優待制度を悪用する企業
日本には優待制度という独特の制度がありますが、この優待制度を悪用する企業が多く存在します。それらの企業は、株価の下支えや、株主数の増加を狙う為だけに、優待を利用します。場合によっては、出来高の増加を目論む企業もあります。株主に対する感謝の気持ちではなく、その波及効果を得たいが為の、優待です。この優待については、書きたい事が沢山ありますので、後日ゆっくりじっくり書きたいと思います。今回は、少し違った視点から、考えてみたいと思います。1年分(或いは半年分等)の優待を、特定の1日保有していた際に受け取る権利を得るという、制度上問題のある優待制度。多くの場合は1単元から優待を得ることが可能で、ほとんど全ての場合で保有株数が多いほど優待利回りが低くなります。僕は分散投資家では珍しく優待制度がかなり嫌いなのですが、それはまたの機会に書くとして、今回は優待制度を悪用する事を見越して、その企業を利用して利ざやを稼ぐ方法を考えてみたいと思います。成長企業が優待を新設する場合。株主数の増加(加えて出来高の増加)を目的として成長企業が優待を発表する場合、東証2部上場や東証1部上場を目論んでいる場合が、控えめに言っても非常に多いです。折角なので、東証1部上場の条件を見てみましょう。(1)株主数(指定時見込み) 2,200人以上 →これは、単元株以上の株主です。(2)流通株式等(指定時見込み) a.流通株式数 2万単位以上 b.流通株式時価総額 20億円以上 c.流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上 →これは、浮動株の話です。(3)売買高 申請日の属する月の前の月以前3ヶ月間及びその前の3ヶ月間の月平均売買高が200単位以上 →これは、十分な取引量があるかどうか。(4)時価総額(指定時見込み) 40億円以上 →これは、浮動株ではなく全体の株式時価総額です。(5)純資産の額(指定時見込み) 連結純資産の額が10億円以上 (かつ単体純資産の額が負でないこと) →これは、そのままなので特に説明不要。(6)利益の額又は時価総額(経常利益) 次のa又はbのいずれかに適合すること a.最近2年間の経常利益の合計5億円以上 b.時価総額が500億円以上 (最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く) →これは、そのままなので特に説明不要。(7)虚偽記載又は不適正意見等 a. 最近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし b. 最近5年間「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 c. 次の(a)及び(b)に該当するものでないこと (a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 (b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 →これは、会計に虚偽記載がなく、不適正との指摘を受けていない、という事です。意外にそれ程厳しくない印象を受けます。ただ、それでも知名度の低い企業であれば、株主数や売買高が厳しいでしょう。上記の東証1部上場条件、または東証2部上場条件でも良いですが、それらを満たしかけているのに唯一株主数が足りない、という企業の場合。これは上場を目指している企業にとっては、優待制度を悪用する欲望に駆られることになるでしょう。優待制度を利用した裁定取引はうまみがあるという事で、昨今は異常なほど優待に関する特集・分析がなされており、優待株を収集する投資家もかなりの数が居ます。この投資家の一部でも取り込むことが出来れば、東証1部上場条件の不足分は補えるのです。ということは、このような企業がある場合、企業側が下心で優待新設をする事を見越して、先に投資して待っておく、という投資手法が可能になるはずです。そして、この手法は、おそらく現時点では比較的良いパフォーマンスを得る事が出来るでしょう。上場の為に優待制度を悪用する企業が後を絶たず、また悪用する企業は、優待発表時だけではなく、上場発表時まで、或いは上場発表時以降も株価上昇を期待できるからです。優待発表後に株価が急騰した場合を除き、上場の為の優待新設を発表した企業は、多くの場合に中期的に株価が上昇することが多いです。それは、優待制度に関するトリッキーな特徴に拠る影響が強いです。今回はその特徴について一々書きませんが、優待制度が不完全な制度であり、それによって株価が歪められる以上、この制度の特徴は調べておいて損はありません。優待制度は適正価格である株価を歪める力を持った制度であり、またこの歪められた株価は、優待制度という枠組みの中では、確かに適正価格なのです。この土俵の内側で、優待制度の素人が何も知らないまま戦うのは余り賢明とはいえません。今回の書き込みは、こうすれば比較的良いパフォーマンスを得る事が出来るだろうという、『むぎゅ。』では珍しい類のものですが、DVxの優待発表を受け、この書き込みを投稿する事にしました。DVxは1年以上前から「バリュー投資家なら着目していて然るべき」と応援していましたが、優待を発表するとはガッカリです。個々の社員が素晴らしく、参入障壁もあり、業種も良く、会社の方針も優れていて、何度も上方修正しながら高ROEを維持する素晴らしい企業でしたが、上場のために優待を利用するようではダメですな。(既に、優待という形ではないものの、社員の人となりが良く分かる、素晴らしい自社出版の本を株主に贈っていたのに…)