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マドンナのナイショ話

あなたに話したいあれこれ

大和の鹿・サクの物語2022

2022年12月06日 | 写真






2年前に、奈良県・飛火野で撮った写真で
「大和の鹿・サクの物語」を書きました。


今秋、2年ぶりに、若草山に行き
「大和の鹿・サクの物語2022」を書きました。(続編)


2年前の物語は、こちらです。
「大和の鹿・サクの物語」2020年版



2020年版も、お時間がある時
併せてお読みくださると、嬉しいです。






            









「大和の鹿・サクの物語2022」






大和の森に、サクという老鹿が住んでいました。
サクは人間と話ができ、未来を予測する力を
神さまから、与えられていました。


2年前
生きることに疲れた旅人が、サクと話をし
自信を取り戻し、元気に帰って行きました。


それからその旅人は、大和の村で成功を収め
村人から、尊敬される人になりました。


旅人だった彼は、大和の国に根を下ろし
立派な男に、なっていました。









ある日
男は、サクに会って
あの時のお礼を言いたいと思い
2年ぶりに、大和の森を訪れました。


けれどサクの姿は、どこにもいない。
男は、何日も何日も、探しましたが会えません。


男は、サクが姿を消したことを知りました。


村の長老は
「サクは、天に還った」と、言いました。










大和の森では
サクの子供たちが、元気に暮らしていました。
幾つもの鹿の家族が、仲良く暮らしていました。


村の長老は、サクに会う方法を教えてくれました。


一念不動、一意専心に、サクに会いたいと願え。


そして風がピタリと止まった、秋の夕暮れ
太陽が西の空に沈む頃、サクが光の道を駆けてくる。


その時、一瞬だけ、サクに会うことができると。









男は、サクに会いたい一心で、山頂に登りました。
小春日和の秋の日、陽は西に傾き始めました。


もしかしたら、今日のような穏やかな日に
サクに、会えるかもしれない。
それは、男の直感でした。


山頂には、サクの子供らしい鹿がいました。


「君は、サクの子供かい?」
「サク、サク、サク・・・」と、呼ぶと









どこからともなく、鹿が集まって来ました。
山頂には、かつてサクが統率していた鹿が
たくさん住んでいます。


大和の森の鹿たちは、人間が大好きでした。
それはサクの教えでした。


サクは大和の森で、人間と鹿が
「共存」しながら、生きてゆくことを唱えたのです。









「サク、サク、サク・・・」
男がサクの名前を呼ぶと、また鹿が集まって来ました。


どこからか、「ピィー、ピィー、ピィー」という
鹿の鳴き声が、聴こえて来ます。


縄張りを持つ雄(オス)鹿が、鳴く声です。
男はその鳴き声が、サクに思えてならない。









「秋の日は つるべ落とし」
陽は、どんどん落ちてゆく。


「サク、サク、サク・・・」
「サク、サク、サク・・・」


「会いに来たよ」
「光の道から、駆けて来い」









風は、微風。
風は、止(や)まない。









あんなにたくさんいた鹿が
一頭、又一頭と、ねぐらに帰ってゆく。


母子の鹿がいます。
何かを待っているような。
父親は、サクだろうか。


風が止(や)んだら、風が止(や)んだら
サクは、ここに来る。


この母子に、会いに。
旅人だった男に、会いに。


まもなく陽は、沈む。









一瞬、風が止(や)んだと思って、振り返る。
母子の鹿も、振り返る。


その時
男は何かが、通り過ぎるのを
見たような 気がした。









「ねえ、あれは、サクだったよね」
「君たちも、サクを見たよね」


遠くから「ピィー、ピィー、ピィー」という
鳴き声が聴こえる。


それはもの悲しくも、聴こえるけれど
自己主張しているようにも、聴こえる。


そして落日。









「サク、あの時はありがとう」
「私はもう大丈夫、しっかり生きてゆくから」









「さあ、おいで。 サクの子供たちよ」
「撫でさせて、おくれ」


「ありがとう、サクにお礼が言えたよ」
「これから真っ直ぐ、進んでゆける」









静寂(しじま)の中で
次第に茜色が蒼色に、呑み込まれてゆく。


「ピィー、ピィー、ピィー」という鳴き声は
更に、遠ざかってゆく。


あの時、サクは地上にいた。
男は今
サクが、天に還ってゆくのを感じていた。




「大和の鹿・サクの物語2022」


若草山撮影2022年11月吉日 マドンナ








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