JP3817457B2 - 船舶用内燃機関の逆転防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は船舶用内燃機関の逆転防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶用内燃機関にあっては、機関の回転はクラッチを介してプロペラに接続され、そのプロペラを回転させて船舶を前進方向あるいは後進方向に推進させる。クラッチは、通例、内燃機関に接続されて一体に回転するドライブギヤと、ドライブギヤに噛合してプロペラシャフト上で相反する方向に回転する前進ギヤと後進ギヤと、その間をプロペラシャフトと一体に回転するドッグ(スライドクラッチ)からなり、ドッグをスライドさせて前進ギヤと後進ギヤのいずれかに噛合させることで機関の回転をプロペラに伝達して船舶を推進させている。
【0003】
このように、船舶用内燃機関は機関の回転が簡易な機構のクラッチを介してプロペラに接続されることから、発進時あるいは停止のように回転数が低下して機関の出力が低下した場合など、プロペラから内燃機関が駆動されて機関の回転が逆転する事態が生じ得る。
【0004】
このように、内燃機関の逆転とは、機関出力軸(クランクシャフト)が所期の方向と逆の方向に回転して排気管が吸気管として作用する現象を意味するが、かかる内燃機関の逆転が生じると、バックファイヤが生じ易くなると共に、船舶用内燃機関にあっては水中に開口する排気管から海水(湖水)を吸引して気筒が被水するなどの不都合が生じることから、逆転を検出して防止することが望ましい。
【0005】
その点で、特開昭62−182463号公報において、2サイクル2気筒の内燃機関において、各気筒のBTDC10度で基準信号(TDC信号)を発生するセンサを配置すると共に、TDC信号間隔を12等分した15度ごとにクランク角度信号を発生するセンサを設け、TDC信号が生じるたびにリセットされつつ、次のTDC信号が生じるまでの間のクランク角度信号をカウントしてカウンタを設け、そのカウンタのカウント値が12個であるか否か判別することによって内燃機関の逆転を検出(判別)し、逆転が検出されたとき、内燃機関を停止する内燃機関の逆転防止装置が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術は2サイクル2気筒の内燃機関を前提とすることから、3気筒以上の気筒を備える4サイクルの内燃機関、例えば6気筒のような気筒数およびサイクル数において多い多気筒内燃機関にそのまま応用するとき、機関の逆転を精度良く検出して防止することは困難である。
【0007】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、3気筒以上の複数個の気筒を備える4サイクルの船舶用内燃機関において内燃機関の逆転を精度良く検出して防止するようにした船舶用内燃機関の逆転防止装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を解決するために、この発明は請求項1項において、3個以上の複数個の気筒を備える4サイクルの内燃機関からなり、船舶に搭載され、プロペラを回転させて前記船舶を推進させる船舶用内燃機関の逆転を検出して防止する装置において、前記内燃機関の気筒を判別する気筒判別手段、所定クランク角度ごとに所定個数のクランク角度信号を発生するクランク角度信号発生手段、前記クランク角信号発生手段が発生するクランク角度信号をカウントするカウンタ、前記気筒判別手段によって気筒が判別されたとき、前記カウンタのカウント値が前記所定個数の倍数であるか否か判断するカウント値倍数判断手段、および前記カウント値倍数判断手段によって前記カウント値が前記所定個数の倍数ではないと判断されたとき、前記内燃機関が逆転したと判断して前記内燃機関を停止、より具体的には点火および燃料噴射を停止する機関停止手段を備えると共に、前記気筒判別手段は、前記内燃機関のTDCあるいはその付近の位置からなる所定位置において前記複数個の気筒の内、少なくとも1個の気筒を除く複数の気筒について第1の信号を発生する第1のTDCセンサ、および前記所定位置において前記複数個の気筒の内、前記除かれた気筒以外の少なくとも1個の気筒を除く複数の気筒について第2の信号を発生する第2のTDCセンサを備えると共に、前記第1、第2のTDCセンサが発生する第1、第2の信号に基づいて前記内燃機関の気筒を判別する如く構成した。
【0009】
気筒が判別されたとき、カウント値が所定個数の倍数であるか否か判断し、倍数ではないと判断されたとき、内燃機関が逆転したと判別して停止する機関停止手段を備える如く構成したので、3気筒以上の4サイクルの船舶用内燃機関においても機関の逆転を精度良く検出して防止することができる。また、3気筒以上の4サイクルの船舶用内燃機関においても気筒を正確に判別することができ、よって一層精度良く機関の逆転を検出して防止することができる。
【0010】
請求項2項にあっては、前記カウント値倍数判断手段は、前記内燃機関の回転数が所定回転数以下の場合、前記カウンタのカウント値が前記所定個数の倍数であるか否か判断する如く構成した。
【0011】
内燃機関の回転数が所定回転数以下の場合、カウンタのカウント値が所定個数の倍数であるか否か判断する如く構成したので、逆転検出を逆転の生じ得る回転領域に限定することができて構成を簡易にすることができると共に、誤検出を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係る船舶用内燃機関の逆転防止装置を説明する。
【0015】
図1はその船舶用内燃機関の逆転防止装置を全体的に示す概略図であり、図2は図1の部分説明側面図である。
【0016】
図1および図2において符合10は前記した機関、プロペラシャフト、プロペラなどが一体化された推進機関(以下「船外機」という)を示す。船外機10は、図1に示す船舶(小型船)12の船尾にクランプユニット14(図2に示す)を介して装着される。
【0017】
図2に示す如く、船外機10は内燃機関(以下「エンジン」という)16を備える。エンジン16は火花点火式のV型6気筒4サイクルガソリンエンジンからなり、左右のバンクに3気筒ずつ配置される。エンジン16は水面上に位置し、エンジンカバー20で覆われて船外機10の内部に配置される。エンジンカバー20で被覆されたエンジン16の付近には、マイクロコンピュータからなる電子制御ユニット(以下「ECU」という)22が配置される。
【0018】
図1に示す如く、船舶12の操縦席付近にはステアリングホイール24が配置される。操縦者によって入力されたステアリングホイール24の回転は、図示しないステアリング機構を介して船尾に取り付けられたラダー(図示せず)に伝えられ、進行方向を決定する。また操縦席の右側にはスロットルレバー26が配置されると共に、その付近にはスロットルレバー位置センサ30が配置され、操縦者によって操作されるスロットルレバー26の位置に応じた信号を出力する。
【0019】
さらに、スロットルレバー26に隣接してシフトレバー32が配置されると共に、その付近にはニュートラルスイッチ34が配置され、操縦者によって操作(シフト)されたシフトレバー32がニュートラル位置にあるときオン信号を、前進(あるいは後進)位置にあるときオフ信号を出力する。上記したスロットルレバー位置センサ30およびニュートラルスイッチ34の出力は、信号線30a,34aを介してECU22に送られる。
【0020】
エンジン16の出力は、クランクシャフトおよびドライブシャフト(共に図示せず)を介して船外機10の水面下位置に配置されたクラッチ36に接続される。クラッチ36は、プロペラシャフト(図示せず)を介してプロペラ40に伝達される。
【0021】
クラッチ36は公知のギヤ機構からなり、図示は省略するが、エンジン16が回転するときにドライブシャフトと一体に回転するドライブギヤと、ドライブギヤと噛合してプロペラシャフト上で相反する方向に空転する前進ギヤと後進ギヤ、およびその間をプロペラシャフトと一体に回転するドッグ(スライドクラッチ)と備える。
【0022】
ECU22は、信号線34aを通じて送られたニュートラルスイッチ34の出力に応じ、図示しない駆動回路を通じてアクチュエータ(電動モータ)42を意図されたシフト位置を実現するように駆動する。アクチュエータ42の駆動は、シフトロッド44を介してドッグに伝えられる。
【0023】
シフトレバー32がニュートラル位置に操作されると、エンジン16とプロペラシャフトとの回転は絶たれると共に、前進あるいは後進位置に操作(シフト)されると、ドッグは前進ギヤあるいは後進ギヤに噛合させられ、エンジン16の回転はプロペラシャフトを介してプロペラ40に伝達され、プロペラ40を前進方向あるいはそれと反対の後進方向に回転させて船舶12を推進(前進あるいは後進)させる。
【0024】
次いで図3および図4を参照してエンジン16について説明する。
【0025】
図3に示すように、エンジン16は吸気管46を備え、エアクリーナ(図示せず)を介して吸入された空気は、スロットルバルブ50を介して流量を調整されつつ、正面視V字状を呈する左右バンクごとに設けられたインテークマニホルド52を流れ、インテークバルブ54に達する。インテークバルブ54の付近にはインジェクタ56(図3で図示省略)が配置され、ガソリン燃料を噴射する。
【0026】
インジェクタ56は、左右バンクごとに設けられた2本の燃料供給管58を介してガソリン燃料を貯蔵する燃料タンク(図示せず)に接続される。2本の燃料供給管58の中途にはそれぞれ燃料ポンプ60a,60bが介挿され、リレー回路62を介して電動モータ(図示せず)で駆動されてガソリン燃料をインジェクタ56に圧送する。尚、符合64は、蒸発燃料分離装置を示す。
【0027】
流入空気は噴射されたガソリン燃料と混合して混合気を形成し、各気筒燃焼室(図示せず)に流入し、点火プラグ66(図3で図示省略)で点火されて燃焼し、ピストン(図示せず)を下方に駆動する。よって生じたエンジン出力は、前記したクランクシャフトを介して取り出される。他方、燃焼後の排気ガスはエキゾーストバルブ68を通って左右バンクごとにエキゾーストマニホルド70を流れ、エンジン外に放出される。
【0028】
図示の如く、吸気管46はスロットルバルブ50の配置位置の上流で分岐すると共に、スロットルバルブ50の下流位置で吸気管46に再び接続される、二次空気供給用の分岐路(通路)72を形成する。分岐路72は二次空気制御バルブ(以下「EACV」という)74を備える。EACV74は前記したECU22に接続される。ECU22は通電指令値を演算してEACV74に供給し、EACV74を駆動して分岐路72の開度を調整する。このように、分岐路(通路)72とEACV74からなり、二次空気制御バルブの開度に応じた二次空気を供給する二次空気供給装置80が設けられる。
【0029】
さらに、スロットルバルブ50は、アクチュエータ(パルスモータ)82に接続される。アクチュエータ82はECU22に接続される。ECU22は前記したスロットルレバー位置センサ30の出力に応じて通電指令値を演算し、図示しない駆動回路を介してアクチュエータ82に供給し、スロットル開度THを調節する。
【0030】
より具体的には、アクチュエータ82は、スロットルバルブ50を収容するスロットルボディ50aに、その回転シャフト(図示せず)がスロットルバルブシャフトと同軸となるように、直接取り付けられる。
【0031】
エンジン16においてインテークバルブ54およびエキゾーストバルブ68の付近には可変バルブタイミング機構84が設けられる。可変バルブタイミング機構84は、エンジン回転数および負荷が比較的高いときソレノイドを介してバルブタイミングおよびリフト量を比較的大きい値(HiV/T)に切り替えると共に、エンジン回転数および負荷が比較的低いとき、バルブタイミングおよびリフト量を比較的小さい値(LoV/T)に切り替える。
【0032】
さらに、エンジン16の排気系と吸気系とはEGR通路86で接続されると共に、その中途にはEGR制御バルブ90が介挿され、所定の運転状態において排気ガスの一部を吸気系に還流させる。
【0033】
アクチュエータ82にはスロットル開度センサ92が接続され、スロットルバルブシャフトの回転に応じてスロットル開度THに比例した信号を出力する。また、スロットルバルブ50の下流には絶対圧センサ94が配置され、吸気管内絶対圧PBA(エンジン負荷)に応じた信号を出力する。また、エンジン16の付近には大気圧センサ96が配置され、大気圧PAに応じた信号を出力する。
【0034】
さらに、スロットルバルブ50の下流には吸気温センサ100が配置され、吸入空気温度TAに比例した信号を出力する。また、左右バンクの、サーモススタット(図示せず)を介して冷却水通路(図示せず)には温度センサ102a,102bが1個ずつ配置されると共に、エキゾーストマニホルド70の一方には温度センサ102cがもう1個配置され、エンジン温度(機関温度)TOH(エンジン冷却水温TW)に比例した信号を出力する(温度センサ102a,102b,102cは水温センサを兼ねる)。
【0035】
また、エキゾーストマニホルド70にはO2 センサ110が配置され、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する。また、気筒ブロック104の適宜位置にはノックセンサ112が配置され、ノックに応じた信号を出力する。
【0036】
図4を参照してセンサおよびECU22の入出力の説明を続ける。尚、図3ではセンサおよびその信号線などの図示を一部省略した。
【0037】
搭載バッテリ114に接続された2個の燃料ポンプ60a,60bのモータ通電回路の途中には検出抵抗116a,116bが介挿され、その両端電圧は信号線118a,118bを介してECU22に入力される。ECU22は電圧降下を検知して通電電流を検出し、燃料ポンプ60a,60bの異常を判断する。
【0038】
また、クランクシャフトの付近には第1のTDCセンサ120および第2のTDCセンサ122ならびにクランク角センサ(クランク角度信号発生手段)124が配置され、各気筒のピストン上死点(TDC)あるいはその付近の所定位置、より具体的にはBTDC10度で信号(パルス信号)を発生すると共に、所定クランク角度、より具体的には30度ごとにクランク角度信号(パルス信号)を出力し、ECU22に送出する。ECU22は、第1、第2のTDCセンサ120,122の出力から後述するように気筒を判別すると共に、クランク角センサ124の出力からエンジン回転数NEを算出する。
【0039】
さらに、EGR制御バルブ90の付近にはリフトセンサ130が配置され、EGR制御バルブ90のリフト量(バルブ開度)に応じた信号を出力してECU22に送出する。
【0040】
さらに、ACG(オルタネータ。図示せず)のF端子(ACGF)134の出力はECU22に入力されると共に、可変バルブタイミング機構84の油圧回路(図示せず)には3個の油圧スイッチ136が配置され、検出油圧に応じた信号を出力してECU22に送出する。また、エンジン16の油圧回路(図示せず)には油圧スイッチ140が配置され、検出油圧に応じた信号を出力してECU22に送出する。
【0041】
ECU22は前記したようにマイクロコンピュータからなり、バックアップ用のEEPROM22aを備える。ECU22は上記した入力に従ってECU異常、オーバーヒート、油圧アラート、ACG異常などを検出し、146,148,150,152を点灯すると共に、ブザー154を鳴動させて警告する。
【0042】
次いで図示の船舶用内燃機関の逆転防止装置の動作を説明する。
【0043】
図5はその動作を示すフロー・チャート、図6はその動作を示すタイム・チャートである。尚、図示のプログラムはイグニション・スイッチ(図4に符号160で示す)がACC位置まで廻されたとき起動され、以後前記したクランク角度センサ124の出力で規定されるクランク角度30度ごとのパルスの立ち上がりで実行(ループ)される。
【0044】
図5フロー・チャートの説明に入る前に、図6タイム・チャートを参照してTDCセンサなどの出力を説明する。尚、一方のバンクに配置された3個の気筒を第1、第2、第3気筒とし、他方のバンクに配置された3個の気筒を第4、第5、第6気筒とするとき、点火(燃焼)順序は、第1、第4、第2、第5、第3、第6気筒とする。
【0045】
図6に示す如く、第1のTDCセンサ120(「TDC1」と示す)は、第2、第6、第1、第4気筒(換言すれば複数個(6個)の気筒の中、少なくとも1個の所定気筒、より正確には第3、第5気筒を除く気筒)についてBTDC10度で立ち上がるパルス信号(TDC信号)を出力する。また、第2のTDCセンサ122(「TDC2」と示す)は、第2、第5、第3、第6気筒(換言すれば少なくとも前記所定気筒を除く気筒)についてBTDC10度で立ち上がるパルス信号を出力する。
【0046】
また、クランク角センサ124は、第1、第2のTDCセンサ120,122の出力信号で規定される120度のクランク角度区間を4等分してなる30度ごとに立ち上がるパルス信号(クランク角度信号)を出力する。以下、第1、第2のTDCセンサ120,122が出力するパルス信号を「TDC1パルス」「TDC2パルス」というと共に、クランク角センサ124が出力するパルスを「クランク角パルス」という。
【0047】
図示の如く、クランク角度信号はTDC信号から所定角度だけリード側に遅れた角度で立ち上がるように構成されると共に、図5フロー・チャートはクランク角パルスの立ち上がりで実行されることから、図5フロー・チャートを実行するたびに、図6の末尾に示すようなTDC1、2のパターンを得ることができる。従って、パルスの有無を〇×で示すとき、2気筒分のパターンを得れば、気筒を判別(特定)することができる。
【0048】
上記を前提として図5フロー・チャートの処理を説明すると、S10において指定するF/S(フェールセーフ)が検知されたか否か判断し、否定されるときはS12に進み、フラグF.TD1BRのビットが1にセットされているか否か判断する。
【0049】
このフラグは図示しない別ルーチンにおいて第1のTDCセンサ120に断線故障が生じたときそのビットが1にセットされる。S12で否定されるときはS14に進み、第2のフラグF.TD2BRのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグも図示しない別ルーチンにおいて第2のTDCセンサ122に断線故障が生じたときそのビットが1にセットされる。
【0050】
S14でも否定されるときはS16に進み、フラグF.CYLINIのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグは図示しない別ルーチンにおいて前記した気筒の判別(特定)が終了したとき、そのビットが1にセットされる。
【0051】
今、図6のタイム・チャートに(1) で示す位置で図5のプログラムが実行されたとすると、S16の判断は否定されてS18に進み、フラグF.1STTDCのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグはTDCパルス入力確認フラグであり、図示しない別ルーチンでTDC1パルス(あるいはTDC2パルス)が初めて入力(発生)されたときそのビットが1にセットされる。
【0052】
図6の(1) の位置で図5のプログラムが実行されたとすると、S18では肯定されてS20に進み、そのフラグのビットを0にリセットする。次いでS22に進み、カウンタ(アップカウンタ。後述)CRKCAの値を0にリセットし、S24に進み、フラグF.CRK4BAI(後述)のビットを0にリセットしてプログラムを終了する。尚、S10からS14のいずれかで肯定されるときは、S16からS20をスキップする。
【0053】
プログラムは図6の(2) で再び実行され、S16に進むとき、その判断は同様に否定されてS18に進み、ここでの判断は否定されてS26に進み、TDCパルスのカウント処理を行う。
【0054】
図7はその処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0055】
S100で再びF.CYLINIのビットが1にセットされているか否か判断し、否定されて以降の処理をスキップする。以下、プログラムは、図6に(3) (4) で示す位置で実行されるたびに同様の処理が行われる。
【0056】
プログラムが図6タイム・チャートの(5) で示す位置で実行されるとき、その直前の時点Aにおいて2気筒分のパターンを得て気筒の判別(特定)が終了していることから、図5フロー・チャートのS16で肯定されてS26に進む。そして図7のサブルーチン・フロー・チャートのS100でも肯定されてS102に進み、フラグF.TDC1のビットが1にセットされているか否か判断する。
【0057】
このフラグは図示しない別のルーチンにおいてTDC1がTDC1パルスを出力するとき、そのビットが1にセットされる。(5) でプログラムが実行されるとき、その判断は肯定されてS104に進み、カウンタcTDC1ABを1つインクリメントする。図6の末尾に示すように、このカウンタは、TDC1パルスが出力されるたびにインクリメントされる。
【0058】
次いでS106に進み、フラグF.TDC2のビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグも図示しない別のルーチンにおいてTDC2パルスが出力されるとき、そのビットが1にセットされることから、その判断も肯定されてS108に進み、カウンタcTDC2ABを1つインクリメントする。図6の末尾に示すように、このカウンタも、TDC2パルスが出力されるたびにインクリメントされる。
【0059】
尚、プログラムが図6タイム・チャートの(12)で実行されるときなど、S102の判断は否定されてS110に進み、カウンタcTDC1ABのカウント値が4に達したか否か判断し、肯定されるときはS112に進み、カウンタ値を0にリセットすると共に、否定されるときはS112をスキップする。
【0060】
同様に、プログラムが図6タイム・チャートに(8) で実行されるときなど、S106の判断は否定されてS114に進み、カウンタcTDC2ABのカウント値が4に達したか否か判断し、肯定されるときはS116に進み、カウンタ値を0にリセットすると共に、否定されるときはS116をスキップする。
【0061】
図5フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS28に進み、前記したカウンタCRKCAを1つインクリメントする。尚、このカウンタはクランク角パルスをカウントするものであり、図6タイム・チャートに示す如く、気筒判別が終了した時点から、クランク角パルスの立ち上がりでプログラムが実行されるたびにS28でインクリメントすることにより、クランク角パルス(の個数)をカウントする。図6タイム・チャートから明らかな如く、このカウンタ値はTDC1パルスあるいはTDC2パルスでリセットされることがない。
【0062】
次いでS30に進み、カウンタCRKCAの値は4の倍数か否か判断する。プログラムが図6タイム・チャートの(5) から(8) 位置などで実行されたとき、その判断は否定されてS32に進み、前記したフラグF.CRK4BAIのビットを0にリセットすると共に、(9) などでプログラムが実行されたとき、その判断は肯定されてS34に進み、前記したフラグF.CRK4BAIのビットを1にセットする。
【0063】
次いでS36に進み、カウンタCRKCAの値がオーバーフローしたか否か判断し、肯定されるときはS38に進み、そのカウンタの値を0にリセットする。尚、S36で否定されるときはS38をスキップする。次いでS40に進み、前記したフラグF.TDC1あるいはF.TDC2のビットが1にセットされているか否か判断する。
【0064】
プログラムが図6タイム・チャートの(12)で実行された場合など、その判断は否定されてS42に進み、検出されたエンジン回転数NEを所定値NEABN(具体的には650rpm)と比較し、検出されたエンジン回転数NEが所定値NEABNを超えるか否か判断する。検出されたエンジン回転数NEが所定値NEABNを超えると判断されるときは以降の処理をスキップすると共に、検出されたエンジン回転数NEが所定値NEABN以下と判断されるときはS44に進みフラグF.CRK4BAIのビットが1にセットされているか否か判断する。
【0065】
(12)などTDCパルス間隔の間で実行されるときはカウンタの値は4の倍数ではなく、フラグF.CRK4BAIのビットは1にセットされないのが通例であることから、S44で否定されるときは正常であってエンジン16に逆転が生じていないと判別してプログラムを終了する。
【0066】
他方、図6タイム・チャートの(13)でプログラムが実行される場合など、S40で肯定されてS46に進み、TDCパルスのパターン処理を行う。
【0067】
図8はその処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0068】
S200で再びF.CYLINIのビットが1にセットされているか否か判断し、否定されて以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS202に進み、前記したカウンタcTDC1ABの値が1で、かつcTDC2ABの値が4であるか否か、即ち、図6タイム・チャートの末尾に示すようにTDC付近にあるのが第6気筒と判別できるか否か判断し、肯定されるときはS204に進み、検出されたエンジン回転数NEを前記した所定値NEABNと比較する。
【0069】
S204で検出されたエンジン回転数NEが前記した所定値NEABNを超えると判断されるときはプログラムを終了すると共に、検出されたエンジン回転数NEが前記した所定値NEABN以下と判断されるときはS206に進み、フラグF.CRK4BAIのビットが1であるか否か、換言すれば、クランク角パルスのカウント値が4の倍数であるか否か判断する。
【0070】
そして、S206で肯定されるときは正常であってエンジンの逆転が生じていないと判別してプログラムを終了すると共に、否定されるときはエンジン16の逆転が生じたと判断してS208に進み、フラグF.ABNORMALのビットを1にセットする。これにより、後述する処理においてエンジン16が停止され、それ以上のエンジン16の逆転が防止される。
【0071】
尚、図8フロー・チャートにおいてS202で否定されているときはS210からS218に進み、同様にTDC付近にある気筒を判別できるか否か判断し、肯定されるときはS204に進むと共に、全てで否定されるときはS220に進み、検出されたエンジン回転数NEを前記した所定値NEABNと再び比較する。
【0072】
S220で検出されたエンジン回転数NEが前記した所定値NEABNを超えると判断されるときはプログラムを終了すると共に、検出されたエンジン回転数NEが前記した所定値NEABN以下と判断されるときはS208に進み、フラグF.ABNORMALのビットを1にセットする。
【0073】
図5フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS48に進み、検出されたエンジン回転数NEが前記した所定回転数NEABN以下であると判断されるとき、S50に進み、前記したフラグF.CRK4BAIのビットが1であるか否か判断する。そしてS50で肯定されるときは正常と判別してプログラムを終了すると共に、否定されるときは逆転が生じたとしてS52に進み、フラグF.ABNORMALのビットを1にセットする。これは、S44で肯定されるときも同様である。
【0074】
次いで、図9フロー・チャートを参照してエンジン停止処理について説明する。尚、図示のプログラムは、所定の時間ごとに実行される。
【0075】
先ずS300において前記したフラグF.ABNORMALのビットが1にセットされているか否か判断し、否定されるときはS302に進み、フラグF.STMODのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグは、図示しない別ルーチンにおいてエンジン16が始動中にあるとき、そのビットが1にセットされる。
【0076】
S302で肯定されるときはS304に進み、エンジン停止時間を規定するタイマ(ダウンカウンタ)tmREABに所定値TMSTREVをセットしてダウンカウントを開始すると共に、否定されるときはS306に進み、そのタイマに第2の所定値TMKIHREVをセットしてダウンカウントを開始する。
【0077】
S300で肯定されるときはS308に進み、点火停止要求フラグF.RECUTIと燃料噴射停止要求フラグF.RECUTFのビットを1にセットする。これにより、図示しない別のルーチンにおいてエンジン16において全ての気筒について点火と燃料噴射が停止され、エンジン16は速やかに停止する。
【0078】
次いでS310に進み、前記したタイマtmREABの値が0に達したか否か判断し、否定されるときはS312に進み、フラグF.MEOFのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグは、図示しない別のルーチンにおいてエンジン16が停止したとき、そのビットが1にセットされる。
【0079】
S312で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS314に進む。これは、S310で肯定されるときも同様である。S314においてはエンジン停止時間が経過したことから、前記したフラグF.ABNORMALのビットを0にリセットする。次いでS316に進み、前記した点火停止要求フラグと燃料噴射停止要求フラグのビットを0にリセットし、S318に進み、前記したタイマtmREABに0をセットして終わる。
【0080】
この実施の形態は、気筒が判別されたとき、カウント値が所定個数の倍数であるか否か判断し、倍数ではないと判断されたとき、エンジン16が逆転したと判別して停止する如く構成したので、6気筒の4サイクルの船舶用エンジン16においても、その逆転を精度良く検出して防止することができる。
【0081】
さらに、エンジン回転数NEが所定回転数NEABN以下の場合のみ、カウンタのカウント値が所定個数の倍数であるか否か判断する如く構成したので、逆転検出を逆転の生じ得る回転領域に限定することができて構成を簡易にすることができると共に、誤検出を防止することができる。
【0082】
この実施の形態にあっては上記の如く、3個以上の複数個の気筒を備える4サイクルの内燃機関(エンジン)16からなり、船舶12に搭載され、プロペラ40を回転させて前記船舶を推進させる船舶用内燃機関の逆転を検出して防止する装置において、前記内燃機関の気筒を判別する気筒判別手段(第1、第2のTDCセンサ120,122,ECU22,S44,S202,S210からS218)、所定クランク角度ごとに所定個数(4個)のクランク角度信号を発生するクランク角度信号発生手段(クランク角センサ124,ECU22)、前記クランク角信号発生手段が発生するクランク角度信号をカウントするカウンタ(CRKCA,ECU22,S28)、前記気筒判別手段によって気筒が判別されたとき、前記カウンタのカウント値が前記所定個数(4個)の倍数であるか否か判断するカウント値倍数判断手段(ECU22,S44,S50,S206)、および前記カウント値倍数判断手段によって前記カウント値が前記所定個数の倍数ではないと判断されたとき、前記内燃機関が逆転したと判断して前記内燃機関を停止、より具体的には点火および燃料噴射を停止する機関停止手段(ECU22,S42,S44,S48からS52,S206,S208,S220,S300からS318)を備えると共に、前記気筒判別手段は、前記内燃機関のTDCあるいはその付近の位置からなる所定位置において前記複数個の気筒の内、少なくとも1個の気筒を除く複数の気筒について第1の信号を発生する第1のTDCセンサ120、および前記所定位置において前記複数個の気筒の内、前記除かれた気筒以外の少なくとも1個の気筒を除く複数の気筒について第2の信号を発生する第2のTDCセンサ122を備えると共に、前記第1、第2のTDCセンサが発生する第1、第2の信号に基づいて前記内燃機関の気筒を判別する(ECU22,S46,S202,S210からS218)如く構成した。
【0083】
また、前記カウント値倍数判断手段は、前記内燃機関の回転数が所定回転数以下の場合、前記カウンタのカウント値が前記所定個数の倍数であるか否か判断する如く構成した(ECU22,S42,S44,S48,S50,S204,S206,S208,S220)する如く構成した。
【0085】
尚、上記において、点火と燃料噴射を共に停止する例を示したが、一方のみでも良い。
【0086】
尚、上記において、この発明の実施の形態を船外機を例にとって説明したが、それに限られるものではなく、この発明は船内機関にも妥当する。
【0087】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、気筒が判別されたとき、カウント値が所定個数の倍数であるか否か判断し、倍数ではないと判断されたとき、その気筒について内燃機関が逆転したと判別して停止する機関停止手段を備える如く構成したので、3気筒以上の4サイクルの船舶用内燃機関においても機関の逆転を精度良く検出して防止することができる。また、3気筒以上の4サイクルの船舶用内燃機関においても気筒を正確に判別することができ、よって一層精度良く機関の逆転を検出して防止することができる。
【0088】
請求項2項にあっては、内燃機関の回転数が所定回転数以下の場合、カウンタのカウント値が所定個数の倍数であるか否か判断する如く構成したので、逆転検出を逆転の生じ得る回転領域に限定することができて構成を簡易にすることができると共に、誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施の形態に係る船舶用内燃機関の逆転防止装置を全体的に示す説明図である。
【図2】図1の部分説明側面図である。
【図3】図1に示すエンジンを詳細に示す概略図である。
【図4】図1に示す電子制御ユニット(ECU)の入出力を詳細に示すブロック図である。
【図5】図1に示す船舶用内燃機関の逆転防止装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図6】図5フロー・チャートの動作を説明するタイム・チャートである。
【図7】図5フロー・チャートのTDCパルスのカウント処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図8】図5フロー・チャートのTDCパルスのパターン処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図9】図5フロー・チャートと平行して行われる内燃機関の停止処理を示すフロー・チャートである。
【符号の説明】
10 推進機関(船外機)
12 船舶(小型船)
16 内燃機関(エンジン)
22 電子制御ユニット(ECU)
40 プロペラ
120 第1のTDCセンサ
122 第2のTDCセンサ
124 クランク角センサ(クランク角度信号発生手段)
Claims (2)
- 3個以上の複数個の気筒を備える4サイクルの内燃機関からなり、船舶に搭載され、プロペラを回転させて前記船舶を推進させる船舶用内燃機関の逆転を防止する装置において、
a.前記内燃機関の気筒を判別する気筒判別手段、
b.所定クランク角度ごとに所定個数のクランク角度信号を発生するクランク角度信号発生手段、
c.前記クランク角信号発生手段が発生するクランク角度信号をカウントするカウンタ、
d.前記気筒判別手段によって気筒が判別されたとき、前記カウンタのカウント値が前記所定個数の倍数であるか否か判断するカウント値倍数判断手段、
および
e.前記カウント値倍数判断手段によって前記カウント値が前記所定個数の倍数ではないと判断されたとき、前記内燃機関が逆転したと判断して前記内燃機関を停止する機関停止手段、
を備えると共に、前記気筒判別手段は、
f.前記内燃機関のTDCあるいはその付近の位置からなる所定位置において前記複数個の気筒の内、少なくとも1個の気筒を除く複数の気筒について第1の信号を発生する第1のTDCセンサ、
および
g.前記所定位置において前記複数個の気筒の内、前記除かれた気筒以外の少なくとも1個の気筒を除く複数の気筒について第2の信号を発生する第2のTDCセンサ、
を備えると共に、前記第1、第2のTDCセンサが発生する第1、第2の信号に基づいて前記内燃機関の気筒を判別することを特徴とする船舶用内燃機関の逆転防止装置。 - 前記カウント値倍数判断手段は、前記内燃機関の回転数が所定回転数以下の場合、前記カウンタのカウント値が前記所定個数の倍数であるか否か判断することを特徴とする請求項1項記載の船舶用内燃機関の逆転防止装置。
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