この記事は Jacob Lehrbaum による Android Developer Blog の記事 "Announcing the winners of the #AndroidDevChallenge, powered by on-device machine learning" を元に翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。


デベロッパーの皆さんの存在は、Android のイノベーションにおいて常に重要な役割を果たしています。10 年以上前に初めて Android SDK をリリースしたとき、この技術を取り入れたアプリを発見・表彰し、ユーザーの問題を解決する新たな方法を見つける目的で Android Developer Challenge というプログラムを始め、実施していました。




Android が機械学習、5G、折りたたみ式端末といった数々の技術的・端末固有の限界に挑み、可能性を広げる中、デベロッパーの皆さんもまた、このような新しい技術への対応を常に行い、研鑽されています。このようなデベロッパーの取り組みを称えるため、2019 年に Android Developer Challenge を再開し、特にオンデバイス機械学習を利用した「Helpful Innovation(役立つイノベーション)」に焦点を当てて募集を開始。寄せられた何百ものクリエイティブなプロジェクトの中から、素晴らしいアイデアとそれを実現する意欲にあふれた 10 の入賞作を選出しました。

その後、入賞された皆さんと連携してそのアイデアを実現するためにサポートしてきました。本日、その 10 の入賞作を発表します。まだ最初の一歩を踏み出したばかりの作品もありますが、ぜひ気になるアプリをインストールしてみてください!

  • AgroDoc は、農家が植物の病気を診断して治療計画を立てる手助けをします。[Navneet Krishna、インド、コチ]
  • AgriFarm は、農家が植物の病気を検知し、トマト、トウモロコシ、ジャガイモなどの果物や野菜への大きな被害を防ぐ手助けをします。[パキスタン、バルチスタン]
  • Eskke は、SMS で送金、支払い、サブスクリプションや通信時間の購入を行えるようにして、コンゴの人々がモバイルで効率的にお金を管理できるようにします。[David Mumbere Kathoh、コンゴ民主共和国、ゴマ]
  • Leepi は、アメリカ手話のジェスチャーやシンボルの学習をサポートします。[Prince Patel、インド、バンガロール]
  • MixPose は、ヨガ教師やフィットネスのプロがリアルタイムで教えたり、姿勢を確認したり、フィードバックを提供したりする機会を提供するライブ ストリーミング プラットフォームです。[Peter Ma、アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ]
  • Pathfinder は、道を移動するものを識別してその軌跡を計算することにより、目の不自由な方が複雑な状況下で移動する手助けをします。[Colin Shelton、アメリカ、テキサス州アディスン]
  • Snore & Cough は、いびきや咳を識別して分析することで、医師の助言を求めるユーザーに情報を提供します。[Ethan Fan、アメリカ、カリフォルニア州マウンテンビュー]
  • Stila は、Fitbit リストバンドや Wear OS by Google を実行している端末などのウェアラブル端末とペア設定し、体のストレスレベルを監視、追跡します。ストレスレベルの経時変化をモニタリングすることで、生活のストレスについて理解を深め、管理できるようにします。[Yingdin Wing、ドイツ、ミュンヘン]
  • Trashly は、リサイクルを促進します。オンデバイス カメラを対象物に向けると、アプリが物体検知を使ってプラスチックや紙のコップ、袋、ボトルなどを識別して分類します。[Elvin Rakhmankulov、アメリカ、イリノイ州シカゴ]
  • UnoDogs は、カスタマイズした情報とフィットネス プログラムを提供し、ペットの健康をサポートします。[Chinmany Mishra、インド、ニューデリー]

ML Kit と TensorFlow Lite でオンデバイス機械学習を身近なものに

機械学習は、技術的なバックグラウンドの不足という制約があるデベロッパーにとって、ますます身近なツールになりつつあります。実際に、Android Developer Challenge で入賞したデベロッパーにとっても、機械学習への挑戦は今回が初めてでした。それでもアイデアを実現できたのは、Google が提供している 2 つの重要なプロダクトもその一助になっています。

その 1 つが ML Kit です。ML Kit によって、モバイルアプリのデベロッパーは Google のオンデバイス機械学習テクノロジーを利用し、カスタマイズしたインタラクティブなエクスペリエンスをアプリに組み込めるようになりました。ML Kit には、言語翻訳、テキスト認識、物体検知などのツールが含まれています。たとえば、Eskke は ML Kit のオフライン テキスト認識バーコード スキャンを使い、ユーザーがモバイルマネーの端末で QR コードをスキャンしてすばやく現金を引き出せます。また、MixPose は ML Kit の新機能である姿勢検知 API を使って、ユーザーのヨガのポーズや動きを検知し、教師がフィードバックできます。




Android Dev Challenge の入賞者の多くが使っていたもう 1 つの Google の技術が TensorFlow Lite です。この強力な機械学習フレームワークを使うと、通常ではサポートできない Android や iOS、IoT 端末で機械学習モデルを実行できます。TensorFlow Lite の一連のツールは、イメージ検知から音声認識まで、あらゆる種類の強力なニューラル ネットワーク関連アプリに利用できるので、私たちが肌身離さず持ち運んでいる端末で最新テクノロジーを利用できます。たとえば、Trashly は、カスタム TensorFlow Lite モデルを使って対象物がリサイクル可能かどうか、どのようにリサイクルすればよいかを分析します。

今回入賞した 10 個のアプリのようなイノベーションは、私たちが情報にアクセスして、その情報を使用したり解釈したりする方法を変え、その情報が一番必要なとき、必要な場所で利用できるようにする可能性を秘めています。デベロッパーの皆さんと力を合わせることで、新たなテクノロジーを使って次の波をもたらすデベロッパーがまだ見ぬ可能性を切り開いていくことを期待しています。



#11WeeksOfAndroid 第 2 週「機械学習」次のトピック

#11WeeksOfAndroid 第 2 週は機械学習がテーマです。引き続き、Android デベロッパーの皆さんが利用できる新しいツールや情報をお知らせします。今後の予定は次のとおりです。


  • 火曜日 - ML Kit: ML SDK が大幅に改良され、新しいオンデバイス機能が導入されました。デベロッパーのユーザビリティの大幅な改善、CameraX のサポート、そして今後のプラットフォームの方向性をご確認ください。

  • 水曜日 - カスタムモデル: パッケージ化された SDK ではニーズを満たせない場合、Android Studio のツールや TensorFlow Lite、ML Kit にその答えがあるかもしれません。個々のプロダクトだけでなく、それらを組み合わせて使う方法もご説明します。

  • 木曜日 - ML デザイン: People + AI Guidebook で、ML プロダクトに関する意思決定を行う際のベスト プラクティスを学習しましょう。オンデバイス ML を使って読み方を教えるアプリ、Read Along の内側に迫ります。UX 担当、エンジニア、プロダクト マネージャーなど、チーム全員が必見です!


火曜日と水曜日には 「今日のコードラボ」 も紹介します。早速 Android Studio 4.1 ベータ版をダウンロードして一緒に ML を学習しましょう!

*ここでご紹介したアプリは個々のデベロッパーのプロジェクトであり、Google のプロジェクトではありません。


日本でも 7 月 7 日 に 機械学習のオンラインイベントを行います



Android 11 Meetups は、6 月 23 日  から 9 月 29 日にかけて、計 8 回に渡って開催される、アプリ開発企業のエンジニアやプロダクト担当の皆さまを主な対象としたオンラインセミナーシリーズです。次回 7 月 7 日のセミナーでは、TensorFlowやML Kit 等、端末上で実行可能な機械学習についてのセッションを行いますので、興味のある方はぜひこちらのウェブサイトで登録・参加(視聴)ください。


Reviewed by Nori Fujii - Google Play Developer Marketing APAC