子供の頃、好きで見ていたTVアニメの1つが「空手バカ一代」【動画】だった。伝説の空手家・大山倍達の半生を描いた伝記的作品で、フィクションの部分も少なからず在った様だが、空手に賭ける熱い思いがひしひしと伝わって来たし、主人公の飛鳥拳を真似て、“空手遊び”を良くしたっけ。
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他人に勝つ事なんて、どうでも良い。自分の中に、絶対の強さを培え。
松村宗棍(まつむら そうこん)は13歳の頃、友達を虐める少年達を打ち倒した。其れによって、高名な武術家・照屋(てるや)に武の才を見出だされ、彼に弟子入りする。
元服を迎えて首里王府の役人となるが、強さが評判を呼んで、国王に御前試合への参加を命じられ、思い掛けず、琉球屈指の強豪達に挑む事となる。
国王との交流、“最強”の妻との出会い、好敵手との決闘、猛牛との闘い、弟子の自害・・・様々な出来事に直面し乍ら、彼は本当の強さを追い求めて行く。
然し、琉球王国崩壊の足音が聞こえ始めていた。
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今野敏氏の小説「宗棍」は、「琉球空手の礎を築き、幕末、琉球王国が滅び行く時代に、国王の武術指南役を務めた松村宗棍。」の半生を描いた作品。空手の有段者で在り、「空手道今野塾」を主宰する著者は、「琉球空手シリーズ」等の武術物も十八番としているが、今回読んだ「宗棍」は琉球空手の礎を築いた人物を描いている事からも、彼にとって集大成的な作品と言える。
琉球王国は、「1429年から1879年迄の450年間、琉球諸島を中心に存在した王国。」だ。「1609年に薩摩藩が『琉球侵攻』を行って以降、琉球王国はずっと薩摩藩の支配下に在り、1879年4月の太政官通達によって大隅国に編入され、日本の領域となった。」という歴史を持つ。
アイヌの人々と同様、琉球王国の人々も“大和民族”から差別的扱いを受けて来た。そんな中、琉球王国で生まれた宗棍は琉球空手の礎を築いて行くのだが、中国武術で在る“唐手”だけでは無く、薩摩の示現流等、幾つかの武術を習い、そしてミキシングして行く過程が、実に興味深い。
武術に関する知識は無いに等しい自分にとって、一番の収穫は「『琉球空手は、中国武術の影響を最も受けている。』と思い込んでいたけれど、実は薩摩の示現流の影響が色濃い。」という事実。「剣術の示現流が、琉球空手に影響を強く与えた!?」と意外に思ったが、作品を読んで“意味合い”が理解出来た。
総合評価は、星3.5個とする。