JP4001116B2 - 精密打ち抜き加工性および耐赤スケール疵性に優れる高張力熱延鋼板 - Google Patents
精密打ち抜き加工性および耐赤スケール疵性に優れる高張力熱延鋼板 Download PDFInfo
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Description
また、この発明は、赤スケール疵と呼ばれる表面欠陥の発生も併せて防止した高張力熱延鋼板を提案することを目的とする。
C:0.10mass%以下、
Si:0.01mass%未満、
Mn:1.5 mass%以下および
Al:0.20mass%以下
を含有するとともに、TiおよびNbのうちの1種または2種を
(Timass%+Nbmass%)/2 :0.05〜0.50mass%
の範囲で含有し、さらに
S:0.005 mass%以下、
N:0.005 mass%以下および
O:0.004 mass%以下
で、かつSmass%、Nmass%およびOmass%の合計が0.0100mass%以下を満たして含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成からなり、ミクロ組織が体積分率で95%以上のフェライト単相組織を有する表面性状の良好な引張り強さ:490MPa以上、局部伸び:10%以上の精密打ち抜き加工性および耐赤スケール疵性に優れる高張力熱延鋼板である。
そして、この発明の鋼板を用いれば、従来困難であった高張力鋼板の精密打ち抜き加工が可能となり、その後の工程における浸炭・窒化処理もしくは高周波焼入れ処理などを省略できるなど、その効果は多大である。
まず、成分組成の限定理由について記す。
Cは、TiCあるいはNbCとして析出強化させるために必要な成分である。しかし、その含有量が0.10mass%を超えると低温変態相が増加し、この発明の骨子であるフェライト相分率95%以上を確保することができず、精密打ち抜き加工時に破断面が発生し易くなる。したがって、その含有量の上限を0.10mass%とするが、析出強化の発現のためには0.0015mass%以上含有させることが好ましい。
Siは、固溶強化成分としてフェライトの強化を行う上では有用な成分であり、フェライト単相組織を維持しつつ高強度化が図れるので、精密打ち抜き加工性改善と高強度化とを両立させることができる。しかしながら、一方においてAr3変態点を上昇させる作用を通じて、TiCあるいはNbCの高温析出が促進され、析出粒子が粗大化されるので析出強化能が低下する。また、Siは、表面性状の観点からは赤スケール疵と呼ばれる表面欠陥を発生させる有害成分である。
そこで、この発明では、優れた表面性状を得るために、Siの混入を極力低減するものにしたが、混入するSi量が0.01mass%未満であれば許容される。
Mnは、置換型固溶強化成分としての作用とAr3変態点を低下させる作用とを通じ、TiCあるいはNbCを微細化させる効果によって、フェライト相の強化に寄与する成分である。しかし、 1.5mass%を超えて含有させるとAr3変態点が低下し過ぎてTiCあるいはNbCの析出を著しく抑制する方向に作用し、余剰のCが低温変態相を形成するようになり、精密打ち抜き加工性を劣化させる。したがって、その含有量の上限を 1.5%mass%とするが、フェライト相の強化のためには0.05mass%以上含有させることが望ましい。
Alは、脱酸剤として鋼中の酸化物系介在物を低減する成分である。酸化物系介在物は鋼の清浄度を悪くし局部延性を劣化させて精密打ち抜き時に破断面を発生しやすくし、また、せん断面にストレッチ状傷を誘発する。したがってAlは脱酸効果を通じてこれらの悪影響を防止する上で有用であるが、 0.2mass%を超えて添加してもその効果は飽和する。したがって、その含有量の上限を 0.2mass%とするが上記効果の発現のため望ましくは0.002mass %以上含有させることが好ましい。
Ti, Nbは、微細なTiCあるいはNbCとしてフェライト相に析出させ、フェライト相を強化させること、ならびにCを上記析出物として固定することによって、余剰のCが減少して低温変態相の生成が抑制され、フェライト単相組織化を促進するので、この発明においては必須の成分である。このような作用に対するTiとNbの効果は原子重量比で比べた場合はほとんど同じであり、このような効果を得るためにはTiおよびNbの1種または2種の(Ti+Nb)/2で計算される合計量にて0.05mass%以上必要である。一方、0.50mass%を超えて含有させてもその効果は飽和する。したがって、それらの含有量の合計は0.05mass%以上、0.50mass%以下とする。
Sは、MnSなどの圧延方向に展伸する硫化物系介在物となり、局部延性を劣化させて精密打ち抜き時の特に圧延方向の加工面に破断面を発生しやすくする。この弊害を回避するためにその含有量の上限を 0.005mass%とする。
Nは、TiやNbと粗大な窒化物を形成し、精密打ち抜き性に対して酸化物系介在物と同様な悪影響をおよぼすので、この作用を阻止するためにその含有量の上限を0.0050mass%にする。
Oは、含有量が増加すると酸化物系介在物の総量が増加するので、精密打ち抜き加工性が悪くなる。したがって、その含有量は0.0040mass%以下とする。
S, NおよびOは、上記したようにそれぞれ硫化物系、窒化物系および酸化物系の非金属介在物を形成する。すでに述べたように、このような非金属介在物が鋼板中に存在すると、局部的な変形集中箇所となるため精密打ち抜き加工に際して破断面を誘起しやすく、精密打ち抜き加工性を劣化させることになる。発明者らはこの観点から、上記非金属介在物の悪影響を排除させるために必要な条件について検討を行った。この検討にはS,NおよびO量が種々異なり、これら以外の成分組成をこの発明範囲とした鋼を、この発明に適合する熱延条件により引張り強さを590MPa級に調整した4.0mm 厚の熱延鋼板を用い、S,NおよびO量と精密打ち抜き加工性の関係について調査した。精密打ち抜き加工性の評価は加工面におけるせん断面比率(後述の実施例の条件と同じ方法)により行った。検討結果を図1に示す。
図1は、(S+N+O)量と精密打ち抜き加工におけるせん断面比率との関係を示すグラフである。
まず、熱延条件について述べる。上記したようにこの発明では精密打ち抜き加工性の観点からミクロ組織を最適化することを骨子としている。この課題のためにフェライト分率を実質的にフェライト単相組織とすることがなによりも重要である。また、この他に精密打ち抜き加工性に影響するミクロ組織因子として組織異方性の問題があり、この異方性が増大すると、圧延直角方向の延性低下によって精密打ち抜き性が悪化してしまう。以上の観点から熱延条件を最適化することが重要であり、この発明では以下の規定を行うことが肝要である。
ここで、フェライト分率は光学顕微鏡組織から画像解析装置を用いて測定し、局部伸びはJIS5号引張り試験片による引張り特性から測定した。また、せん断面比率はクリアランスを0.2 %とした条件で20mmφの円盤を精密打ち抜き加工した時の打ち抜き加工面を観察して、せん断面と破断面とを区分し、加工面における単位面積当りに換算したせん断面比率を画像解析装置により測定した。
これに対して、この発明範囲の成分組成ならびに熱延条件を採用した発明例においては、フェライト分率95%以上、引張り強さ(TS)490MPa以上、局部伸び(L.El)10%以上のこの発明要件を満足し、精密打ち抜き加工後のせん断面比率はいずれも 100%であり、加工面の硬度は(Hv)240 以上とこの発明の目標とする特性を得ることができている。
Claims (1)
- C:0.10mass%以下、
Si:0.01mass%未満、
Mn:1.5 mass%以下および
Al:0.20mass%以下
を含有するとともに、TiおよびNbのうちの1種または2種を
(Timass%+Nbmass%)/2 :0.05〜0.50mass%
の範囲で含有し、さらに
S:0.005 mass%以下、
N:0.005 mass%以下および
O:0.004 mass%以下
で、かつSmass%、Nmass%およびOmass%の合計が0.0100mass%以下を満たして含み、残部は鉄および不可避的不純物の組成からなり、ミクロ組織が体積分率で95%以上のフェライト単相組織を有する表面性状の良好な引張り強さ:490MPa以上、局部伸び:10%以上の精密打ち抜き加工性および耐赤スケール疵性に優れる高張力熱延鋼板。
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