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TOKYO X

日本の東京都のブランド豚「トウキョウX」を使用した豚肉のブランド
トウキョウXから転送)

TOKYO X(トウキョウ エックス)とは、日本のブランドトウキョウX」の食肉としての販売名である。

日本のブランド豚の銘柄は250種類以上あるが、遺伝子を固定し、新しい合成種の系統として日本種豚登録協会に認定されたものは、トウキョウXが初である。なお、品種・系統名としては「トウキョウX」、食肉としての販売名は「TOKYO X」として登録されている[1]

概要

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品種的には、バークシャー種デュロック種北京黒豚英語版三元交配種から産み出された[1]1990年4月に東京都畜産試験場で品種改良試験を開始し、1997年7月17日に合成種の系統豚として日本種豚登録協会(現日本養豚協会)に認定された[1]

肉の特徴

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ロースに微細な脂肪組織(サシ)が入っている[2]。脂肪のうま味が特徴として挙げられ、焼き料理、炒め料理、しゃぶしゃぶなどに適している[2]。反面、背脂肪が厚く精肉の歩留まりが悪い、脂肪の融点が低く加工し難いといった欠点があり、加工業者からは敬遠されている[2]

日本調理科学会2005年に発表された研究報告に依れば、トウキョウX、LWD種[3]バークシャー種の3品による官能検査では、8項目の官能特性の内、「かたさ」、「ジューシー感」に有意差が見られ、トウキョウXはLWD種よりも1%有意で軟らかく、5%有意で「豚の臭み、獣臭」が弱いと評価されている[4]

東京都農林総合研究センター2014年に発表された研究報告でも、トウキョウXとバークシャー種のロースで官能評価試験を行っており、「やわらかさ」「旨味・コク」「噛みごごち」「香り・風味」の4項目と総合評価で有意に上回る結果が出ている[5]

生産形態

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飼育は多摩地区や委託された他県(宮城県茨城県群馬県山梨県)の農家で行われている[6]世田谷区にも生産者が1軒あった[7]が、トウキョウXの飼育を辞め、一般的な豚の品種に切り替えた[8]。以下の4点のコンセプトが設けられている[9]。これらは頭文字を取り東京SaBAQ(トウキョウサバク)と呼ばれる[10]

安全性 (Safety)
指定飼料期間は抗生物質の添加や予防的な投薬を行わず、防疫に関しては子豚の頃にワクチンを使用する。
生命力学 (Biotics)
指定飼料にはポストハーベスト農薬を用いず、遺伝子組み換えを行っていない植物性飼料(トウモロコシや大豆粕など)を用いる。また、動物性飼料は与えない。
動物福祉 (Animal welfare)
TOKYO Xの販促サイトでは「豚にストレスを与えないように十分なスペースと開放的な施設で飼育する」と謳われているが、実際は繁殖用のメス豚を管理するため、妊娠期間中には妊娠ストールが、分娩後には分娩ストールが使用され子豚の圧死防止策として使用飼育しています。[要出典]
品質 (Quality)
生産現場へ渡される「TOKYO X 生産マニュアル」が策定され、理想としての出荷日齢や体重などが明確に示されている[10]

販売形態

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TOKYO Xのトンカツ(とんかつX,東京都msb Tamachi

1986年に東京都がランドレース種系統豚「エド」を開発し、「エドポーク」として普及させようとしたが、この試みは流通面の統制が上手くいかずに失敗し、銘柄としての「エドポーク」も残っていない[10]

この事例を踏まえて、TOKYO Xでは生産協議会であるTOKYO X 生産組合と流通協議会であるTOKYO X-Associationの2業態の協議会を持つようにしている[10]

参考文献

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  • 坂田雅史「トウキョウXの設立経過と現状」『月刊「畜産技術」』平成10年7月号518号、畜産技術協会、1998年7月、2016年12月7日閲覧 
  • 三枝弘育、河野興一郎「高品質系統豚(トウキョウ X)の加工適性」(PDF)『東京都立食品技術センター研究報告』第7号、東京都立食品技術センター、1998年3月、15-20頁、2016年12月7日閲覧 
  • 高崎禎子、飯塚佳子、鈴木亜由美、伊藤米人「トウキョウX豚肉の化学的, 物理的特性ならびに咀嚼特性」『日本調理科学会誌』Vol.38No.5、2005年10月20日、404-409頁、NAID 110001877005 
  • 植村光一郎(TOKYO X-Association会長)「手段としての Animal welfare」(PDF)、TOKYO X-Association、2009年、2016年12月7日閲覧 
  • 小嶋禎夫「トウキョウXにおけるロース肉の筋線維特性と官能評価」(PDF)『東京農総研研報』2015年10号、東京都農林総合研究センター、2014年10月、25-32頁、2016年12月7日閲覧 
  • 高田明典 著「食と農のまちづくり:東京都世田谷区」、片柳勉・小松陽介 編 編『地域資源とまちづくり―地理学の視点から―』古今書院〈地域づくり叢書2〉、2013年5月15日、77-84頁。ISBN 978-4-7722-5270-6 

脚注・出典

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  1. ^ a b c 東京都農林水産振興財団.
  2. ^ a b c 三枝 1998, p. 15.
  3. ^ ランドレース種、大ヨークシャー種デュロック種三元豚
  4. ^ 高崎 2005, p. 404.
  5. ^ 小嶋 2014, p. 29.
  6. ^ TOKYO X生産組合”. TOKYO X生産組合. 2022年4月6日閲覧。
  7. ^ 高田 2013, p. 80.
  8. ^ 小辻龍郎 (2019年5月6日). “【世田谷区・吉実園】世田谷の複合農家が取り組むユニークな農業”. モリタ男爵の農業まるごとレポート. agri.TOKYO. 2022年4月6日閲覧。
  9. ^ 東京『SaBAQ』”. TOKYO X-Association. 2016年12月7日閲覧。
  10. ^ a b c d 植村 2009, p. 1.

関連

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  • 兵頭勲 - トウキョウX研究開発当時の東京都畜産試験場長。後にトウキョウXの研究論文で農学博士号(畜産学)を取得。

外部リンク

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  • トウキョウX”. 東京都農林水産振興財団. 2016年3月10日 (木) 21:01 (UTC)閲覧。