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遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

翁紋香盆

2022年03月12日 | 能楽ー工芸品

香盆と思われる木製黒漆盆です。

12.8㎝x33.4㎝x2.2㎝ 昭和?

時代など不詳ですが、品格のある品です。

描かれているのは、能『翁』の一節と扇、烏帽子です。

『翁』は、神が主人公の能ですが、古い時代の能の形式をとどめていて、神能(脇能)とは別の特別な能とされています。正式の能番組では、冒頭に演じられます。次が『翁』の脇の能、すなわち脇能(神能)です。

翁  「とうとうたらりたらりら。たらりあがりいららりどう
地 「ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
翁 「所千代までおハしませ
地 「我等も千秋さむらハふ
翁 「鶴と亀との齢にて
地 「さいわい心に任せたり
翁 「とうどうたらりたらりら
地 「ちりやたらりたらりら。たらりあがりららりどう
千歳「鳴るハ瀧の水。鳴るハ瀧の水日ハ照るとも
地 「絶えずとうたり。ありうどうどうどう
千歳「絶えずとうたり。常にたうたり(千歳の舞)
千歳「君の千年を經ん事も。
  「天津をとめの羽衣よ。鳴るハ瀧の水日ハ照るとも
地 「絶えずとうたり。ありうどうどうどう
翁 「あげまきやとんどや
地 「ひろばかりやとんどや
翁 「座して居たれども
地 「まゐらふれんげりやとんどや
翁 「ちはやふる。神のひこさの昔より。久しかれとぞ祝ひ
地 「そよやりちや
翁 「およそ千年乃鶴は。萬歳楽と歌うたり。また萬代の池の亀は。甲に三極を戴き。
  「渚の砂さくさくとして朝の日の色を朗じ。滝の水冷々と 落ちて夜の月鮮やかに浮んだり。
  「天下太平国土安穏。今日の御祈祷なり。ありはららや。なじょの。翁ども
地 「あれはなじょの翁ども。そらいづくの翁どうどう
翁 「そよや
翁 「千秋萬歳の。悦びの舞なれば。一舞まはふ。萬歳楽
地 「萬歳楽
翁 「萬歳楽
地 「萬歳楽

『翁』の謡いは、神歌とよばれています。これといったストーリーのない短い謡いであり、節づけなども単純です。要するに、めでたいなめでたいな、というだけの謡いです。しかし、実際に謡うとなると、相当の力量が求められます。謡いの等級としては、最上級、重習いです。呪文のような、よく意味のわからない言葉も多く出てきます。

木版画『翁』 明治時代。

この絵は、神に変身した翁が舞いを舞うところを描いています。

翁が、「ちはやふる。神のひこさの昔より。久しかれとぞ祝ひ」と謡っています。この部分が、盆に書かれています。

描かれているのは、扇と烏帽子です。

『翁』では囃子方を含め、全員が烏帽子を被ります

主な烏帽子は、翁の被る翁烏帽子(上図の右上)、千歳の侍烏帽子(上図、真中の一番下)、狂言方の剣先烏帽子(上図、真中、下から2つ目)です。

香盆に描かれているのは、翁烏帽子?チョッと違うようにも見えます。

『翁』の他の場面ではどうでしょうか。

木版画 河鍋暁翠『翁』 明治時代。

狂言方が三番叟、鈴之舞を舞っている場面です。盆に描かれている烏帽子は、この剣先烏帽子に似ています。しかし、剣先烏帽子には横線が入っているのが普通ですから、香盆の烏帽子に描かれた模様とは異なります。

結局よくわかりませんでした(^^;

まあ、こういう物は、堅い事をことを言わず、『翁』の雰囲気が感じとれれば良しとしましょう(^.^)

 

 


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2 コメント

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遅生さんへ (Dr.K)
2022-03-12 17:41:58
香盆もお持ちなんですね。
やはり、能に関連した文様が描かれているのですね(^_^)
しかも、格式の高い文様なのですね。
でも、このような、文字と文様を見ても、知識がないとサッパリです(~_~;)
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Dr.kさんへ (遅生)
2022-03-12 18:17:41
翁や高砂は、普通、一番良く目にする能です。翁は正月の定番です。ステージママで有名な某狂言師は、能には出演せず、狂言の三番叟だけで食っています(^^;
けれど、こういう目出度いだけの能は、はっきり言って、あまり面白みはないです(^.^)
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