層雲峡(そううんきょう)とは、北海道最大の大河・石狩川(いしかりがわ)上流にある峡谷のこと。「大雪山国立公園」内にあり、約25キロメートル続く※柱状節理(ちゅうじょうせつり)の断崖絶壁や、大函(おおばこ)、流星・銀河の滝など、長い時間をかけて自然が作り出した造形美を観賞できます。
(※切り立った崖のような地質のこと)
大雪山連峰のふもとにある温泉街からは、ロープウェイとリフトを利用して標高1,984メートルの黒岳(くろだけ)へ登ることもできます。紅葉シーズンをはじめ多くの人が訪れる、イルミネーションや雪のイベントも開催される人気観光スポット。そんな層雲峡や大雪山の見どころ、イベント情報をご紹介します。
目次
北海道上川町・層雲峡へのアクセス
層雲峡へ車で向かう場合、最寄りの道央自動車道・上川層雲峡ICへは札幌市内から札幌IC経由で約2時間20分、新千歳空港からは新千歳空港ICを通って約3時間10分、旭川市内からは旭川北ICを経由して約1時間30分。上川層雲峡ICからは、さらに30分ほど車を走らせると到着します。
公共交通機関で向かう際は、JR上川駅が最寄り駅。特急オホーツクに乗ってJR札幌駅から約2時間20分、JR旭川駅からは約1時間です。上川駅からは道北バスを乗り継いで、約35分で到着です。
服装や持ち物について
エリア内は、トレッキングコースや散策路も多いので、歩きやすい靴や動きやすい服装で行くのが最適。また、黒岳山頂付近は寒さの厳しいエリアのため、夏でも雪が残っていることも。山頂を目指す人は季節にかかわらず、上着を持っていくことをおすすめします。
断崖絶壁が切り立つ大函
層雲峡に着いたらまず見ておきたいのが、エリア内で最もすばらしい峡谷美と言われている大函(おおばこ)。上川層雲峡ICから南東へ車で約30分の距離にあります。
この景観は、約3万年前に起きた大雪山の巨大噴火によって埋め尽くされた石狩川が、その後1万年以上かけて浸食されてできたと言われています。
高さ約200メートルの柱状節理の巨大な岩壁が、屏風(びょうぶ)のように並ぶ壮大な景観は圧巻! この景色を写真に収めようとする人でにぎわう撮影スポットです。
大函から北西へ遊歩道を進んだ先には小函(こばこ)もありますが、現在は落石の危険があるため立ち入り禁止となっており、見ることができません。
大函
- 住所
- 北海道上川郡上川町層雲峡大函
- アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから車で約30分
【電車・バス】JR上川駅から道北バス層雲峡行き終点下車、そこから道北バス大雪湖行きに乗り換え、「大函入口」下車、徒歩約3分 - 詳細
- 大函 | 北海道上川町
対照的な水の流れが見事!流星・銀河の滝
大函から北西へ車を約10分走らせると、銀河の滝と流星の滝が見えてきます。この2つの滝は「日本の滝百選」にも選ばれており、層雲峡を代表する観光スポット。
約90メートルの高さから太い1本の滝となって荒々しく流れ落ちる流星の滝に対し、銀河の滝は120メートルの落差を水が白糸のように穏やかに落ちるため、その対照的な様子からそれぞれ「男滝」「女滝」とも呼ばれています。
駐車場付近からだと片方ずつしか見ることができませんが、そこから滝を背にして20分ほど階段を上った先にある「双瀑(そうばく)台」からは、2つの滝を同時に見ることが可能です。
階段を上がる途中も、大きな岩場や苔に覆われた大木などがあり、終始自然豊かな景色を楽しめます。
駐車場から7分ほど歩いた場所にある休憩スポットからも2つの滝を望めるので、「双瀑台」まで階段を上りきる自信がない人は、ここを目指すのも手です。
駐車場内には「流星・銀河の滝休憩舎(滝ミンタラ)」もあります。お土産品が充実しており、木彫りのヒグマやフクロウなどの民芸品のほか、お菓子などが陳列。
中でも人気なのは、北海道産しいたけを使った「しいたけ茶」(800円)。そのまま飲んでも、スープやお出汁として使ってもおいしいと評判だそう。
銀河・流星の滝
- 住所
- 北海道上川郡上川町層雲峡
- アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから約30分
JR上川駅からバス「層雲峡」下車、そこから道北バス大雪湖行きに乗り換え、「滝見台」下車、徒歩約1分 - 詳細
- 流星・銀河の滝 | 北海道上川町
流星・銀河の滝休憩舎(滝ミンタラ)
- 住所
- 北海道上川郡上川町層雲峡 「銀河・流星の滝」駐車場内
- 営業時間
- 8:00~19:00(変動あり)
- 定休日
- 5~10月はなし、11~4月は不定休(イベント開催時などのみ営業)
- アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから約30分
JR上川駅からバス「層雲峡」下車、そこから道北バス大雪湖行きに乗り換え、「滝見台」下車、徒歩約1分
ロープウェイやリフトで気軽に黒岳をトレッキング
双瀑台から車を北西へ約5分走らせると、黒岳のふもとにある大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイ乗り場にたどり着きます。ここからロープウェイとペアリフトを乗り継いで、黒岳の7合目まで一気に上っていきましょう。
乗り場にはチケット売り場のほか、売店、カフェ、アウトドアショップも併設されています。7合目からは20分ほどトレッキングコースを歩くので、ここで飲み物などを買っておくと安心です。
準備がととのったら、ロープウェイに乗って黒岳5合目の黒岳駅へ。標高約1,300メートルまで上っていく途中の景色も圧巻です。
秋の紅葉シーズンには、一面が黄色や赤に染まる美しい光景が見られます。
黒岳駅に到着したら、駅の中にあるレストラン「ともちゃん食堂」でランチタイム。
一押しは「山菜そば」(1,100円)。そのほか、カレーライスやラーメンなど定番メニューが並びます。
駅構内には木彫りの実演販売をする売店もあるので、立ち寄ってみてください。
屋上にある「大雪山黒岳ネイチャーテラス」からは、大雪山やその周辺の山々の雄大な景色を望めます。ベンチや双眼鏡も設置されているので、大自然を感じながらまったり過ごしましょう。
黒岳駅でひと休みしたら、散策路を10分ほど歩いて標高1,320メートル地点の黒岳リフト乗り場へ。この道中でも四季折々の樹木や高山植物を観察できます。
リフト乗り場へ向かう中間地点付近には、周辺の自然について図解でわかりやすく解説してくれる「大雪山黒岳資料館」も。
乗り場に着いたら、ペアリフトで黒岳7合目まで向かいます。
リフトに乗っている間に見えるのは、間近に迫る黒岳や周辺の山々の景色。オープンエアーな空中遊覧は、ロープウェイとはまた違った雰囲気で大自然を感じられます。
7合目に到着すると、見えてくるのは「黒岳登山口」と「黒岳カムイの森のみち」入り口。本格的に黒岳登山をする場合は、登山靴などの装備が必要ですが、「黒岳カムイの森のみち」は片道360メートル(約20分)のコースなので、気軽にトレッキングをすることが可能です。
コースを進んでいくと、見えてくるのは黒岳に広がる季節ごとの景色。紅葉シーズンには、鮮やかに色づいた木々が迎えてくれるでしょう。
ゴール地点の展望台から遠くに見えるのは、あまりょうの滝。散策や景色を楽しんだら、再びリフトとロープウェイを利用してふもとに戻りましょう。
大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイ&リフト
- 住所
- 北海道上川郡上川町層雲峡温泉
- 営業時間
- [2024年]
6月1日~9月30日/6:00~18:00、10月1日~15日/6:00~17:00、
10月16日~11月30日/8:00~16:30、12月1日~31日/8:00~16:00
[2025年]
1月1日~3日/8:00~16:00 - 定休日
- 2025年1月4日~3月7日(整備運休)
- 料金
-
ロープウェイ料金/往復 大人(中学生以上) 2,600円、小学生1,300円、未就学児無料、
リフト料金/往復 大人(中学生以上) 1,000円、小人(小学生) 500円、未就学児無料、
ロープウェイ・リフトセット券/大人(中学生以上) 3,300円、小学生1,650円、未就学児無料、 - アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから車で約25分
【電車・バス】JR上川駅からバス「層雲峡」下車、徒歩約5分 - 公式サイト
- 大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイ
水面に映る錦秋の光景を堪能できる「大雪高原温泉沼巡りコース」
より長い距離を歩きたい人には、層雲峡と同じく大雪山国立公園内の「大雪高原温泉沼巡りコース」がおすすめです。大雪山の主稜線(山脈の中心にある峰から峰へと続く線のこと)にあたる「高根ヶ原(たかねがはら)」東斜面のふもとには、沼や池が点在しています。それらをめぐる林間の登山コースで、1周約7キロメートル、所要時間は徒歩約5時間です。
出発は、「黒岳ロープウェイ」から南へ車で約55分の場所にある「高原温泉ヒグマ情報センター」。道中にある大小10の池や沼は、9月頃になると赤や黄色に鮮やかに紅葉した木々が水面に映し出され、例年、多くの人が訪れます。
ほかにも、雪どけに咲くミズバショウや立ち上る火山の噴気、希少な高山植物など、年間を通して魅力的な風景を見せてくれます。夏には、双眼鏡でヒグマの様子が見られることも。
※コース上はヒグマの生息地です。利用者は入山前に「高原温泉ヒグマ情報センター」でレクチャーを受け、対策や利用ルールを聞いて必ず守ってください
高原温泉ヒグマ情報センター
- 住所
- 北海道上川郡上川町層雲峡大雪高原温泉
- 営業期間
- 6~10月上旬
- 営業時間
- 7:00〜13:00
[大雪高原温泉沼巡りコース開放時間]入山7:00~13:00、下山15:00まで
※2024年9月3日よりコース一時閉鎖中 - 入場料
- 無料
- アクセス
-
【車】上川層雲峡ICから約75分
※紅葉時期(9月中旬~10月上旬)は道道銀泉台線、および町道高原温泉線は車両規制のため、
シャトルバス利用の必要あり - 公式サイト
- 大雪高原温泉ヒグマ情報センター
日本一早い紅葉の斜面が広がる「赤岳銀泉台」
大雪山の紅葉をもっと堪能したい人は、層雲峡から車で約50分の場所から見える「赤岳銀泉台(あかだけぎんせんだい)」がぴったり。日本一早く色づくとされる大雪山の紅葉は、例年9月中旬に見頃を迎えます。その時期の景色は息をのむほどの美しさです。
山の斜面が赤・黄・緑に染まった鮮やかな風景は、心を揺さぶる感動があります。
赤岳銀泉台
- 住所
- 北海道上川郡上川町層雲峡赤岳銀泉台
- 営業時間
- 6~10月上旬
- 入場料
- 無料
- アクセス
-
【車】上川層雲峡ICから約1時間
※紅葉時期(9月中旬~10月上旬)は道道銀泉台線、および町道高原温泉線は車両規制のため
シャトルバス利用の必要あり - 詳細
- 赤岳銀泉台 | 北海道上川町
四季折々の花が咲く「大雪 森のガーデン」
層雲峡から北西へ車で約40分進んだ先にあるのが、大雪山で最も美しいとされる「大雪高原旭ヶ丘」。その中には、季節ごとの草花が咲くおもてなしの庭「大雪 森のガーデン」があります。
敷地内には色彩豊かな「森の花園」、樹木や山野草に癒される「森の迎賓館」や「遊びの森」のほか、カフェやガーデンショップもあり、4月下旬から10月上旬のオープン期間は多くの人でにぎわう観光スポットです。
森の花園
約900品種の草花が植栽された「森の花園」。「大雪な庭」「四季のすみか」「花の泉」「カムイミンタラ」「親しみの庭」という5つのテーマで構成され、テーマやシーズンごとに異なる表情を楽しむことができます。
森の迎賓館
「森の迎賓館」は起伏のある地形と、自生する草花を生かして造られた森のおもてなしエリア。「森のゲートウェイ」「森の絨毯」「森のリビング」「癒しの谷」「森の博物館」と題された5つのゾーンでは、森林浴をしているようなくつろぎの時間を過ごすことができます。
遊びの森
秘境のような深い森の中に広がる「遊びの森」。「遊び」をテーマにした交流体験棟「チュプ」や、「森の木琴」「鳥の目になるテラス」「リング型揺れるベンチ」などが設置された個性的なエリアで、自然を存分に満喫できます。
上川大雪カフェ「緑丘茶房」、ガーデンショップ
景色を眺めながら、ドリンクや軽食が食べられるカフェ「緑丘茶房(りょっきゅうさぼう)」も。
隣接するガーデンショップでは、「癒しの庭」がコンセプトのナチュラル雑貨などが販売されています。
大雪 森のガーデン
- 住所
- 北海道上川郡上川町字菊水841-8
- 営業時間
- 4月下旬~10月中旬 9:00~17:00(最終入園16:00)
- 入場料
- 大人(高校生以上)1,000円、中学生500円、小学生以下無料
※4月下旬〜5月中旬までは無料期間あり - アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから約10分
【バス】「森のテラスバスタッチ」から無料シャトルバスで約20分(例年6~9月のみの期間限定運行) - 詳細
- 大雪 森のガーデン|北海道上川町
層雲峡を代表する2つのイベントも必見
美しく雄大な自然環境を生かした芸術性あふれるイベントが行われるのも、層雲峡の見どころのひとつ。その中でも特色のある2つのイベントをご紹介します。
層雲峡温泉氷瀑まつり
札幌雪まつり、旭川冬まつりと並ぶ北海道三大冬祭りのひとつ「層雲峡温泉 氷瀑(ひょうばく)まつり」。氷が主役のイベントで、毎年1月下旬から3月中旬まで、石狩川の河川敷を利用した約1万平米の会場で開催されます。
メインは層雲峡の断崖をイメージさせる、幾重にも連なった巨大な氷柱。そのほかにも、彫刻家がチェーンソーや、ツルハシなどを用いて手掛けた見事な彫刻や、大小約30基ものオブジェが立ち並びます。
夜になると氷像は7色にライトアップ。思わず寒さを忘れてしまうほど、美しい光景です。
ほかにも、高さ約13メートルの「氷の展望台」や、氷の洞窟を歩いて進む「氷のトンネル」、地元の「上川大雪酒造」のお酒や酒粕ココアが飲める「北の氷酒場」、子どもに人気の「氷のすべり台」、氷でできた神玉にお賽銭が張りつくと御利益があると言われている「氷瀑神社」など、見どころが満載。
開催期間中は花火大会をはじめ、ステージイベントなど催しも盛りだくさんです。
層雲峡温泉氷瀑まつり
- 会場
- 北海道上川郡上川町層雲峡温泉(特設会場)
- 開催期間
- 2025年1月25日~3月9日
- 開催時間
- 17:00~21:30(最終入場21:15)
※土・日・祝日、および2025年2月1~11日は11:00~21:30(最終入場21:15) - 料金
- 入場料1,000円
- アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから約25分
【電車・バス】JR上川駅からバス「層雲峡」下車、徒歩約5分 - 詳細
- 層雲峡温泉 氷瀑まつり2025
奇跡のイルミネート
層雲峡温泉街にある散策路「紅葉谷」。ここでは、例年9月中旬から10月中旬頃まで紅葉のライトアップと、インタラクティブアートのイベント「奇跡のイルミネート」が開催されます。
「インタラクティブ」とは「観客参加型」という意味。人の動きに合わせて反応する光や花火などのプロジェクションマッピングを見ながら、夜の温泉街を散歩することができます。自然と光が融合したアートを堪能しましょう。
奇跡のイルミネート
- 会場
- 北海道上川郡上川町層雲峡 紅葉谷(層雲峡温泉内)
- 開催時期
- 2024年9月14日~10月13日
- 開催時間
- 18:00~21:00(最終入場20:30)
- 入場料
- 入場料500円(6歳以上)
- アクセス
- 【車】上川層雲峡ICから約25分
【電車・バス】JR上川駅からバス「層雲峡」下車すぐ - 公式サイト
- 奇跡のイルミネート7
断崖絶壁の切り立つ山々や大雪山の雄大な景色は、四季を問わずいつ訪れても見どころが満載。近年では「大雪 森のガーデン」をはじめ、エリアには酒造やカフェなども増えてきています。温泉もあり、さまざまな楽しみが味わえる層雲峡を、ぜひ訪れてみてください。
取材・文/柏崎 直人 撮影/加藤ミチロウ