクトリア女王にも献上されていた。
中国では国家第二類保護動物に指定されている。2006年には中国公安部が警察犬の輸入依存対策としてチベタン・マスティフの採用を発表した[3]。
現況
[編集]2010年頃から、中国での価格は1匹10万元(約130万円)から1000万元(約1億6000万円)もする高額な犬種となっており、主に富裕層の間で人気化し、2014年には史上最高額の1200万元(2億円)まで暴騰して世界一高価な犬と呼ばれた[4][5]。特に「大獅子頭型」という首の周りの毛が雄のライオンのように見えるもの(右画参照)が好まれる傾向がある。北京周辺にいくつもの飼育場があるとされていた。しかし、2013年頃から、価格の暴落、躾の失敗による事件の多発、そして富裕層の没落が相まって人気は失墜しており、2016年には数百元でも買い手がつかない状況になっている[6]。
2013年8月には、中国・河南省漯河市にある「人民公園」内の動物園で、チベタン・マスティフをライオンと偽って展示していた事件が発覚した[7]。
脚注
[編集]- ^ ““东方神犬”藏獒的神话何时能破”. 騰訊網 (2013-01-01) 2018年4月13日閲覧。
- ^ チベタン・マスティフ Yahoo!ペット 2012年9月23日閲覧
- ^ “公安部对外宣布藏獒将成为警方备用犬种(组图)”. 中国網 (2006-01-04) 2018年3月15日閲覧。
- ^ “世界一高価な犬。約2億円で取引されたチベタン・マスティフ”. カラパイア (2014-04-01) 2018年3月15日閲覧。
- ^ “中国男性が「犬を2億円で購入」、史上最高額か”. AFPBB (2014-03-19) 2018年3月15日閲覧。
- ^ “中国富裕層に大人気だったチベット犬、一時は高級車並みの価格、人気失墜で暴落「タダでもいらない」―シンガポール華字紙”. Record China (2016-5-27) 2016年5月29日閲覧。
- ^ 大型犬をライオンとして展示、鳴き声で正体判明 中国動物園AFP通信、2013年8月15日記事。
参考文献
[編集]- 韓蒙燕、劉瀟『藏獒』、中国林業出版社、2007年、北京
関連項目
[編集]- チベタン・キー・アプソ
- モンゴリアン・フォアアイド・ドッグ
- チベット犬物語 〜金色のドージェ〜
- タルロ - 映画の中でチベット犬ブームの描写があり犬泥棒や高額で買い取るブローカー等も描かれる。