Posted by 山崎富美 / Developer Relations Team

[OpenSocial 仕様に採択された「OpenSocial WAP Extension」 について、Google API Expert の田中洋一郎さんに寄稿を頂きました。よういちろうさん、ありがとうございます。-山崎]

皆さんこんにちは。よういちろう です。株式会社ミクシィで mixi Platform の技術統括をしています。また、Google 公認 API Expert プログラムにて、OpenSocial を担当しています。

Open Socialとは

OpenSocial とは、ソーシャルアプリケーションを構築するための標準仕様です。2007 年 11 月に行われた Campfire One イベントにて発表されました。現在では多くの SNS にて採用されており、ソーシャルアプリケーション開発企業が同一タイトルを低コストで複数のプラットフォームに展開し、ビジネスの幅を大きく広げています。日本においても、mixi をはじめとする複数のプラットフォームが、OpenSocial で定められた仕様を一部利用してプラットフォームを提供してきました。

発表から 3 年ほど経った先月 18 日に、OpenSocial v1.1 という新しい仕様が公開されました。既に v0.9 でコア機能は出そろった感があり、v1.1 では IBM からの提案による PubSub 機能の強化が追加となりましたが、基本的にはそれほど変化はありません。

[OpenSocial 1.1]
http://www.opensocial.org/page/specs-1

OpenSocial WAP Extension とは

さて、そんな OpenSocial v1.1 に日本発の大きな仕様「OpenSocial WAP Extension」が提案され、今月 10 日に正式に採用されたことでv1.1 の仲間入りを果たしました。元々定義されていたOpenSocialとは、PC向けアプリを作るためのJavaScript API Spec、様々なサーバからソーシャルデータをやり取りするためのRESTful API Spec、この 2 つから成り立っていました。これに対し、日本におけるソーシャルアプリケーションの利用は、携帯電話端末、それも JavaScript が機能しないフィーチャーフォンからの利用がほとんどです。このフィーチャーフォン向けのソーシャルアプリケーションのアーキテクチャおよび外部仕様を標準仕様として OpenSocial Foundation に提案したものが、OpenSocial WAP Extension となります。

[OpenSocial WAP Extension Specification]
http://opensocial-resources.googlecode.com/svn/spec/1.1/OpenSocial-WAP-Extension.xml

OpenSocial Foundation は、Google だけでなく多くの企業や個人が参加している、非常にオープンな組織です。OpenSocial Foundation では、仕様の策定手順は明確に定義されていて、最終的にはボードメンバーの投票で決定します。OpenSocial WAP Extension もこの手順に則り、規定の投票数を得ることができました。

OpenSocial WAP Extension の正式採用の意義

OpenSocial WAP Extension の正式採用は、日本にとって非常に大きな意味を持ちます。今でこそスマートフォンの台頭によりモバイルというキーワードが世界的に盛り上がってきていますが、やはり日本市場における携帯電話端末の普及は、世界から見たら特殊な部類に入ることでしょう。しかしながら、その市場が日本人にしか受け入れられないとは私は思っていません。PC と違い、モバイル端末は非常に小さな画面、細い通信回線、限られた入力装置、という様々な制約が存在するデバイスです。この中で最大限の価値を提供しようと、日本のアプリケーションエンジニアは日々努力を重ねてきました。その成果を OpenSocial にフィードバックし、今後訪れるであろうスマートフォンを含むモバイル市場全体へのソーシャルの拡大に備えて、1 つでも日本の良い文化と発展された技術を世界に持ち込むために、私は本仕様を提案しました。

もちろん、フィーチャーフォンは今後スマートフォンに置き換わってしまうかもしれません。しかし、スマートフォンとフィーチャーフォンは共通点も多く、僕らはフィーチャーフォン上で培われた技術を今後も生かしていくことができるはずです。

OpenSocial WAP Extension 採択までの道のり

今年の 5 月、Google I/O の前日に行われた OpenSocial Union Event にて、仕様提案を考えていることをボードメンバーに直接伝え、帰国後に正式に提案を行いました。正式採用まで、かれこれ半年以上かかっています。ここまで来るのにいくつかの壁がありました。最も苦労した点は、日本でこれだけ盛り上がっている携帯電話向けソーシャルアプリケーションをどう海外の人に認識してもらうか、でした。この点をクリアするためには、とても多くの会話が必要でした。海を隔てた異なる国で起きていることを伝えることは、とても難しいことです。実際には 2 回ほど渡米し、メンバーと会って実際にプレゼンをし、具体的な数字を持って理解をしてもらおうと活動してきました。

日本の携帯電話端末で動いているソーシャルアプリケーションを実際に見せたときの彼らの反応は、とても良いものでした。それは、日本のモバイルソーシャルアプリ市場に関わるすべての方々が生み出した素晴らしい価値、それを実感した瞬間でした。

大きな壁に直面しても、熱意を伝えるべく本気で意見をし、そして簡単に諦めない、これが今回採択に至った大きな要因と言えるでしょう。そしてそこには、他の Google API Expert の方々の大きな協力があったことも、忘れてはならない事実です。

ソーシャルウェブの実現に向けて

インターネットはソーシャル化の流れに乗って、今後更に進化します。そして、多くの新しいデバイスが登場し、Google が提供するサービス、各 SNS が提供するサービス、そして多くのウェブ上のコンテンツは、次々とソーシャル化に伴いながら連携をしていくことでしょう。その中で日本の強みを世界に広めていくために、OpenSocial は非常に重要なキーワードです。これからも、日本において貴重な価値を生み出している多くの開発者と共に、API Expert としてソーシャルウェブの実現に貢献していきたいと考えています。

OpenSocial WAP Extension Specification の行間には、日本でソーシャルに関わるすべての方々のお名前が隠されているのです。

2010 年 12 月 20 日 田中 洋一郎(mixi, Inc.)