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[[File:Makuragi02.jpg|thumb|right|レールを枕木が支える]]
'''枕木'''(まくらぎ、{{lang-en-gb|railway sleeper}}、{{lang-en-us|crosstie}}、{{lang-en-ca|railway tie}})とは、[[鉄道]]の[[線路 (鉄道)|線路]]([[軌道 (鉄道)|軌道]])の[[軌きょう]]の構成部材である通常の線路レールを垂直おいては支え、[[軌条|レール締結装置]]を二本平行ととも敷設し、その下に枕木を敷いてレールを支える。枕木の間には隔([[バラスト]]の場合は石敷き詰め、[[一定に線]]要員はこち、列車重量突いて、つまり具合を調整すバラスト(砕石)に伝える部材である。
 
== 概要 ==
近年の枕木は木製でないものが増えてきており、実情に合わせて表記も「枕木」から「まくらぎ」「マクラギ」に置き換えられてきている。[[日本]]の[[国土交通省]]は[[軌間]](レールの間隔)が広がり過ぎたことによる地方鉄道での相次ぐ[[列車脱線事故]]を受けて、2018年6月、木製より耐久性が高い[[コンクリート]]製枕木への取り換えを中小[[私鉄]]、[[第三セクター鉄道]]、[[貨物鉄道]]事業者へ通知した<ref>[https://www.sankei.com/affairs/news/180629/afr1806290004-n1.html 「木製枕木の交換を推進 脱線4件受け国交省通知」]『[[産経新聞]]』朝刊2018年6月29日(2018年7月12日閲覧)。</ref>。
通常の線路において[[軌条|レール]]を二本平行に敷設し、その下に枕木を敷いてレールを支える部材である。[[バラスト軌道]]の場合は枕木の間には石を敷き詰める。
 
近年の枕木は木製でないものが増えてきており、実情に合わせて表記も「枕木」から「まくらぎ」「マクラギ」に置き換えられてきている。[[日本]]の[[国土交通省]]は[[軌間]](レールの間隔)が広がり過ぎたことによる地方鉄道での相次ぐ[[列車脱線事故]]を受けて、2018年6(平成30年)6月、木製より耐久性が高い[[プレストレスト・コンクリート|コンクリート]]製枕木(PC枕木)への取り換えを中小[[私鉄]]、[[第三セクター鉄道]]、[[貨物鉄道]]事業者へ通知した<ref>{{Cite web|和書|date=2017-07-02|url= https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32477200R00C18A7CR8000/|title= 国交省、木製枕木交換を推進 脱線相次ぎ通知|publisher=[[日本経済新聞社]]|accessdate=2023-09-11}}</ref> <ref>[https://www.sankei.com/affairs/news/180629/afr1806290004-n1.html 「木製枕木の交換を推進 脱線4件受け国交省通知」]『[[産経新聞]]』朝刊2018年6月29日(2018年7月12日閲覧){{リンク切れ|date=2023-09}}。</ref>。
== 枕木の役目・原理 ==
 
* レールの間隔(軌間)を一定に保つ
== 枕木の役目・原理 ==
* レールを枕木が支え、枕木をバラスト(砕石や砂利)が支える
枕木は次の役目が要求される<ref>PCまくらぎの話 p9</ref>
* 列車の重量を効率よく分散させてバラストに伝え、過度なレールの屈曲や沈下を防ぐ
* 軌間保持機能 - レールの間隔(軌間)を一定に保つ
* 左右のレールを[[絶縁 (電気)|絶縁]]する
* 荷重分散機能 - 列車の重量を効率よく分散させてバラストに伝え、過度なレールの屈曲や沈下を防ぐ
* クッション
* 横抵抗機能と縦抵抗機能 - 軌道の移動に対する抵抗ができること
* 水平
* カーブ
* レールのつなぎ目と隙間
 
== 材質 ==
=== 木材 ===
[[File:Geschweisster schienenstoss.jpeg|thumb|200px200 px|木製の枕木]]
 
枕木の名称のとおり、かつては木が使われていた。日本では[[クリ]]、[[ヒノキ]]、[[ヒバ]]などの耐久性のあるものが用いられたが、1951年以降は[[ブナ]]も使われるようになった<ref>「ブナ材が枕木に 防腐剤の注入で十年はもつ」『日本経済新聞』昭和25年12月8日</ref>。この他にも堅い広葉樹である[[ニレ]]や[[ナラ]]も使われたという<ref name="林業百科事典">日本林業技術者協会(編). 1993. 『新版 林業百科事典』. [[丸善]]. 東京.</ref>。使用樹種についての割合は耐久性のある樹種が約20 %、ブナが約35 %であった。[[1960年代]]、枕木の損傷は腐朽に起因するものが40 - 60 %、レールの食い込みや犬釘の保持力の減退などの機械的要因が20 - 35 %程度であったという<ref name="林業百科事典"/>。
'''木枕木'''。[[弾性]]に富み[[列車]]の走行による[[振動]]や[[力積|衝撃]]を吸収し、レールの[[締結]](固定)が容易で加工しやすく[[絶縁 (電気)|絶縁電気性]]が高い利点がある。一方、[[クラック|割れ]]や[[腐食]]が起きやすく、寿命が短い<ref>PCまくらぎの話 p.10</ref>。
 
枕木の名称のとおり、かつては木が使われていた。日本では[[クリ]]、[[ヒノキ]]、[[ヒバ]]などの耐久性のあるものが用いられたが、[[太平洋戦争]]後の[[1951年]](昭和26年)以降は[[ブナ]]も使われるようになった<ref>"ブナ材が枕木に 防腐剤の注入で十年はもつ」『" 日本経済新聞』昭和25 195012月8日</ref>。この他にも堅い[[広葉樹]]である[[ニレ]]や[[ナラ]]も使われたという<ref name="林業百科事典">日本林業技術者協会(編). 1993. 『新版 林業百科事典』. [[丸善]]. 東京.</ref>。使用樹種についての割合は耐久性のある樹種が約20 %、ブナが約35 %であった。[[1960年代]]、枕木の損傷は腐朽に起因するものが40 - 60 %、レールの食い込みや[[犬釘]]の保持力の減退などの機械的要因が20 - 35 %程度であったという<ref name="林業百科事典"/>。
 
腐朽対策として、[[クレオソート油]]による防腐処理が開発されあった。この処理については[[日本産業規格]] (JIS) (JIS、旧・日本工業規格)で規定されている。耐久性の低い樹種ではや[[製材]]工場で野ざらしにしておくと枕木として使用される前に大きく劣化してしまう。このために[[日本国有鉄道]](国鉄)では耐久性の低い6樹種(ブナ、[[シデ]]類、[[トチノキ]]、[[カンバ]]類、[[ハンノキ]]、[[ミズキ]])については伐採直後の丸太の状態、もしくは製材工場で加工後すぐに防腐処理を行うように求めたという<ref name="林業百科事典"/>。
 
防腐処理の行われた枕木は無処理のものに比べて、耐久性が飛躍的に向上する。以下に『新版 林業百科事典』(1993) 記載の数値を記す。ただし、使用場所、[[線形 (路線)|線形]]、[[列車]][[重量]][[速度]][[ダイヤグラム|密度(運転頻度)]]などの使用条件によって多少前後する。
* 無処理
** クリ:7 - 9年
** ヒノキ:9 - 12年
** ヒバ:9 - 10年
** [[イタジイ]]:6 - 7年
** ブナ:2 - 3年
** [[マツ]]:3 - 5年
* 防腐処理済み
** マツ:11 - 12年
** ブナ:14 - 25年
** ニレ:13 - 19年
** [[ヤチダモ]]:10 - 12年
 
過去に防腐目的で使われていたクレオソート油には、[[発癌性]]のある[[ベンゾピレン]]類が含まれる。日本では、2004年(平成16年)に改正された[[有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律]](家庭用品規制法)によってベンゾピレン類を一定以上の濃度で含むクレオソート油は使用禁止となった。枕木は家庭用品でないため家庭用品規制法による規制の対象外であるが、後述([[#再利用]]を参照)の通り園芸資材として一般消費者の手に渡る可能性があるため、鉄道各社ではベンゾピレン類を低減しクマロン・インデン共縮合樹脂を添加した「改良クレオソート油」<ref>"家庭用品規制法に対応した改良クレオソート油の性能(第2報)" 田中陽子 酒井温子 増田勝則 伊藤貴文 大藪芳樹 木戸徹 吉田善彦 奈良県森林技術センター研究報告40号 奈良県森林技術センター 2011 pp.17-20</ref>や、ナフテン酸金属塩系や脂肪酸金属塩系など別種の[[木材保存剤]]による処理に切り替えている<ref>{{Cite journal|和書|author=佐伯義将|year=2011|title=鉄道用枕木に使用される薬剤と加圧注入処理|url=https://doi.org/10.5990/jwpa.37.171|journal=木材保存|volume=37|issue=4|pages=171-178|publisher=日本木材保存協会|doi=10.5990/jwpa.37.171|author2=蒔田章}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=蒔田章|year=2013|title=JIS A 9104 「加圧式保存処理木まくらぎ-保存処理の仕様」の改正について|url=https://doi.org/10.5990/jwpa.39.74|journal=木材保存|volume=39|issue=2|pages=74-77|publisher=日本木材保存協会|doi=10.5990/jwpa.39.74}}</ref>。樹脂注入ならば耐久性が2倍に。ただし価格が1.5~1.8倍程度になる問題がある<ref name="PCまくらぎの話_11">PCまくらぎの話 p.11</ref>。
[[日本農林規格]] (JAS) では枕木をその使用場所によって'''並'''(普通の直線・曲線用)、'''橋'''([[橋|橋梁]]用)、'''分岐'''([[分岐器]]用)の3種類に定義している。このうち、国鉄における「並」の枕木は[[1950年代]]に900万本、[[1965年]]([[昭和]]40年)には550万本(材積33万 m<sup>3</sup>)も使われていたという<ref name="林業百科事典"/>。
 
木口割れ防止でリング打ち、防腐剤の浸透性向上と表面の割裂防止で表面にインサイジング加工を行う<ref>"枕木事業" 小林三之助商店 2024年7月20日閲覧</ref>。インサイジングとは切り込み(incision)を入れる加工のことで、木材への液体の浸透を均質・効率的に行うために施す機械加工のことである<ref>"マイクロレーザーインサイジングを応用した木材の表面修飾" あいち産業科学技術総合センターニュース 2017年6月号</ref>。
 
[[日本農林規格]] (JAS) では枕木をその使用場所によって'''並'''(普通の直線・曲線用)、'''橋'''([[橋|橋梁]]用)、'''分岐'''([[分岐器]]用)の3種類に定義している。このうち、[[国鉄]]における「並」の枕木は[[1950年代]]に900万本、[[1965年]]([[昭和]]40年)には550万本(材積33万 m<sup>3</sup>)も使われていたという<ref name="林業百科事典" />。[[2000年代]] - [[2010年代]]においては並まくらぎ換算で約11~52万本が使われている<ref name="PCまくらぎの話_11"/>。並まくらぎの規格寸法は下記の通り<ref>PCまくらぎの話 p.12</ref>。
* 在来線用(並マクラギ2号)<ref>[https://www.sannosuke.co.jp/cn2/jigyou_makuragi.html "在来線用木マクラギ規格寸法"] 小林三之助商店 2024年7月20日閲覧</ref> - 厚さ14cm、幅20cm、長さ210cm
* 新幹線用 - 厚さ15cm、幅24cmまたは35cm、長さ260cm
 
日本の[[2000年代]]後半の現状として自然[[環境保全]]意識の高まりにより国産材の入手が難しく、多くを輸入材で賄っている。木製枕木は日本全体で[[1990年代]]は全体の6 - 7割程度使用されてきたが、2000年代後半には3 - 4割まで減っている。使用割合が減ったとはいえ、運転本数の比較的少ない地方路線では今でも多く利用されている。メンテナンスさえおこなえば安価で使いやすく、[[関東地方]]の[[私鉄]]がPC枕木から木枕木へ戻した例もある<ref>ニッポン鉄道遺産 p207-209</ref>。
 
=== コンクリート ===
[[File:JRE TOKAIDORailway PCMakuragi.JPG|thumb|通常のものより、倍近い幅があるPC枕木(TC型省力化軌道)]]
[[コンクリート]]製の枕木で、'''RC枕木'''と'''PC枕木'''(PCは[[プレストレスト・コンクリート]]の略)がある。日本国内では大正中期に木の資源が減少し、石浜式といわれるRC枕木か開発された。初期の枕木は亀裂が生じやすくレールの締結方式に苦慮する問題があった<ref name="pc-makuragi206-207">ニッポン鉄道遺産 p206-p207</ref>。コンクリート材料は圧縮に強く引張に弱い性質がある。レールの上に列車が乗るとレール位置の下の縁または中央部の上の縁に枕木を引張る力が発生し、ひび割れ等が発生する。そこで製造時にコンクリートに圧縮する力を与えて引張る力を発生しにくくする工夫である。この工夫をしたコンクリートをプレストレスト・コンクリートという。中にPC鋼材([[ピアノ線]]や[[鋼]]棒)が入っており、製造時それらに緊張を与えることでコンクリートに圧縮する力を与え続け、ひび割れ等を発生しにくくする<ref name="RRR-2015-10">鉄道技術 来し方行く末  渡辺勉 鉄道総合技術研究所 RRR 2015年10月号</ref>。
[[コンクリート]]枕木で、主流のものはPC枕木(PCは[[プレストレスト・コンクリート]]の略)。プレストレストコンクリートにはその製作方法により、プレテンション方式とポストテンション方式がある。芯に[[ピアノ線]]や[[鋼]]棒(PC鋼棒<ref>[http://www.k-neturen.co.jp/Portals/0/images/products/steel/technology/pdf/k001pckoubou.pdf PC鋼棒] - ネツレン(2009年版)2018年7月6日閲覧</ref>)が入っており、曲げに対する抵抗力が高い。寿命は50年程度で木製に比べると狂いも生じにくい。ただし1本あたり数百キログラムの重量があるため施工が非常に難しく、無道床[[橋|橋梁]](道床[[砂利]]を有しない橋梁)には使用できない。また長尺のものを必要とする[[分岐器]]付近にも適さないが、実用化されていないわけではない。
 
[[寿命]]は50年程度で木製に比べると狂いも生じにくい。ただし1本あたり数百[[キログラム]]の重量があるため施工が非常に難しく、無道床[[橋|橋梁]](道床[[砂利]]を有しない橋梁)には使用できない。また長尺のものを必要とする[[分岐器]]付近にも適さないが、実用化されていないわけではない。日本では1943年(昭和18年)頃から[[鉄道技術研究所]]で研究がされ、1951年(昭和26年)に[[東海道本線]]、[[大森駅 (東京都)|大森駅]]-[[蒲田駅]]間で試験された<ref name="pc-makuragi206-207"/><ref>PCまくらぎの話 p32</ref>。
 
==== PC枕木の国内規格 ====
国鉄規格JRSは[[国鉄分割民営化]]により廃止され、[[日本産業規格]](JIS)に引き継がれた。規定されているPC枕木の主なものは下記の通り<ref name="RRR-2015-10"/><ref>PCまくらぎの話 p48-49</ref>。
* 在来線用
** 3号 - [[直線]]と[[曲線]]([[半径]]800m以上)、長さ2,000mm
** 6号 - 曲線(半径240mから半径800mまで)、長さ2,000mm
** 7号 - 中下級線用、長さ2,000mm
* 新幹線用
** 3T - 長さ2,400mm。プレテンション式PC枕木。時速210km以下の区間に用いられる。
** 3H - 長さ2,400mm。プレテンション式PC枕木。時速210kmを超える区間およびこれに付帯する区間に用いられる。
** 4T - 長さ2,350mm。ポストテンション式PC枕木。時速210km以下の区間に用いられる。
** 4H - 長さ2,400mm。ポストテンション式PC枕木。時速210kmを超える区間およびこれに付帯する区間に用いられる。
 
プレテンション式PC枕木とはPC鋼材を緊張させた後にコンクリートを打ち込む方式で1942年イギリスで開発され、ポストテンション式PC枕木とはコンクリート硬化後にPC鋼材を緊張させる方式で1953年ドイツで開発された<ref name="RRR-2015-10"/>。
 
=== ガラス繊維 ===
重さの問題を改善したものが'''合成枕木'''である。これは材質にFFU([[ガラス繊維|ガラス長繊維]][[繊維強化プラスチック|強化プラスチック]][[発泡プラスチック|発泡]]体)を使用している。FFUは硬質[[ポリウレタン|ウレタン樹脂]]を[[ガラス]]長繊維で強化したもの。重さは木製枕木と同程度で施工しやすい。耐久性はPC枕木と同等。
2020年代以降、環境配慮の観点から枕木に適した木材の調達が困難になっていること、また、枕木の防腐剤である[[クレオソート]]が[[発がん性]]の懸念からEU内で使用禁止になったことなどから需要が拡大している<ref>「オランダに新工場 積水化学工業」『木材新聞』2023年(令和5年)11月10日1面</ref>。
 
=== プラスチック ===
破砕した[[プラスチック]][[ごみ]]([[ポリエチレン]])に廃[[タイヤ]]と[[ミネラル]]を混ぜ、高温で成形した物。上面以外には、バラストに食い込むよう、[[ワッフル]]状の凹凸を設けている。[[アメリカ合衆国]]で実用化されている。
 
=== 金属 ===
一部ではあるが[[鉄]]([[鋼]])製の枕木の採用例もある。木製の製品と比べ強度、衝撃性に優れる反面長寿命特にレール締結装置で発生する横圧(レールに対し直角方向に作用する力)に対する抵抗力が大きい<ref name="PCまくらぎの話_12-13">PCまくらぎの話 pp.12-13</ref>。高価かつ[[湿地]]帯で[[腐食]]しやすい欠点もあり、採用は[[製鉄所]]内の[[専用鉄道|専用線]]など、ごく一部に限られていた。鉄は[[伝導体|導通材]]であるので、[[軌道回路]]を用いる場合には左右の軌条との間を[[絶縁 (電気)|絶縁]]しなければならない問題もある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mine-s.co.jp/business/sst.html |title=鉄まくらぎ分岐器 |publisher=峰製作所 |accessdate=2023-06-05}}</ref>
 
形状は'''モノブロック'''と'''ツーブロック'''のものがあり、前者は[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]、大井川鉄道、製鉄所構内、後者は[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]が採用している<ref name="PCまくらぎの話_12-13"/>。
営業用路線への採用例として、[[信越本線]][[碓氷峠|横川 - 軽井沢間]]の[[アプト式]]区間が[[鉄道の電化|電化]]された際に鉄製枕木が採用されており、[[粘着式鉄道|粘着式]]への転換まで続いた。他に、[[御殿場線]]や[[山陽電鉄]]の一部区間での採用例が見られる<ref>『[[鉄道ピクトリアル]]』1979年3月号</ref>。近年では[[日本貨物鉄道|JR貨物]]<ref>{{PDFlink|[http://www.jrfreight.co.jp/common/pdf/info/2015_anzen.pdf 安全報告書2015(JR貨物)]}}(8ページ)</ref>などで採用されている。[[形鋼|H形鋼]]を枕木に用いた分岐器もある。また[[大井川鐵道]][[大井川鐵道井川線|井川線]]の[[アプトいちしろ駅]] - [[長島ダム駅]]に採用された[[アプト式]]区間では、急勾配による[[道床]]のずれを抑制する為に、[[ステープラー]]や[[タッカー (工具)|タッカー]]の針の様に道床に挿す形状になっている鉄製枕木を採用している。
 
営業用路線への具体的な採用例として、[[信越本線]][[碓氷峠|横川 - 軽井沢間]]の[[アプト式]]区間が[[鉄道の電化|電化]]された際に鉄製枕木が採用されており、[[粘着式鉄道|粘着式]]への転換まで続いた。他に、[[御殿場線]]や[[山陽電鉄]]の一部区間での採用例が見られる<ref>『[[鉄道ピクトリアル]]』1979年3月号</ref>。近年では[[日本貨物鉄道|JR貨物]]<ref>{{PDFlink|[http://www.jrfreight.co.jp/common/pdf/info/2015_anzen.pdf 安全報告書2015(JR貨物)]}}(8ページ)</ref>などで採用されている。[[形鋼|H形鋼]]を枕木に用いた分岐器もある。また[[大井川鐵道]][[大井川鐵道井川線|井川線]]の[[アプトいちしろ駅]] - [[長島ダム駅]]に採用された[[アプト式]]区間では、急勾配による[[道床]]のずれを抑制する為に、[[ステープラー]]や[[タッカー (工具)|タッカー]]の針の様に道床に挿す形状になっている鉄製枕木を採用している。海外では[[スイス]]、[[ドイツ]]等の諸国で実績があり、[[熱帯|熱帯地方]]では木枕木が[[害虫]]を受けやすいことから普及している<ref name="PCまくらぎの話_12-13"/>
鉄は導通材であるので、[[軌道回路]]を用いる場合には左右の軌条との間を[[絶縁 (電気)|絶縁]]しなければならない。
 
== 敷設方法 ==
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また、枕木をレールに対して平行に敷設した「ラダー枕木」も普及しつつある。これはPC製の縦梁と[[軌間]]を保つための継材を組み合わせて[[梯子|はしご]](英語でLadder)状にし、レールは縦梁に沿って敷設したもの。これを利用した軌道を「[[ラダー軌道]]」 という。
 
[[JR東日本旅客鉄道]](JR東日本)では、分岐器用にラダー枕木(縦枕木)と従来の枕木(横枕木)を組み合わせたような、グリッド枕木と呼ばれるものを採用し始めている。外観は従来の枕木に酷似しているが、レールの下にはレールに沿って敷設される縦枕木が挿入されている。レールが曲線となる部分は縦枕木を段階的にずらしてあり、常に直線の枕木が使用される。横枕木も従来とは違って短く、左右が繋がっていない。ただしラダー枕木同様、軌間を保つための長い枕木が所々に挿入され、そこに限っては左右が繋がる。
 
== レール締結 ==
枕木にレールを締結する部材を'''レール締結装置'''という。犬釘が用いられるが、のちに高速走行に伴う衝撃に耐えられるよう、[[ばね]]作用を持つ弾性締結装置が開発され使用されている<ref>ミニ新幹線誕生物語 p75</ref>。弾性締結装置の種類は下記の通り。
* 板ばね - ボルトを締め付けることで板ばねがたわみ、その反力でレールを固定する<ref name="締結ばね_2006">"レール締結装置用ばね" 大沢猛 日本ばね学会会報 2006年11月号</ref>
* 線ばね - 枕木に円筒の穴をあけた金具を埋め込んで、線ばねを挿入することで線ばねがたわみ、レールを固定する<ref name="締結ばね_2006"/>
 
== 点検・交換作業 ==
2000年代後半の現状として鉄道会社の[[保線]]部門は日常の点検と管理で、枕木の交換作業は[[アウトソーシング|外注]]がほとんどで専門業者が行う<ref>ニッポン鉄道遺産 p209-211</ref>。
 
== 改軌 ==
鉄道における線路のレールの間隔(軌間)を変更する工事を[[改軌]]とよぶが、我が国の[[新在直通運転|新在直通運転化工事]]([[ミニ新幹線|ミニ新幹線化工事]])に代表される改軌工事の主な手法は枕木の交換で行われる<ref>ミニ新幹線誕生物語 p68-77</ref>。
{{Main|改軌#改軌の工法}}
 
== 枕木オーナー制度 ==
日本では、経営の一助として寄付を募る際に、寄付者の名前を記したプレートの枕木への設置等を条件に掲げる「枕木オーナー」制度を導入している[[第三セクター鉄道]]が以下のように複数ある。
* [[秋田内陸縦貫鉄道]]<ref>[https://www.akita-nairiku.com/others/crosstie.php 枕木プレートオーナーを募集します!]秋田内陸縦貫鉄道(2019年8月24日閲覧)。</ref>
* [[真岡鐵道]]<ref>[https://www.sankei.com/regionarticle/news20190820-JFTS5XJCWBIQTI7TYPQNKSZNUE/190820/rgn1908200012-n1.html 真岡鉄道、「枕木オーナー」募集 支援呼びかけ][[産経新聞|産経ニュース]](2019年8月20日)2019年8月24日閲覧。</ref>
* [[いすみ鉄道]]<ref>[https://www.isumirail.co.jp/news008.html 枕木オーナー募集のお知らせ]いすみ鉄道(2019年8月24日閲覧)。</ref>
* [[信楽高原鐵道]]<ref>[https://koka-skr.co.jp/makuragi.html 信楽高原鐵道「枕木オーナー」制度 ご案内]信楽高原鐵道(2019年8月24日閲覧)。</ref>
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[[File:Railway Reuse Makuragi.JPG|thumb|200px|枕木を再利用している一例。]]
木製廃枕木は不腐性が持続しているため、[[花壇]]の縁取り、オープンデッキ、一部[[鉄道駅]]の[[プラットホーム]]、敷地を囲う[[柵|フェンス]]として屋外で再利用されている。木製枕木が一般的だった[[1980年代]]頃までは、1本500 - 1,000円程度で[[ホームセンター]]や園芸資材店で[[園芸|ガーデニング]]材料として販売されていた。現在は、PCや合成など木製でない「まくらぎ」、枕木を用いない[[スラブ軌道]]採用区間が増え、国内での廃枕木の発生は少なくなっている。そのため高価になり、枕木を模した品か輸入品が多い。輸入品には[[外来種|外来生物]]が紛れていることがあり、[[2002年]](平成14年)に、ホームセンターで売られていた[[マレーシア]]産の枕木から[[サソリ]]が出た事があった。
 
過去に防腐目的で使われていたクレオソート油は[[国際がん研究機関|IARC]]の[[IARC発がん性リスク一覧#グループ2A|グループ2A(おそらく発がん性がある)]]に分類されており、日本でも[[ベンゾピレン]]類を一定以上の濃度で含むものは[[有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律|家庭用品規制法]]により使用が禁止された。枕木は家庭用品でないため家庭用品規制法による規制の対象外であるが、上記の通り園芸資材として一般消費者の手に渡る可能性があるため、鉄道各社ではベンゾピレン類を低減した改良型クレオソート油や、ナフテン酸金属塩系・脂肪酸金属塩系など別種の[[木材保存剤]]による処理に切り替えている<ref>{{Cite journal |和書
|author = 佐伯義将
|author2 = 蒔田章
|year = 2011
|title = 鉄道用枕木に使用される薬剤と加圧注入処理
|url = https://doi.org/10.5990/jwpa.37.171
|journal = 木材保存
|volume = 37
|issue = 4
|publisher = 日本木材保存協会
|doi = 10.5990/jwpa.37.171
|pages = 171-178}}</ref><ref>{{Cite journal |和書
|author = 蒔田章
|year = 2013
|title = JIS A 9104 「加圧式保存処理木まくらぎ-保存処理の仕様」の改正について
|url = https://doi.org/10.5990/jwpa.39.74
|journal = 木材保存
|volume = 39
|issue = 2
|publisher = 日本木材保存協会
|doi = 10.5990/jwpa.39.74
|pages = 74-77}}</ref>。
 
== 脚注 ==
103 ⟶ 119行目:
 
=== 出典 ===
{{Reflist|30em}}
 
== 参考文献 ==
* ミニ新幹線誕生物語 ミニ新幹線執筆グループ [[成山堂書店]] 2003年 ISBN 978-4-425-76121-0
* ニッポン鉄道遺産 斉木実 米屋浩二 [[交通新聞社]] 2009年 ISBN 978-4-330-07509-9
* PCまくらぎの話 井上寛美 創英社/三省堂書店 2018年 ISBN 978-4866590332
 
== 関連項目 ==