桶
桶(おけ)とは、容器の一種である。家庭で水や湯を汲んだり溜めたりするための小型から、醸造業に使われる大型まで様々なサイズ・用途がある。歴史的に長く使われている木製のほか、現代ではプラスチック製(普通、バケツと呼ばれる)も多い。
樽と桶の区別について
日本では、桶と樽は良く似た形である。樽は胴体の材料として板目材の板を使用する。蓋付きを「樽」、蓋がないものを「桶」と呼ぶという説もある。例外も多いが、酒樽などは保存のため蓋が閉じられた状態が常であり、風呂桶は蓋が開けられた状態で使用することが普通である。
桶の歴史
木で作る円筒形容器の最古の形態は、木の幹を刳(く)り抜いた「刳桶」で、古くは弥生時代の遺跡からも出土する。続いて「曲桶」が発明され、平安時代には一般に広まった。これは、「曲物」(まげもの)とも呼ばれ、薄い板を円状に曲げ密着させたものであった。当初は麻糸をしまうための笥として用いられたとも言われ、「麻笥」「麻の笥」と書く古い表記も存在する。しかしこれらは強度的に弱く、またあまり大きなものは作れなかった。
中国から輸入された桶に影響を受け誕生したものが「結桶」(ゆいおけ)と呼ばれる、現在[いつ?]まで続く木製の桶である。直径に合わせて湾曲した刃を持つ特殊な道具でヒノキ、スギなどを割って細長い板にして円状に並べ、竹などを螺旋状に束ねた「箍」(たが)で巻いて締める結物構造となっている。接着剤等は使用しない。「棺桶」も元々は、このような製法による座棺をイメージした言葉であった。
大型の桶は、日本酒や味噌、醤油の醸造に使われた。第二次世界大戦後はプラスチックや琺瑯、金属製タンクでの醸造へ切り替えが進んだ[1]が、現代でも木桶仕込みにこだわる醸造元も多い(醤油「角長」、八丁味噌や日本酒などの老舗蔵元)ほか、新政酒造(秋田市)のように木桶へ回帰したり、剣菱酒造(兵庫県神戸市)のように木製酒造用具を自作したりする酒蔵もある。
日本酒業界では、桝一市村酒造場(長野県小布施町)が2000年代、各地の蔵に保管されていた酒桶の再利用を呼び掛け、30軒ほどの蔵元が賛同した。だが新注する蔵は少なく、醸造用の大型桶を作れる数少ない企業である藤井製桶所(大阪府堺市)は廃業を考えていた。しかし2014年から青島桶店(静岡県藤枝市)の後継者が弟子入りし2020年まで修行した後独立、藤井製桶所が唯一一人前として認めた桶屋として奮闘している。
木桶は雑菌による腐造リスクがある半面、うまみや香りが増すメリットがある[2]。また、呼称は「樽」であるが、世界最大の木樽はフンドーキン醤油(大分県臼杵市)で使われている。
日用品としての桶は江戸時代、多くの家庭に常備されるようになった。この桶は江戸時代の食料などの保存・運搬に多大な影響を与えた。防火用に雨水を貯めておく天水桶は、寛政以降に一般化した[3]。
現在[いつ?]日本では運搬や保存の用途で木製の桶が用いられる機会は減り、プラスチック容器にとって代わられた。現在日常的に用いられるのは風呂桶(バスタブ)や湯桶(ゆおけ。用途によっては洗面器とも)などである。広告媒体を兼ねて銭湯に置かれるケロリン桶が有名である。
また、楽器としてもパーカションの一種として使われ、檜製の湯桶を裏底を表にして棒等の支えを裏に取り付けて、パーカッションセットに組み込んでいる。裏底をドラムの様にドラムスティックで叩いて音を出す。たまの石川浩司が演奏していたことで知られている。
慣用句
- たがが弛む
- 風が吹けば桶屋が儲かる
- ドベネックの桶 - 植物学における比喩表現
さまざまな桶
関連項目
出典
- ^ 桝一市村酒造場(2018年2月21日閲覧)
- ^ 木桶にこだわり造る「天使の分け前」も一興/古くて新しい伝統 絶やさない『日本経済新聞』朝刊2018年2月11日(NIKKEI The STYLE)
- ^ “コトバンク 天水桶(日本大百科全書ニッポニカ)”. 2016年12月26日閲覧。
- ^ 創業から続く「木桶蒸留」の話|伝兵衛蔵だより|伝兵衛蔵|濵田酒造、現代の名工 晴れの栄誉! |報道発表資料|厚生労働省_別添 平成23年度 卓越した技能者表彰_p.27_第13部門_おけ・たる製造工_津留辰矢_2011年11月14日(現代の名工)