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ヘレネー

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ヘレネー(Helene, :Ἑλένη)は、ギリシア神話に登場する女性である。長母音を省略してヘレネとも表記される。元来はスパルタで信仰された樹木崇拝に関わる女神だったと考えられている[1]

ヘレネーとパリス、ジャック=ルイ・ダヴィッド(1788)

表向きはスパルタ王テュンダレオースと王妃レーダーの娘であるが、実父はゼウスである。兄にディオスクーロイカストールポリュデウケース)兄弟、姉にクリュタイムネーストラーがいる。メネラーオスの妻となったが、イーリオス(トロイア)の王子パリスにさらわれ、トロイア戦争の原因となった。

ヘレネーは成長すると、地上で最も美しい絶世の美女となった。テーセウスは彼女をさらって母アイトラーのもとにあずけたが、ディオスクーロイにアイトラーごと取り返された。アイトラーは、この後ヘレネーに召し使われてイーリオスまでついて行き、イーリオス陥落の際にテーセウスの息子のデーモポーンアカマースに再会した。

ヘレネーの結婚に際しては、求婚者がギリシア中から集まった。ヘレネーの義父テュンダレオースは、彼らの中の誰を結婚相手に選んでも、それ以外の男たちの恨みを買う恐れがあるため、あらかじめ「誰が選ばれるにしても、その男が困難な状況に陥った場合には、全員がその男を助ける」という約束をさせ、彼らの中からメネラーオスを選んだ。

メネラーオスの妻となったヘレネーは、イーリオスの王子パリスの訪問を受けた。パリスは美の審判の際に、アプロディーテーからヘレネーを妻にするようそそのかされていたのである。ヘレネーはパリスに魅了され、娘ヘルミオネーを捨てて、イーリオスまでついていってしまった。

メネラーオスとその兄アガメムノーンらは、ヘレネーを取り返すべく、求婚者仲間たちを集めてイーリオスに攻め寄せた。元求婚者たちは、前の約束があるためにこれを断ることができず、トロイア戦争に参加した。

トロイア戦争では、ヘレネーを返してギリシア勢に引き上げてもらおうという提案がなされるが、パリスが反論して沙汰やみになった。パリスの死後は、パリスの弟のヘレノスデーイポボスがヘレネーをめぐって争いをおこし、ヘレネーはデーイポボスの妻になることとなった。ヘレノスは弟にヘレネーを奪われたことをうらみ、戦闘に参加するのをやめて市外に逃れた。その後ヘレノスはオデュッセウスに捕まって説得され、ギリシア勢に味方することになった。ヘレノスは予言能力によりイーリオス陥落に必要な条件を教え、その滅亡を助けた。

イーリオス陥落の際、木馬の中にいたメネラーオスは、デーイポボスの館に駆けつけてデーイポボスを殺した。そしてヘレネーも殺そうとするが、恋情やみがたく殺すことができなかった。ヘレネーはメネラーオスと共にスパルタに帰った。

後日談では、再びスパルタの王妃として、かつての求婚者たちの許しを得て平穏に暮らしたとされる。また、別の話ではアガメムノーンの息子オレステースによって殺されたとある。オレステースは、密通の果てに夫アガメムノーンを殺した母クリュタイムネーストラーを自らの手にかけたあと、叔母であるヘレネーを「父アガメムノーンを10年に及ぶ戦争に連れ出し、家族崩壊の原因を作った不義の女」として成敗した。ギリシア悲劇でもしばしば扱われたが、三大作家の一人エウリーピデースによる悲劇『ヘレネー』が現存している[2]

脚注

  1. ^ 里中満智子 『マンガ ギリシア神話7 トロイの木馬』 中央公論新社
  2. ^ 細井敦子 訳『『ヘレネー』:ギリシア悲劇全集『第8巻 エウリーピデース4』所収』岩波書店、2007年。ISBN 4000916084 

関連項目

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