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遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面50 南方の面3 のんきな父さん

2024年03月14日 | 古面

この面も出自不明です。全体の様子から南方系と考えました。

幅 12.4㎝x 長 27.5㎝ x 奥 8.1㎝。重 680g。産地不明(南洋諸島?)。20世紀。

裏側に彫りが無いので、面とは言えないかもしれません。かといって、像でもない。

大きな目と鼻、口。愛嬌のある顔です。

この素っ頓狂な木彫りは、どこかで見たような・・・・けれども、どれだけ図録を繰っても出てきません。

マンガに登場したキャラクター?

それとも、いわゆるデジャブでしょうか?

憎めない表情から、「のんきな父さん」と名付けました。

分厚い板を彫っています。横はそのまま。

顔は、良く彫られています。滑らかに処理した後、黒漆のようなものを塗ってあります。

口の中も、なぜか、きれいに磨かれています。

チョコンと立ちます。

何か言いたそう。

なになに・・トイレ美術館の方がいい!?

そんなわけで、ここに納まりました。

 

 

 

 

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古面49 南方の面3 根からの爺面

2024年03月08日 | 古面

今回も、出自不明の木彫面です。

 

 

幅 18.8㎝x 長 29.3㎝ x 奥 10.4㎝。重 882g。産地不明(南洋諸島?)。20世紀。

先回に引き続き、産地、年代不明(南方諸島?と推定される面です。

硬くて重い面です。

それもそのはず、大きな樹の根を彫って作られています。私の持っている百個あまりの面のうち、根からの面は、これが唯一です。

 

硬いゴツゴツした根を、よくぞ彫ったものです。

ツルツルとまではいかないものの、彫り痕は滑らかで、磨いた所もあります。

黒(炭か墨?)を塗った痕跡もみられます。

さすがに、裏側は鑿で削ったままの状態。ゴツゴツして肌にあたります。

紐穴が付いていないし、被られた様子はありません。

でも、何となく「ワシをつけてくれ」との声が聞こえてきます。

被ってみたら、重い、顔が痛い(^^;

後期高齢者は、「根っからの爺」に変身しました(^.^)

ということで、「根からの爺(尉)面」は、定位置へ(^.^)

 

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古面48 南方の面2 死霊面

2024年03月04日 | 古面

今回の品は、非常に不気味な木彫面です。

 

幅 20.4㎝x 長 30.2㎝ x 奥 10.5㎝。重 1330g。産地不明(南洋諸島?)。20世紀前半?

産地、年代が不明の面です。彩色はなされておらず、木を彫っただけの素朴な面です。非常に硬く、重い木でできています。木には風化がみられ、時代が経っています。不気味さにおいては、私のもっている面のなかでも、トップクラスです(^^;

確証はありませんが、全体の雰囲気から、南方、太平洋域のどこかで作られた仮面と推定しました。

あまりにも重いので、水に浮くか沈むか調べることにしました。

金魚鉢では小さすぎます。大きく透明な容器を探したら、サトイモ洗い器がありました(^.^)

見事に沈みました。沈む速度からすると、比重は1.1以上ありそうです。

水中から、恨めしそうにこちらを見ています。

水から上がった貌は、

不気味さがいっそう増しています。

この虚ろな表情は、他に類をみません。

所有者の特権で、テキトーに名称を考えました。

名付けて、「死霊面」。

眉間の皺は怒りの痕跡か?

小さな耳と奥まった眼窩。

飛び出た頬と低い鼻。

異界を彷徨いながら、何かを言いたそうな口。

異形の貌にもかかわらず、表面は非常に丁寧に磨かれています。

特に裏側はスベスベで滑らか。

紐通し穴が開いているので、これは明らかに人が被る面です。

こうなったらもう、後へは引けません。被ってみるしかありませんね(^.^)

我ながら、怖い(^^;

こんなのがぬッと現れたら、人は腰を抜かすでしょう。

でも、顔に張り付いて取れなくなるといけないので、早々に外しました(^.^)

やはり、トイレ美術館の壁にいてもらうのが良いかと(^.^)

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古面47 南方の面1 木曜島の出歯亀仮面(補遺版)

2024年03月02日 | 古面

ブログをアップした後、ネットで海外の仮面を調べていたら、オーストラリア博物館(シドニー)の所蔵品のなかに、故玩館の木曜島仮面とよく似た品を見つけました。末尾に追記として載せましたので御覧ください(2024/3/2)。

 

これまで、アフリカやインドネシアの仮面のように、たくさんの品が残され、特徴がはっきりしている面をブログで取り上げてきました。

しかし、故玩館所蔵の面のうち、素性がわかる面はむしろ少数で、生産地や時代、目的など不明の品がほとんどです。

やむなく、不明面のうちで、なんとなく、南方の島々の面かなと思われる面を順次紹介していきます。

かなり特徴のある面です。一度見たらずっと記憶に残っています。

幅 21.1㎝x 長 23.7㎝ x 奥 11.6㎝。重 248g。木曜島(オーストラリア、トレス諸島、もしくは、ミクロネシア、チューク諸島)。明治ー戦前。

木をざっくりと刳り貫いた、厚手の木彫面です。大きさの割に軽いです。

緑、赤、黒、泥金が使われています。塗りの状態は良く保たれています。

ドングリ眼と大きな鼻。

インドネシアの面に似ています。

先に紹介した、ジャワ島、バリ島の仮面劇、ワヤン・トペンの面(左側)と並べてみました。

似ている点も多いですが、どこか違う感じも。

大きな耳はアフリカ的。

なによりも、ぎゅーーっと出た舌(歯?)の迫力がすごい。

バリ島、神事劇の主人公、バロンを模したのでしょうか。

インドネシアの品かどうかはともかく、インドネシアの影響を強く受けた仮面であることは確かでしょう。

そんなわけで、この面は、棚の奥にずっとしまいっぱなしで、じっくり見たのは今回が初めてなのです。

そして、面裏をみて、ビックリ😲

墨書きがのこっています。

「南洋木曜島土人 祭典ニ使用シタ面」

南の島、木曜島の現地人が祭礼につかっていた面らしいことがわかりました。それを、誰かが日本へ持ち帰ったのですね。

そういえば、この面には目、鼻、口に相当する穴が全くありません。代わりに、頭部に穴が一つあいています。人が被る仮面ではなく、飾り付けるための面なのですね。

問題は、木曜島です。

実は、木曜島は二か所あります。

まず、パプアニューギニアとオーストラリアの間の狭い海域(トレス海峡)にあるトレス諸島(オーストラリア領)の中の小島です。メラネシアとよばれる海域で、パプアニューギニア、オーストラリアから数十kmしかはなれていません。この木曜島には、明治の頃から戦前まで、真珠貝採取のため、多くの日本人が活躍していました。

もう一つの木曜島は、インドネシア、パプアニューギニアから北東へ1000㎞程、太平洋の真っ只中にあるチーク諸島(トラック諸島)中の小さな島です。この辺りは軍事的に重要な地域で、戦前は日本軍が占領し、太平洋戦争では激戦地になりました。現在は、ミクロネシア連邦に属します。

現時点では、どちらか、特定することはできません。

いずれにしても、この品は、南洋の小さな島で、インドネシアの影響を受けて、作られ、使われていたことは確かでしょう。

この仮面は、南洋諸島の古い民族文化の造形物であるだけでなく、戦前、日本が南方へ進出していった痕跡を記す歴史証人でもあるわけです。

故玩館へやってきたのも何かの縁。

棚の片隅から日のあたる白壁へ、居場所が変わることになりました(^.^)

 

【補遺】

今回の面は、インドネシアの仮面類の中に、一見ありそうで、その実、なかった品です。しかし、どう考えてもアジア系の仮面です。そこで、世界の博物館を探ることにしました。行き着いたのが次の面です。

コラ・サンニャ       木曜島の仮面
(シドニー博物館)

これは、サンニャ(Sanniya)とよばれるスリランカの仮面です。サンニャは、元々は、病苦をもたらす悪霊ですが、仏陀により病苦を退ける力を授かったといわています。悪魔祓いの儀式では、これを被って踊ります。18種類のサンニャ仮面があり、そのうちの一種が、コラ・サンニャです。

シドニー博物館のコラ・サンニャと木曜島の仮面はよく似ています。大きく開いた目と耳、口からはみ出た歯(舌?)。大きく口から出ているのは歯か舌か迷うところですが、サンニャ仮面はすべて口を開き、歯をみせていますから、サンニャの系統をひく木曜島の仮面で、口から飛び出しているのは歯とみなせます。

文化は、大陸、さらには、大洋を、東から西へ伝わっていたと考えられるので、スリランカのサンニャ仮面が木曜島仮面のルーツと考えて良いのではないでしょうか。

スリランカのサンニャ仮面は被って踊る面ですから、よく見ると目の下に切れ目が開いています。また、耳の上に紐を通すための穴が開いています。一方、木曜島仮面の方には、演者用の眼の切目が無いし、耳附近の紐通し穴もありません。頭頂に吊り用の紐通し穴が開いているのみです。人が被る仮面ではなく、飾るための面です。

そのかわりに、歯がこれでもかというくらい、長~く伸びています。これを機会に、「出歯亀仮面」の愛称をつけたいと思います(^.^)

このように、スリランカから木曜島(チューク諸島かトレス諸島かのいずれか)へ伝わる間に、使われ方が変化していったのでしょう。

それにしても、スリランカと木曜島とは、気の遠くなる程離れています。直線距離でも7000㎞。インド洋を渡って、チューク諸島の木曜島ならさらに太平洋の只中へと船をすすめねばならないし、トレス諸島の木曜島ならチモール海、アラフラ海を横ぎって辿り着かねばなりません。実際の航行距離は1万㎞を越えるでしょう。

木曜島の出歯亀仮面、いつ頃、どうやって伝わってきたのか、謎は深まるばかりです。

 

 

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百年前の南洋諸島スケッチ

2024年02月27日 | 古面

先回のブログで、南洋の小島、木曜島で使われていた祭礼面を紹介しました。

南洋の小島!?・・・そういえば、古い掛軸があったはず。

掛軸の山をかきわけかきわけ、思いあたる品を見つけました。

「大正九年日本ノ管理トナリシ際親しく視察シテ写ス」と書かれています。100年以上前、誰かが記録したのでしょう。

掛軸はボロボロです。

幸いにも、貼ってある10枚のスケッチは全部良い状態です。

「南洋諸島スケッチ」とあります。

右から順次、見ていきます。

「トラック島土人ノ妻パンノ實を蒸シテ餅ヲ製造スル處」

「土人の妻パンの實を蒸して餅を製造スル圖」

大きさ:12.3㎝x20.4㎝。大正9年。

以下の図も同じ。

 

「ヤップ二於ケル西ノ班牙時代城址二シテ今ハ我守備隊ノ所在地ナリ」

「パウラ群島ノ大酋長アイバドル」

「ポナペ港入り口ジョカージノ〇岩(パイパラップ)」

「アンガウル島二於ケル燐礦逓搬鉄道ト採ル堀場ノ中央二アル大榕樹」

「ポナペ二於ケル西班牙領時代ノ城壁木鐸ト椰子葉腰巻飾」

「クサイ島酋長邸宅今は分遣隊ノ所在地人物ハ酋長ノ令嬢」

「塚村兼吉ノ独逸人二拘禁セラレシ處床下ナル赤色ノ附シテアル箱二六ッノ空気ヌキ穴アリテ箱中二拘禁セラレタリト云フ」

「ヤルート島土人ノ家屋赤色ナル小屋ノ如キモノ・人の住所」

「クサイ島二於ケル古城址」

 

この品に描かれたのは、すべてミクロネシア小島の100年前の情景です。

特に、最初のスケッチ「島の女がパンの実を調理している図」の舞台は、先回のブログで紹介した木曜島のあるチューク諸島です。

この絵を見ていると、先回の仮面は、メラネシアの木曜島ではなく、日本軍の要塞があったミクロネシアの木曜島の可能性もあると思えてきます(^^;

トラック島:チューク諸島。木曜島もその一つ。
パウラ群島:パラオ諸島
ヤップ島:ミクロネシア連邦西端の島。土着文化が今も残る。
ポナペ島:ポンペイ島。カロリン諸島の一つ。ポナペ港が主要港。
クサイ島:ミクロネシアの東端、グアムの南。
アンガウル島:パラオ諸島南の小島。
ヤルーノ島:マーシャル諸島の一つ。

パンの実:クワ科の植物。ブレッドフルーツともよばれ、実はジャガイモに似た食感がある。熱帯地方を中心に、世界中で栽培されている。
パイパラップ:ポナペ島にある巨大な岩。ソケース・ロックと呼ばれ、現在は島の第一観光スポット。
榕樹:ガジュマル
塚村兼吉:大正3年、岡山県人塚村兼吉は、神戸の独逸人商会に雇われ、石炭や食糧を満載したドイツ船で南洋へむかったが、ドイツ軍にヤルート島で拘禁された。
牙領時代:ポルトガル領時代。葡萄牙=ポルトガル。

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