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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日本海側で相次ぐ北朝鮮極超音速滑空兵器実験,北朝鮮が開発を進める極超音速滑空兵器は何を狙ているのか

2024-06-29 07:00:29 | 先端軍事テクノロジー
■日本海の緊張
 新しい脅威の性能について日米韓はレーダー情報を筆頭に慎重に情報収集を進めている段階ですが。

 北朝鮮が開発を進める極超音速滑空兵器は何を狙ているのか、北朝鮮はこのところ連続してミサイル実験を実施しており、そのうち一つは韓国国内から発射実験の上昇段階が撮影され韓国KBSニュースなどで報道されるところとなっています。この極超音速滑空兵器は弾道ミサイルに代わる打撃力になると考えられている次世代の誘導兵器となっています。

 極超音速滑空兵器、これは弾道ミサイルがロケットを用いて成層圏や宇宙空間まで到達する放物線上の弾道を描いて目標に接近し、この上昇高度が高ければ高い程に落下速度が増大することとなり、迎撃が困難となります。しかし弾道を飛行する為、宇宙空間でその進路上を待ち伏せるキネティック弾頭や迎撃ミサイル高精度化で迎撃は可能となりつつある。

 イランによるイスラエル弾道ミサイル攻撃の際、アメリカ海軍イージス艦が宇宙空間を飛翔するイラン中距離弾道弾を撃墜に成功しており、これは中距離弾道弾の実戦における初めての迎撃成功事例となり、1990年代や2000年代初頭には早過ぎて迎撃不能といわれた弾道ミサイル迎撃能力が、短距離弾道弾だけでなく中距離弾道弾にも有効と証明しました。

 極超音速滑空兵器は、鏃状やサーフボード状の弾頭を採用し、放物線を描かず不規則に機動することにより、中間部分で待ち構える弾道ミサイル迎撃システムを回避し目標を攻撃する装備となっていますが、軌道により強烈な負荷が掛かるとともに機動する事で正常な軌道を外れ命中精度が低下するために誘導装置技術が必要で北朝鮮は開発に苦闘している。

 しかし、もともと極超音速滑空兵器はロシアが先行して開発を進めていたもので、特にロシアとアメリカの対立が決定的となった、2007年決定の東欧ミサイル防衛システム配備、特にイージスアショア陸上配備ミサイル防衛システムなど、ミサイル防衛システムを破壊し、続く弾道ミサイルによる攻撃を容易とする為の第一撃であると理解されていましたが。

 イージスアショア陸上配備ミサイル防衛システムの建設中止、日本の場合はもともと2025年までに東北地方と西日本にイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムを建設する予定があり、極超音速滑空兵器はこのイージスアショア等に向けられる懸念がありました、が、迎撃ミサイルブースター落下問題からこの計画は中止され、建設されていません。

 イージスシステム搭載艦、ミサイル防衛の主力はイージス艦であり、固定式で動く事が出来ず人工衛星は勿論観光客からも位置が暴露するイージスアショアとは異なり、沖合で行動するイージス艦は攻撃側にその位置を把握する事が難しく、30ノットで移動するイージス艦は常に移動する為、命中させるには速度を落とさなければ照準が出来ません。

 韓国に配備されているTHAAD高高度終末段階迎撃システムなども、地上には配備されていますが自走可能であり固定式のイージスアショアとはことなり、陣地変換は容易で、例えばクラスター弾頭などにより広範囲を加害半径に含める弾頭を用いた場合でも、移動式の地上配備型ミサイル防衛システムは、捕捉も破壊も容易でないのは現実というもの。

 核弾頭を搭載し指揮中枢、日本であれば首相官邸や横田基地の在日米軍司令部、韓国であれば大統領府の置かれた国防省か青瓦台、等を狙う用途という運用も考えられますが。北朝鮮は現段階で極超音速滑空兵器開発を進めていますが完成にはいたっていません、実用的兵器として核兵器を用いるのか、別の意図があるのか、慎重に見てゆく必要があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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